フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(FF/7AT)
ちょっとだけうらやましい 2025.02.21 試乗記 いよいよ日本に導入された「フォルクスワーゲン・ゴルフ」の大幅改良モデル。なかでも伝統のスポーツモデル「GTI」は、どのような進化を遂げているのだろうか? 従来モデルからの変化のポイントを、試乗を通して確かめた。ホットハッチは絶滅危惧種?
先日マイナーチェンジされたゴルフには、当然ながらGTIも含まれる。ゴルフGTIは1975年に、FFスポーツハッチバックの元祖として生を受けた。それ以降、ゴルフ的なFFハッチバックは実用車の一形態として世界的に根づいて、それをベースとしたスポーツモデルが各社から発売された。欧州ではそれらを「GTIクラス」として総称することが多い。ゴルフGTIが元祖たる証拠だ。
そして、初代ゴルフGTIの登場から約50年、かつては隆盛を誇ったGTIクラスの存続は、風前のともしびだ。ゴルフと同じCセグメントを例にとれば、フランスの「ルノー・メガーヌ ルノースポール」は先ごろ生産を終了(日本向けの在庫はまだ少しあるようだが)。わが日本の「ホンダ・シビック タイプR」も、標準モデルは受注停止状態が続いており、年初に追加された「レーシングブラックパッケージ」も、先ごろ受注停止が正式アナウンスされた。GTIクラスの本場である欧州を見ても、エンジンのみで250PS超を発生するCセグメントFFハッチバックは、ほかに「フォード・フォーカスST」くらいしか今は見当たらない。ゴルフGTIにはじまったGTIクラスは、結局ゴルフGTIで終わる……かもしれない様相だ。
というわけで新しいゴルフGTIだが、従来型との差異は、ゴルフ全体で共通するインフォテインメント関連のインターフェイスの改良と、内外装デザインのアップデートが主体となる。メカニズム面では2リッター直噴ターボエンジンの最高出力が20PSアップの265PSとなり、0-100km/h加速が6.2秒から5.9秒(ともに欧州仕様値)に向上したことくらい。
変更幅の小ささに物足りない気分のファンもおられようが、じつは欧州における今回最大のトピックは、最高出力を300PSまで引き上げた「クラブスポーツ」と、さらに高度な348PSエンジンでニュル24時間レース参戦を期した「クラブスポーツ24h」という、2台の(日本導入予定のない)特別なゴルフGTIの登場にある。
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ヘリテージ感を増したエクステリア
新しいゴルフGTIの実車を前にしても、従来型からの見た目の変更はごくわずか。よくも悪くもゴルフそのもので、ルノースポールやタイプRほどの特殊車両感もない。GTIロゴと赤いピンストライプがあしらわれた特徴的なフロントグリルも、初代ゴルフGTIから連綿と守られてきた伝統のモチーフである。
エクステリアでは前後ランプ類が新しくなった。よりシャープな目つきとなった最新世代の「IQマトリックスヘッドライト」と、夜間に妖しく光るようになったグリルセンターの「VW」ロゴは、最新のゴルフに共通する変更点である。
GTI専用のフロントバンパーも同時に刷新された。大開口バンパーグリルが従来の台形から長方形となって、ワイド感がより強調されたいっぽうで、8代目ゴルフGTIの代名詞ともいえるX字型のフォグライトは健在である。また、ルーフがブラック化されるのも、新しいGTIならではだ。さらにクルマのサイドにまわると、フェンダーにあった専用バッジのかわりに、「GTI」の切り抜き文字がドアにあしらわれた。
しかし、エクステリアの変更で最大の目玉となるのは、これまでどおり可変ダンパーの「DCC」とセットで用意される19インチアルミホイールが、新デザインとなったことだ。「クイーンズタウン」と名づけられた新しい19インチの、丸みを帯びた5スポークに、ゴルフ5の頃のGTIホイールを思い出すファンは少なくないだろう。伝統のGTIロゴを増やしたエクステリアといい、このホイールデザインといい、今回のマイナーチェンジでヘリテージ感を強めているのは、「GTI生誕50周年」を意識してのことかもしれない(前記のニュル24時間参戦もその一環)。
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大幅に改良されたインターフェイス
GTIを含む新しいゴルフの最大の改良点は、繰り返しになるが、インフォテインメントを含めた運転席まわりのインターフェイスだ。ご承知の向きも多いように、2020年にデビュー(日本上陸は2021年)した現行8代目ゴルフのインテリアは、デジタル化とスマート化に大きくカジを切った。それ自体は時代に合わせた必然だろうが、その野心的なインターフェイスは細かな使い勝手において、“勇み足”というほかない部分が指摘されたのも事実だ。というわけで、今回はインフォテインメントをさらに高機能化すると同時に、指摘されていた操作性をより直感的なものにブラッシュアップしている。
