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【スペック】全長×全幅×全高=4845×1860×1490mm/ホイールベース=2815mm/車重=1680kg/駆動方式=FF/1.6リッター直4DOHC16バルブターボ(156ps/6000rpm、24.5kgm/1400-3500rpm)/価格=479万円(テスト車=同じ)

シトロエンC5ツアラー エクスクルーシブ(FF/6AT)【試乗記】

いいことずくめ 2010.10.07 試乗記 下野 康史 シトロエンC5ツアラー エクスクルーシブ(FF/6AT)
……479万円

マイナーチェンジで新しいドライブトレインを採用した「C5」。デカいボディに小さいエンジンの組み合わせを、1.6リッターの「ツアラー」で試した。
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新たな魅力

現在、大型シトロエンの国内セールスは「C4ピカソ」のひとり勝ちだそうだ。でも、考えてみると、それはミニバンというカテゴリーのひとり勝ちだと思う。人も荷物も載せて、クルマを遊びの道具に使いたいなら、「C5」のワゴンはイチオシの大型シトロエンである。

それだけでなく「C5ツアラー」はライバルのなかでもユニークな存在だ。同じ価格帯にある「メルセデス・ベンツCクラス」や「BMW3シリーズ」のワゴンより、ボディはひとまわり大きい。「メルセデス・ベンツEクラス」や「BMW5シリーズ」と比べれば、はるかに安い。わかりやすくBMWにたとえるなら、3と5の中間“4シリーズツーリング”みたいな車格を持つのがC5ツアラーの立ち位置だと思う。もちろんハイドロ・ニューマチック・サスペンションというユニークさも、他車にないアドバンテージだ。

そのC5にまた新たな魅力が加わった。4気筒モデルに採用された新エンジン。これまでの2リッターユニットに代わって、PSAグループ/BMW共同開発の1.6リッターターボが搭載されたのである。同時に自動変速機も、長いことおなじみだった“AL4”からアイシンAW製に換装され、スペック上も4段ATから6段ATに躍進した。

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数値以上のチカラ

その新パワーユニットは、いいことずくめである。というのも、エンジンとATがイマイチというのが、2リッター「C5」の一番の問題点だったからだ。ツインスクロールターボの1.6リッター4気筒は156ps。143psだった2リッターをしのぐが、実際乗るとパワーアップは数値以上に感じられる。
このエンジンはひと足先にC4ピカソにも採用されているが、1.6リッターとあなどるなかれ。低速トルクが豊かで、しかも回せば伸びる。そのため、2リッター時代には物足りなかった追い越しやヒルクライム走行でも、1.7トン近いワゴンボディを十分活発に加速させる。イチゲンさんに運転させて、このクルマの排気量を言い当てられる人はまずいないだろう。キャパシティは小さくても、いざというときにエンジンが“大きくなる”ような印象を与えるのは、フォルクスワーゲンの1.4リッターツインチャージャーに代表される最新型小排気量エンジン+過給器ユニットの特徴といえそうだ。

PSAグループがルノーと共同開発したAL4も、最近は変速プログラムや変速ショックがだいぶ改良されてきたが、新しい6段ATは機械的洗練度でさらにその上をいく。ひとことで言うと、変速機の存在を意識させることがなくなった。
ただ、ひとつ気になったのは、フロアセレクターのノッチが小さすぎ、動きも渋いこと。望むポジションに一発で入りにくく、「D」と「R」のシフトを繰り返す縦列駐車のときなどに不都合を感じた。

ちょっとしたスポーツワゴン

最新のハイドロ・ニューマチック・サスペンション“ハイドラクティブIIIプラス”に変更はない。ブレーキやパワーステアリングにもハイドロ系の油圧を使っていた昔と比べると、今のハイドロ・シトロエンははるかにフツーである。ただし書きやエクスキューズなしにライバルと比べられるようになったのも、それが大きい。ハイドロ系の仕事をサスペンションに限定したおかげで、信頼性も飛躍的に上がり、今は5年間または20万kmメインテナンスフリーである。

とはいっても、ハイドラクティブIIIプラスがもたらす乗り心地や操縦性が凡百の金属サスと同じかというと、けっしてそんなことはない。一般道や高速道路を普通に流していても、やはり“ハイドロ足”は独特だ。外乱を受けて車体の姿勢が変わるフトした拍子に、ウォーターベッドのような柔らかさを見せる。かと思えば、しなやかに感じたサスペンションが、コーナーでは大きなロールを頑として許さない。C5ツアラーの足まわりも、ワインディングロードではちょっとしたスポーツワゴンのそれである。

4段階、最大12cmも車高が上下するのは、ハイドロ足のお約束だ。さらにツアラーは、荷室壁に付くスイッチでリアだけをシャコタンにすることができる。かさのある重量物の積み下ろし時に使うアクセスモードだ。

いつものように試乗車の車検証をチェックしていたら、排気量の欄に「1.59リッター」とプリントされていた。あらためて見せられると、思わず笑う。
試乗した「エクスクルーシブ」のタイヤサイズは、「3.0エクスクルーシブ」と同じ245/45R18。そんなブッといタイヤを履いた、客室も荷室もたっぷりのステーションワゴンが、ターボ付きとはいえ、たかだか1.6リッターのエンジンで動くのだ。これは「MINIクーパー」とも基本的に同じエンジンだから、ボンネットを開けると、空間もあり余っている。なんだか痛快だ。これだけ4気筒モデルのパワーユニットが若返った以上、C5でわざわざ3リッターV6を選ぶ理由もなくなったと思う。

(文=下野康史/写真=郡大二郎)

 
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写真をクリックすると後席が倒れるさまが見られます。
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「ラゲッジルームハイトコントロールスイッチ」は「C5ツアラー」全グレードに標準装備される。
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写真は車高をもっとも下げた状態。
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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