モーガン・プラスフォー(FR/6MT)
本気のブリティッシュスポーツ 2025.04.28 試乗記 職人の手になる、昔ながらのクルマづくりを今日に伝える英国の老舗、モーガン。しかしそのプロダクトの魅力は、クラシックであることだけではなかった。前のめりに走らせてこそ気づける、いにしえのブリティッシュスポーツの輝きを報告する。ただの懐古主義の産物ではない
「モーガン」という名前を聞いて、それを伝統的なイギリスのオープンスポーツと結び付けられるクルマ好きは、ある程度いることだろう。しかし、その黎明(れいめい)期に数々の世界記録を打ち立て、レースで輝かしい成績を収めてきたメイクスであることまでは、あまり知られてはいないはずだ。だから、モーガンの名を聞けば「あぁ、あの大きな『スーパーセブン』みたいなヤツね。確かフレームが木でできているんだっけ?」みたいな印象を述べるに違いない。
かくいう筆者もその一人であり、過去に極寒の箱根でVツインエンジンを積んだ「モーガン3ホイーラー」に乗って、「このクルマ最高!」なんてはしゃいだ程度だった。
しかし、である。今回きっちり乗り込んでわかった。モーガンの最新モデルであるこのプラスフォーは、走らせてよし、流してよしの、最高にエンスージアスティックなブリティッシュスポーツカーだ。
その概要をあらためて紹介すれば、今回試乗したのは2020年にフルモデルチェンジした現行型モーガン・プラスフォー(参照)のマイナーチェンジ版だ。基本的な構造としては、当時新設計されたアルミ製の大型バスタブシャシー「CXジェネレーションストラクチャー」に、BMWの2リッター直列4気筒ターボ(最高出力:258PS、最大トルク:350N・m)を搭載して、後輪を駆動する仕組みに変わりはない。
ちなみに、有名な木製フレームはエンジンコンパートメントの仕切りと、メーターまわりからサイドシル上部、そしてリアクオーターからトランクまわりまでをカバーするトリムとしてシャシーの上にかぶせられている(つまり応力には影響しない)。
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実は結構変わっている
2024年4月のマイナーチェンジで変わったのはまず外装で、目立つところではヘッドランプが新設計となった。従来型もLEDだったが、今回のものは初の自社製だ。ちなみにLEDテールランプも形状が変わり、双方ともにウインカー内蔵型となった。
またフロントのロワースプリッター(リップスポイラーのことだろう)がシンプルな形状になり、あわせてリアディフューザーも形状変更されてマットカラーになった。……って、これがディフューザー? ただのバンパートリムでは? と思いながら下まわりをのぞき込むと、きちんとサイレンサーの後端からパネルがアップスイープされて、フレームの後端につながっていた。
とはいえその取り付けボルトはむき出しのままであり、フロア下ではデュアルパイプのマフラーとフレームが丸見えで、フラットボトムと呼ぶにはほど遠い。袋状になるバンパーの隙間をふさいで、なるべく空気抵抗を低減させようというのがその狙いだろう。
ということでようやくモーガン・プラスフォーに乗り込むわけだが、ほどよくタイトなコックピットと英国スポーツカー度満点なインテリアトリムの組み合わせがとてもいい。シルバーのパネルに埋め込まれたメーター類は、ステアリング側に小さなデジタルディスプレイが、ダッシュ中央にアナログタイプの300km/hスケールのスピードメーターと、6000rpmからレッドゾーンに入るタコメーター、その真ん中に小さな2針のクオーツ時計がはめ込まれている。
その下には各種装備の小さなボタンを配置しているが、きちんとエアコンとデフォッガーが備わっているのが現代的だ。そしてエアコンをつけてみると、きちんと涼しい風を強く吹き出してくれた。
一番面白かったのはステアリングで、たぶん「MINI」用のものを流用しているのだと思うが、左右のスポーク部分にスイッチパネルの型がくぼんだまま残っていること。つまりはこのモーガン・プラスフォーに、ADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメントシステムの類いは付いていない。
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走りに宿るブリティッシュスポーツの個性
走りだしての第一印象は、濃厚にして淡麗。なんのこっちゃと思うでしょうが、つまりは濃厚なブリティッシュテイストのシャシーを、現代的なBMWのパワートレインで走らせる味わいが、走りにはっきり表れている。そして現代的なスポーツカーの経験しかなければ、きっとこのフィーリングに最初はすごく戸惑うだろうなと思った。しかしこの戸惑いのフィーリングこそが、モーガン・プラスフォーの魅力なのだ。
コーナーにおける4輪の動きは、乱暴に言えばバラバラだ。特にステアリングを切り込んだときのフロント2輪の一体感が希薄で、一瞬不安になる。しかしその動きをじっくり観察すれば、内輪はきちんと接地しているし、シャシーが低レベルにねじれている様子もない。ロールが大きいだけで、クルマは美しくターンしている。なるほどこれって、“スタビがないクルマ”の動きだ。試乗車はオプションの「ダイナミックハンドリングパック」装着車で、実際にはフロントに加えてリアにもスタビライザーが付いているはずなのだが、その効き方はさほど支配的ではないように感じる。
屈強なフロントエンドや強烈なトラクションなど、現代的な4輪のグリップ感を前面に押し出さない走りは、荒れた路面を爆走するブリティッシュスポーツの伝統であり、かつモーガンのコンセプトなのだろう。だからこそ足もとには、205/60R15サイズのエイボンをおごっているのだと思う。「ZV7」という銘柄は初めてだったが、そのキャラクターはエイボンのバイアスレーシングを思い起こさせる穏やかなキャラクターで、足まわりもこのグリップ特性に合わせたしなやかさでセットされていた。
