新しい趣味にモータースポーツはいかが? マツダ主催のジムカーナ走行会に参加して
2024.12.20 デイリーコラムクルマさえあればいいのです
いま趣味がない、あるいは定年後の趣味が見つからないとお困りのアナタ、モータースポーツなどはいかがですか? いや、荒唐無稽な話じゃありませんよ。ちょいとこの壺(つぼ)を買っていただければ……じゃなくて、お手元にクルマがあれば、いつでも始められます。別にそれがスポーツカーとか、それっぽいクルマじゃなくてもね。ウソだと思うなら、この記事の写真をご覧なさい。軽だってSUVだって、走ってるでしょう?
こちらの写真はなにかというと、2024年11月23日に催された「MAZDA SPIRIT RACING GYMKHANA EXPERIENCE(以下、ジムカーナエクスペリエンス)」のもの。マツダとズミックスプランニングが本年(2024年)から始めた、ジムカーナ走行会の様子だ。参加車両はマツダ車が主だが、それは「マツダ車だとお安く参加できますよ」というだけのことで、別段車種に縛りはナシ。なのでこんなにバラエティー豊かなクルマがパドックに並んでいるのだ。
そしてなぜ記者がこんな写真を撮っているかというと、そのジムカーナエクスペリエンスを体験取材する機会を得たからである。そう、実際にワタシも走ってきたのだ。なので上述の「新しい趣味にモータースポーツはいかが?」という言も、実体験に立脚するものとしてご理解いただければ幸いである。
加えてもうひとつご理解いただきたいのが、このサジェストが「年中サーキットを走りまくっているその道のプロ」ではなく、「ライセンスなんて特に持ってない、その辺のへなちょこドライバー(=私)」によるものということ。こうした走行会は、普通のドライバーが普通のクルマで参加しても楽しめるものなのである。たとえパドックで、タイヤの空気を抜いてたり、後輪だけ交換してたりするヤバいおじさんの隣になっても、怖がる必要はない。アナタの競う相手はアナタ自身。主催者の言葉を借りるところの、「朝来たときより帰るときのほうが、運転がうまくなっていること」こそが大事なのだ。これがジムカーナ初体験! という御仁も、堂々としていていただきたい。
いやまぁ、それでもビビるんですけどね(笑)。
先生がいることのありがたみ
引き続き、“万年ビギナー”の称号をほしいままにする記者の心得を語らせていただくと、「ぶざまをさらすのを恐れるなかれ」。これ大事です。特に最初の1本目、自身の運転やタイムにゲンナリすること請け合いだが、気にする必要あらへん。最初っからうまい人なんてこの世にいないので、ヘコむだけ無駄だ。この走行会における記者も同様だった。
今回、記者に供されたのはパーティーレース仕様のND型「ロードスター」。ロードスターというクルマ自体はこれまでに何度も取材・撮影で触れてきたが、こんな風にクローズドコースでブン回すのは初めて。コースの端に設けられた練習エリアで「ほうほう、君はこんなに曲がれるのか」と確認してから1本目に臨んだのだが、実際のところ終始おっかなびっくりだった。加減速のメリハリもなかったし、ギア泣きにビビッてシフトを1速に落とすのもためらう始末。ゴールしたときにはすっかり意気消沈し、そのままパドックを素通りして武蔵野の自宅に帰りたくなった。
しかし絶望することなかれ。残念なタイムはすなわち伸びしろ。しかもこのイベントには、上を向く初心者を助ける環境が整っているのだ。そう、有識者の存在である。この日は金井亮忠氏、河本晃一氏、柴田優作氏と3人のレーシングドライバーが講師に招かれており、同乗走行体験やアドバイスを受ける機会が設けられていた。
このうち、同乗走行については自身の出走回数(全6回)を1回犠牲にすることになるが、それでもおつりがくるほどの価値がある。記者の場合は、河本氏の走りを助手席で体験。「コーナー進入でのブレーキ開始は『え、もう?』というぐらい早め」「パイロンスラロームは後輪でパイロンをかすめる感覚でいくべし」というアドバイスをたまわり、また同じ車両をシェアして参加していた自動車専門誌『ティーポ』の佐藤考洋編集長からも、ギアチェンジのポイントを教授。1本目から2本目では44.221秒から43.300秒へと、アバウト1秒のジャンプアップを果たした。