最大の変更は10インチから一気に12.9インチまで大画面化されたセンタータッチディスプレイだ。中身も社内的に「MIB4」と呼ばれる最新システムとなり、演算処理能力のアップにより、地図スクロールなどのレスポンスが向上したほか、「Chat GPT」内蔵の音声入力機能「IDA」も搭載された。
と同時に、インパネ中央にタッチ式の呼び出しボタンが配置されていた「パークアシスト」「ドライビングプロファイル機能(いわゆるドライブモード)」「エアコン」「先進運転支援システム」の各機能は、センターディスプレイでも直接呼び出せるようになった。さらに使い勝手では賛否両論だったステアリングスイッチは、すべてタッチ式からハードボタンに切り替えられている。
こうしたゴルフシリーズ共通の改良以外は、GTIならではの変更点はごくわずかだ。具体的には、ダッシュボードにあしらわれるダークメタル調の加飾パネルの表面が、従来のハニカム柄からチェック柄に模様替えされたくらい。相変わらずのチェック表皮のヘッドレスト一体型スポーツシートにも変更はないが、何度座ってもピタリとフィットする逸品である。
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じつは少しずつ変わっている
今回の取材は東京・豊洲を拠点にしたメディア試乗会でのもので、試乗ルートも豊洲や台場を中心とした市街地と、首都高速にかぎられた。正直なところ、GTIらしい走りを試すことはほぼ不可能だったことはお断りしておく。
繰り返しになるが、走りにまつわる部分での明確な変更点は、従来比20PS上乗せで265PSとなったエンジン最高出力のみ。最高出力とはトップエンドでの最大仕事量のことで、その発生回転数も245PSだった従来の5000~6500rpmから、より高回転よりの5250~6500rpmとなった。いっぽう、370N・mの最大トルクはその発生回転数も含めてそのまま。実際、スキを見て瞬間的にトップエンドまで引っ張ったときに「そういえば、高域で少し伸びるようになったか」と思わせたものの、今回の試乗ルートではその恩恵はごくわずかだ。
それより面白かったのは、ドライビングプロファイル機能の「カスタム」をイジっていたときだ。そのひとつに、これまで「エンジン音」の項目があったのだが、それが新たに「車外エンジン音」と「車内エンジン音」の2つに分けられた。車外~に用意されるのは「コンフォート」と「スポーツ」の2種類だが、ドライバーがひそかに楽しめる車内~では、そこに「エコ」も加えた3種類のサウンドが用意される。
そのほか、走り方面での改良はアナウンスされていないものの、パワーステアリング制御は熟成されたようで、手応えがわずかに軽くなりながらもリニア感も少し向上したような気はする。足まわりに関しては、ライバルより明らかに快適な乗り心地は健在。ハードに締め上げるダンピング設定にしても、けっして暴力的にならないサジ加減が、まさにゴルフGTIである。
次の機会にはぜひ山道やサーキットで試してみたいゴルフGTIだが、今回のファーストインプレッションは「従来型オーナーがじだんだを踏んで悔しがったり、ムリをして買い替えたくなったりするほど変わってはいないが、ちょっとだけうらやましいプチ改良がちりばめられている」といったところだ。いずれにしても、ゴルフGTIは今後も生き残ってほしい。
(文=佐野弘宗/写真=峰 昌宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフGTI
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4295×1790×1465mm
ホイールベース:2620mm
車重:1430kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:265PS(195kW)/5250-6500rpm
最大トルク:370N・m(37.7kgf・m)/1600-4300rpm
タイヤ:(前)235/35R19 91Y XL/(後)235/35R19 91Y XL(ブリヂストン・ポテンザS005)
燃費:--km/リッター
価格:549万8000円/テスト車=615万8000円
オプション装備:ボディーカラー<キングズレッドメタリック/ブラックルーフ>(4万4000円)/Discoverパッケージ(17万6000円)/テクノロジーパッケージ(20万9000円)/DCCパッケージ(23万1000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1791km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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