ホンダの公式“予言の書”「Honda Report」からどんなことがわかるのか?
2024.10.28 デイリーコラムホンダってそうなんだ!
ホンダは「Honda Report」を発行している。統合報告書だそうで、何やら堅苦しい。中身は「Hondaの目指す姿と、それを実現するための事業戦略やESG関連の重点取り組み」をまとめたものだ。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)のことで、企業が長期的な成長を目指すうえで重視すべき点とされている。
こうした表現から察せられるように、本来はステークホルダー向けの報告書と受け止めていいだろう。Honda Reportに目を通すことで、ホンダの企業価値向上に向けた事業活動について理解し、共感(心理的・金銭的に支援)してほしいということだ。
では、ホンダの四輪事業にしか興味のない人にとって意味のないリポートかというとそんなことはなくて、予言の書である。書いてあるとおりのことが現実に実行に移されている。ホンダは2026年から「Honda 0シリーズ」と呼ぶ新しいEVのシリーズを、北米を皮切りにグローバルに展開していく。つい先日、そのHonda 0シリーズに搭載予定の技術が国内で公開された(関連記事)。そのことが、事業戦略のページに書いてある。
実のところ、2024年5月16日に行われた「2024 ビジネスアップデート」で開示された内容と同じことが書いてあるのだが、Honda Reportには四輪だけでなく二輪やパワープロダクツの事業戦略、財務戦略や環境戦略に、交通事故ゼロ社会を目指す安全戦略、人材戦略、ブランド価値の向上やコンプライアンス(サスペンション部品の弾性変形ではなくて、法令順守のほう)などについて広く、ホンダがどこに向かおうとしているのか、何をしようとしているのか、詳しく記されている。ホンダをより深く理解するのに役立つリポートだ。
過去を振り返りつつ未来も予想
それに、2024年版は豪華なおまけが付いている。Honda Reportの発行は2022年から始まっており、2024年版で3回目だ。変わることと変わらないことがあるので、基本的には2022年版のコンテンツをベースに情報をアップデートしていく格好だが、2024年版は新規コンテンツが加えられた。
そのひとつが「チャレンジの軌跡」である。ホンダは2023年に創業75周年を迎えた。これを機に、創業から2023年までの出来事が1年ごとに、主要なプロダクトとトピックが網羅されている。「従業員34人、資本金100万円。浜松の小さな町工場からスタート」したホンダの軌跡を振り返るのにもってこいの企画だ。1950年代のページは「スーパーカブ」が象徴的にあしらわれており、1960年代は「N360」、1970年代は「シビック」、1980年代はF1、1990年代は「オデッセイ」、2000年代は「FCXクラリティ」、2010年代は「N-BOX」。さて、2020年代はどんなモビリティーが象徴することになるのか。そのヒントはリポートのなかに隠れていそうだ。
さて、気になるのはやはり、四輪事業戦略である。2024 ビジネスアップデートをはじめ何度も耳にした言葉であるが、四輪事業戦略のページの冒頭には、「Hondaは環境負荷ゼロの実現に向け、2040年にEVおよびFCEV(燃料電池自動車)の販売をグローバルで100%にすることを目指しています」と記してある。そこに向かう戦略の重要な柱となるのがすでに触れた、2026年から始まるHonda 0シリーズの世界展開だ。
Honda 0シリーズは2026年に、2024年のCESで世界初公開された「SALOON」が、これに近い形で投入され、同じ年に中型SUVとエントリーSUVが投入されることが、リポートで予告されている。国内では2024年に軽商用EVの「N-VAN e:」が発売されたが、2025年には軽乗用EV(N-ONE風か)、2026年には小型EVの投入が予告されている。Honda 0シリーズに搭載される技術を現実に見た身としては、2025年の軽乗用EVも、2026年の小型EVも間違いなく出てくるだろうと、リポートに書いてあることを額面どおり受け取ることができる。
このメーカーは生き残れる
おそらく、多くの人が気をもんでいるのが、ホンダはフル電動化(EVとFCEV)に舵を切って大丈夫なのかということだろう。大丈夫だろうと思える情報がリポートに載っている。「環境変化に柔軟に対応するための体質強化」のページだ。現時点では2040年までのつなぎの技術としての位置づけだが、「ハイブリッドモデルをグローバルで多くのお客さまに提供することで、ICE(エンジン)事業の体質強化を図る」と書いてある。
単に2モーターハイブリッドシステムの「e:HEV」を継続生産していくだけでなく、軽量・高効率化を図っていくとも書いてある。さらに、リアにドライブユニット(すなわち、モーターと減速機構を組み合わせたeAxle)を搭載して電動四駆化し、モーションマネジメントシステムと協調制御させて車両挙動を安定させながら、高い運動性能を引き出す──とも書いてある。楽しみではないか。
ホンダは「2040年にグローバルでEVおよびFCEVの販売を100%にする」看板を掲げてはいるが、ビジネス環境の変化によってその看板を下ろさざるを得なくなったとしても、生き残っていけるだけの手はきちんと打っている。筆者にはそう読める(そう読みたい、という希望のほうが大きいかもしれない)。
(文=世良耕太/写真=本田技研工業、webCG/編集=関 顕也)
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世良 耕太
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