フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTDI Rライン(FF/7AT)
なんだかんだゴルフ 2025.03.11 試乗記 大幅改良を受けた「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のディーゼルモデルを、ワゴンボディーの「ヴァリアント」でチェック。刷新された操作インターフェイスと、走りの端々で感心させられるドライブフィールにより、ゴルフはより「いいクルマ」に進化していた。魅力的なモデルを続々と投入
2025年に入ってから、日本でのフォルクスワーゲンの販売が好調だ。1月の登録台数が前年同月比51.7%増の2609台、2月が同じく15.5%増の2836台で、各月間でも、また2カ月の累計でも、輸入ブランドではメルセデス・ベンツに続く2位につけている。
フォルクスワーゲンといえば日本でもっとも売れている輸入車ブランド……というイメージをもっている向きもあるかもしれないが、たとえば年度単位でフォルクスワーゲンが輸入車ブランド1位だったのは2014年度(2014年4月~2015年3月)が最後。以降はそこにメルセデス・ベンツが座っている。さらに近年ではBMWの後塵(こうじん)を拝することも少なくなく、月間台数ではアウディにも次ぐ4位になることもあった。
しかし、フォルクスワーゲンはこの2025年を日本市場再攻略イヤーと定義しているようで、昨2024年の後半にマイナーチェンジされた「Tクロス」に、フルモデルチェンジとなる「ティグアン」と「パサート」を日本で発売した。そしてゴルフのマイナーチェンジモデルも2024年9月には価格を発表して予約注文の受け付けを開始し(参照)、年明け2025年1月10日に正式発売となった。
とはいえ、SNSなどを見ていると、ゴルフの納車が本格化するのはこれかららしく、この1~2月のフォルクスワーゲンの好調は、その前に上陸したTクロス、ティグアン、パサートによるところが大きいようだ。ということは、ゴルフの納車が本格化すれば、国内での登録台数はさらに勢いを増す可能性もある。
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従来モデルから細部を化粧直し
というわけで、本稿の主役はゴルフだ。現行ゴルフは2021年夏に日本上陸した通算8代目で、クルマ好きの間では「ゴルフ8」と呼ばれることが多い。近年ではモデルライフ折り返し地点のマイナーチェンジを受けた改良型ゴルフを、世代を示す数字に“0.5”を足して呼ぶパターンも浸透している。この最新ゴルフの場合は「ゴルフ8.5」ということになる。
そんなゴルフ8.5については、『webCG』でもすでに1.5リッターガソリンターボを搭載する「eTSI」と2リッターガソリンターボの「GTI」の試乗リポートをお送りしている。で、今回試乗したのは、2リッターディーゼルターボを積むワゴンの「ヴァリアントTDI Rライン」である。
日本で正規販売されるゴルフ8.5の、少なくともパワートレインの基本バリエーションは、前記の3種類で出そろったといえなくもない。厳密には2025年春上陸予定の「ゴルフR」の2リッターガソリンターボはGTIよりさらに高い専用チューンだが、広義の基本設計という意味ではGTIと共通だ。これ以外の選択肢は、Rラインに「スタイル」や「アクティブ」系を加えた3つの装備/デザインちがい、あるいはハッチバックかワゴンのヴァリアントかという車体形式のちがいとなる。
今回の試乗車も、パワートレイン以外の変更点は、ほかのゴルフ8.5と基本的に同じだ。新デザインのLEDヘッドランプはよりシャープな印象の新デザインとなり、中央の「VW」エンブレムが光るのが外観面での最大のハイライトだ。さらに、今回の試乗車で内外装にスポーツテイストをただよわせるRラインでは、フロントバンパーグリルの「ほぼ全面開口!?」と錯覚(実際に通気するのは中央部のみ)しそうなデザインは従来と似ているが、その左右にあしらわれる“エラ”の形状が、これまでと変わっているのが目につく。
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大幅に変更されたインターフェイス
もっとも、今回の“8.5”で最大の改良点は、webCGでも何度もご紹介しているように、インフォテインメントシステム機能とそのインターフェイスにある。ゴルフ8ではその部分のデジタル化とスマート化を一気に進めたが、そこには賛否両論あった。……というか、どちらかというと否の反応が多かった。