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クルマとの一体感を楽しみたい
BMWから譲り受けた4気筒ターボは、乾燥重量1013kg、車検証記載値で1060kgという、「マツダ・ロードスター」にも比肩する車重に対しては十分すぎるポテンシャルだ。感心するのは350N・mの最大トルクが、1000rpmの低回転から258PSの最高出力に至る直前の5000rpmまで発生され続けることで、すなわち全域トルクバンドとなっている。
そしてこれが、まったくもってピーキーじゃない。アクセルのオン/オフにも柔軟性があり、車体を不用意にピッチさせたり、いきなりスナップさせたりすることもない。もちろんここには、前述した足まわりの粘り強さや、差動制限のないオープンデフのドライブトレインも助けとなっている。
趣味性100%のスポーツカーだけに厳しめの意見を言うなら、その吹け上がりは全然エモくない。縦置きトランスミッションのタッチは素晴らしいが、3速に放りこんでおけば大抵のワインディングはそれで済んでしまうところも、クルマ好きには少し退屈だろう。
とはいえこれほど分厚いトルクを広いレンジで発生させるエンジンを、こんなに軽いボディーに積んでしまったら、クロスレシオの6段MTなど必要ないのだ。というよりそれはちょっと危険だし、そうなればこのしなやかなシャシーバランスも崩れてしまうだろう。だったら操作はステアリングとブレーキに集中して、いかにモーガン・プラスフォーと一体になるかを楽しんだほうがはるかに前向きである。そういう意味では、パワステはもう少しアシストを減らしてもいいかもしれない。
気安く薦められるものではないが
ドライブモードを「Sプラス」に入れるとブーストのレスポンスが少し上がり、アクセルオフではバラバラとバブリングの余興をしてくれるけれど、基本的には爆音を立てずに山道を走れることも、現代的でスマートだと感じる。
走り込むほどにクルマとの一体感が増し、モーガン・プラスフォーのリズムが体に染み渡ってくる。そしてこれが、使い方によってはとんでもない“スリーパー”であることに気づかされる。
編集部のホッタ君が「血色の悪いガチャピンが、ものすごく美しい姿勢でコーナーを駆け抜ける」と評したギャップ萌(も)えな走りには、モーガン・プラスフォーの魅力がぎっしり詰め込まれている。そのトルクを生かしてゆっくり風を切れば最高に優雅な走りが得られ、見る人たちが笑顔でこれを見送ってくれる。きっとロングツーリングだって楽しいことだろう。そしてひとりの時間になれば、古典的なブリティッシュレーシングを現代水準の技術で再現した走りが、濃厚に味わえる。
1668万7000円というプライスは、この時代に手づくりのプロダクトを所有することを考えれば妥当だろう。誰にでもマッチするスポーツカーだとは思わない。だが、これまでしっかりと走り込んできたドライバーであれば、英国車フリークじゃなくてもその魅力には気づけるはずだと筆者は思う。
(文=山田弘樹/写真=郡大二郎/編集=堀田剛資/車両協力=エスシーアイ)
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テスト車のデータ
モーガン・プラスフォー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3830×1650×1250mm
ホイールベース:2520mm
車重:1013kg(乾燥重量)
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:6段MT
最高出力:258PS(190kW)/5500rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1000-5000rpm
タイヤ:(前)205/60R15 91V/(後)205/60R15 91V(エイボンZV7)
燃費:39mpg(約13.7km/リッター)
価格:1668万7000円/テスト車=2019万8200円
オプション装備:スペシャルソリッドカラー<エトナブルー>(34万6500円)/15”シルバーペイントワイヤーホイール<4本>(34万3200円)/ブラスセンターホイールナット<真鍮色>(7万7000円)/シートバック -ボディーカラー同色(17万4900円)/ヒーティッドシート(11万円)/刺しゅう入りヘッドレスト<Morgan Wingロゴ>(6万1600円)/センターコンソール -ベニア<ウォルナット&アルミニウム>+ソリッドウォルナットダッシュボードローワーレール(39万2700円)/エアコンディショニング(34万7600円)/ゼンハイザープレミアムオーディオ<Bluetoothインプット>(81万9500円)/イージーアップフード -ブルーモヘア(15万7300円)/ブラックストーンガード<フロントグリル>(6万2700円)/ブラックメッシュグリル<フロントグリル内、ブラックローワーバランスメッシュグリル含む>(6万9300円)/ユニオンジャックエナメルボンネットバッジ<カラー>(2万5300円)/ダイナミックハンドリングパック<ナイトロン製アジャスタブルダンパー、パフォーマンススプリング、リアマウントアンチロールバー含む>(52万3600円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3060km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:340.4km
使用燃料:26.54リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.8km/リッター(満タン法)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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