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「ロードスター」ってスバラシイ
ケータリングのチャーシューとカレーの合いがけ丼をたいらげ、缶コーヒーで一服したら、いよいよ午後枠の始まりである。ここで「いよいよ」なんて副詞を添えたのは、イベント的にはここでの2本が公式なタイムになるから(練習走行でもタイムは見られるけどね)。
コースも午前中とはちょっと変わり、スラロームやらバタフライやらで構成されるその最後に、タイトな「“の”の字」が加わる。みんなで一緒にコースを歩き、視覚情報(要は景色)も合わせて走路を記憶。走行は全3本で、最初の1本は練習、残りの2本が公式なアタックとなる。……が、ハナから全体での順位なんて気にしていない記者からしたら、この3本に違いはナシ。ノリノリなスターターの旗さばきにテンションを上げ、1本目からガッツ全開で出撃した。
それにしても、つくづく思う。ロードスターはいいクルマだなぁ。こちらもスポーツカー(?)であるはずの記者のマイカーより、3回りは小回りが利くし、トラコンをオフにしてもとっ散らかることはまずないし、1速へのギアダウンも優しく受け付けてくれる。普段「力こそすべて! ストロング・イズ・ビューティフル!!」とIQ低めにばく進する記者も、「走りながらいろんなことを試せるクルマって素晴らしいな」と感動を禁じ得なかった。
走行としては、サイドターンができない記者は、小回りのグリップ走行で“の”の字に挑戦。2本目(要は本番1本目)にして、スピードを落とさずにクリアできるいい感じの走路を会得した。オフィシャルさんから「今の“の”の字のコース取り、よかったですよ!」と声をかけられ、鼻高々。いっぽう、午前中からどう走るのが正解かわからなかったバタフライエリアは、最後まで調略の糸口がつかめず、解決は次回以降に持ち越しと相成った。
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一番の楽しさは上達を実感できること
最後に、本番コースにおけるうれし恥ずかしな記者のタイムを披露すると、1本目が52.371、2本目が51.939である。ティーポ佐藤氏の48.782と比べたら、「この短いコースのどこで3秒も差がつくんだよ!?」ってな具合だが、個人的には大満足。なぜなら午前枠の走行も含め、走れば走るほどコースとクルマの理解度が増し、右肩上がり(右肩下がり?)にタイムが縮んでいったからだ。自身の上達が如実に体感できるという意味でも、やっぱりモータースポーツというのは楽しい趣味だと再確認した。どうでしょう。読者諸氏の皆さんも、ちょいとパイロンをリアタイヤでかすめてみたくなったでしょう?
ここであらためて万年ビギナーからアドバイスさせていただくと、常に脳内で課題を設定しながら走行に挑むと、ステップアップがわかりやすくてより楽しめます。最近は書籍だけでなくウェブでもドラテクの情報が拾えるので、ぜひ走行前に予習&課題設定をしておきましょう。
次いで……これが特に重要なのだが、できる限り「先生」のいるイベントに参加し、同乗&アドバイスの枠があったら、極力それを活用しましょう。自分がうまく走れているのかどうかすらわからず、漫然と出走枠を浪費する悲劇が避けられます。また上述の課題設定を、先生の言にゆだねるというのも大いにアリ。そもそも最初は、自分の技量がどれほどか、どう走るのが正解かなんて、まったくわからない状態ですからねぇ(実経験アリ)。
後はそうですねぇ……。この壺を買っていただくか、webCGの有料会員に登録でもしていただければ、あなたのタイムアップは間違いなし。どうでしょう? おたくの床の間にもひとつ。
(文も写真も編集もぜんぶwebCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>)

堀田 剛資
猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。
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