ゴルフ8の場合、具体的にはインストゥルメントパネル上にあったスイッチ類をほぼ一掃して、中央に「パークアシスト」「ドライビングプロファイル機能(いわゆるドライブモード)」「エアコン」「先進運転支援システム」の4機能のタッチボタン(とハザードスイッチ)を置いた。その4機能にまつわる操作は、ちょっとしたものでも“インパネのタッチボタンに触れる→センターディスプレイにタッチ”という手順を踏む必要があり、正直わずらわしい場面もあった。また、アダプティブクルーズコントロール関連やオーディオ関連の操作はステアリングスイッチに集約されていたが、上級グレードではそれもタッチ化されており、その使い勝手も良好とはいえなかった。
ゴルフ8.5のインフォテインメントシステムは、先に上陸した新型ティグアンや新型パサートに準じるもので、もっとも目につくのは、10インチから一気に12.9インチまで大画面化されたセンタータッチディスプレイだ。画面サイズだけでなく、中身のシステムも刷新されており、地図スクロールなどのレスポンスが向上したほか、「Chat GPT」内蔵の音声入力機能「IDA」も搭載された。
インパネ中央に呼び出しボタンが配置されていた各機能については、エアコンはセンターディスプレイ最下段に常駐するようになって、その他の3機能もセンターディスプレイ上にショートカットアイコンが置けるようになった。さらに、ゴルフ8.5では今回のRラインのような上級グレードも、すべてステアリングスイッチはハードボタン式に統一された。
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走りの端々で感心させられる
特徴的なインパネ上の4機能のタッチボタンには、もはやまったく触れずとも困ることはなくなったが、それでもボタンが残されたのは、これがゴルフ8の内装デザイン上のコアになっているからだろう。すべてハード化されたステアリングスイッチにしても、ゴルフ8本来のデザインや開発思想的には“宗旨がえ”あるいは“先祖がえり”というほかないが、実際の使い勝手はあからさまに改善した。これなら他社製品と比較して、使い勝手はとくに優れているわけではないが、遜色もない。
TDIのパワートレインについては、基本メカニズムや最高出力/最大トルクのピーク値に変更はない。ただ、WLTCモード燃費だけは、従来の19.0km/リッターから20.1km/リッターに向上しているから、細かく改良されているのだろう。
今回はメディア試乗会での取材ということもあり、東京・台場周辺の短時間試乗にかぎられたため、走りについてはあまり詳しくは語れないが、ディーゼルエンジンは相変わらず強力だ。ガソリンの「eTSI」のようなマイルドハイブリッド機構も備わらないのに、じわっとした繊細なアクセル操作に対するレスポンスにも文句はない。2つのSCR触媒コンバーターを直列に配置したツインドージングシステムの浄化性能も高いのか、同クラスのディーゼルでは屈指のハイチューンである。
シャシー関連の変更もアナウンスされていない。しかし、225/40R18という硬派なタイヤサイズで、しかも市街地や首都高速などでの低速走行でも、不快な硬さはまるで感じさせず、しなやか、かつ滑らかなストローク感が印象的だった。また、剛性感や静粛性ではハッチバックより不利なヴァリアントながら、そのデメリットも以前ほど感じなかったのは、細かい熟成作業のたまものか、あるいは最新世代の「ブリヂストン・トランザ」の恩恵か。いずれにしても、なんだかんだいっても、ゴルフはいいクルマだなあとあらためて思った。
(文=佐野弘宗/写真=峰 昌宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアントTDI Rライン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4640×1790×1485mm
ホイールベース:2670mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:150PS(110kW)/3000-4200rpm
最大トルク:360N・m(36.7kgf・m)/1600-2750rpm
タイヤ:(前)225/40R18 92Y XL/(後)225/40R18 92Y XL(ブリヂストン・トランザT005)
燃費:20.1km/リッター(WLTCモード)
価格:485万6000円/テスト車=557万1000円
オプション装備: Discoverパッケージ(17万6000円)/テクノロジーパッケージ(23万1000円)/レザーパッケージ(30万8000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2546km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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