アウディQ6 e-tronクワトロ アドバンスト(4WD)
オンリーワンになれますか? 2025.08.16 試乗記 「アウディQ6 e-tron」が日本に上陸。最新のデザインと最新のテクノロジーを採用し、600km以上の一充電走行距離を誇る魅力的な新型電気自動車だ。ツインモーターの4WDモデル「クワトロ アドバンスト」の仕上がりをリポートする。充電器の出力も分かる
BEVにまつわるあれやこれやの諸事情は、過去5年くらいに限ってもずいぶんと変わってきたように思う。例えば満充電の走行距離。400km以下あたりが平均的だったのに、いまでは500km以上が珍しくなくなってきた。充電インフラも、まだまだ決して十分とはいえないものの、出力の大きな充電器の数も着実に増えてきている。
こうしたクルマ側とインフラ側の変化に伴い、ユーザー側のBEVに対する認識も変わってきている。先日、MINIのセールス担当の方と話をさせていただいたとき、「MINIのBEVを購入されるお客さまの半数くらいは、ご自宅に充電設備がないんです」とおっしゃっていた。外出先で上手に充電して帰宅するという使い方をされているそうだ。自宅に充電設備が整わないとBEVは買えないという考え方は、もはや過去のものとなりつつあるようだ。
そして新たな問題も浮かび上がってきている。以前なら、とにかく充電器の場所を探すことが何より重要だったが、最近ではその充電器の出力がどれくらいなのかという情報も必須である。例えば高速道路のSAやPAに設置されている急速充電器は、一度の充電時間が30分と定められている。しかし、場所によって充電器の出力は50kWだったり150kWだったりとかなりまちまちだ。
余裕を持って早めに充電しておこうと立ち寄ったSAの充電器が50kWで、10km走った先のPAは150kWだったなんてことがあると、どっちで充電してもどうせ30分停車するわけで、なんだか損をした気分になる。こういう思いをしないためには、あらかじめルート上にある充電器の場所だけでなく出力までも調べておかないといけないし、予定外の寄り道なんてしたらまた調べ直す必要もあるわけで、慣れるまではちょっと面倒くさい。
アウディQ6 e-tronクワトロに乗り込んだら、ナビゲーションには付近にある充電器の場所とともに出力まで表示されていた。やっとこういう時代になったんだなと思ったし、これなら長距離ドライブでも安心である。
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800Vの電子プラットフォームを採用
アウディQ6 e-tronはご存じのように、BEVが主力グレードとなった「ポルシェ・マカン」とプラットフォームを共有する。ポルシェとアウディが共同開発したとされるこの「PPE(プレミアムプラットフォームエレクトリック)」は、今後フォルクスワーゲン(VW)グループ内でさらなる共有化が進むだろう。
電子プラットフォームは「タイカン」や「e-tron GT」と同じく800Vを使用しているが、駆動用の電池の充電システムに新たな試みがみられる。Q6 e-tronには2WDと4WDのクワトロが用意されていて、最大270kWの充電器に対応しているものの、日本の急速充電器(CHAdeMO)だと、クワトロは最大135kWの充電出力に対応する。しかしもしその充電器が400Vの場合には、800Vの電池を2分割してそれぞれ400Vずつを135kWで並列に充電するという。
最近のBEVの充電性能は「○分で○%」などと説明されるけれど、そうした最大効率の恩恵を得られる充電ネットワークは極めて数が限られる。クルマ側の技術革新に充電インフラが追い付いていないのが実情だ。そんな牛歩みたいな充電インフラでもどうにか使い勝手を向上させようというアウディの並列充電は、ユーザーファーストの視点に立ったものでありがたい。
いっぽうで、アウディ、ポルシェ、VWにレクサス(加入延期)も加わったPCA(プレミアムチャージングアライアンス)アプリは、基本的に加盟するブランドのディーラーでのみ対応するため、そのアプリしか持っていないと主にe-Mobility Powerの充電器を設置する高速道路などの公共充電器は使えない。Q6 e-tronクワトロの航続距離は644kmと公表されているので、たいていのショートトリップくらいなら無充電でいけそうだが、BEVでのロングツーリングの場合は、相変わらずさまざまな事前準備が強いられるようだ。
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高級車にふさわしい乗り味
運転席側のドアを開けると、大きな「MMIパノラマディスプレイ」が相当の存在感を放ちながら目に飛び込んでくる。この中には11.9インチのメーターディスプレイと、14.5インチのタッチ式ディスプレイが収まっており、オプションで助手席前にもさらにディスプレイが追加できる。大型モニターの採用と機械式スイッチの削減は最近のBEVのトレンドにのっとったものだろう。インテリアの質感は総体的に高く上質な雰囲気が漂う。ドアに設けられたスイッチパネルはグロスブラックにアイコンが浮かび上がる仕組みで、見た目に少しビジーな印象を受ける。
今回は都内から御殿場周辺を往復するルートを選んだ。ステアリングとペダルの操作荷重は例によってやや軽め。回したり踏んだりする際に大きな力は必要ないので、軽快感のようなものをドライバーに伝える効果があるいっぽうで、ほんの少しだけ動かすような細かいコントロールには慣れが必要となる。
タウンスピードでの乗り心地は良好だ。試乗車にはオプションの「Sラインパッケージ」が装着されていたので20インチのタイヤを履くものの、ばね下の重さはほとんど気にならず、ドライバーまで届く路面からの入力も最小限にとどまる。BEVなのでパワートレイン由来の音や振動は少ないとはいえ、遮音や吸音の対策をずいぶんやっているようで、静粛性はとても高い。マイルドな乗り心地と静かな室内空間により、高級車らしい乗り味が実現されている。ちなみに車両本体価格は998万円。立派な高級車価格でもある。
高速域ではもっと落ち着きがほしい
Q6のクワトロは、前後にそれぞれ1個ずつの駆動用モーターが配置されている。後輪は一般的な永久磁石同期型だが、前輪は非同期型。高速巡航など低負荷の状況でフロントへの電力供給を止めて後輪駆動で走る際、非同期型のほうがカラ回りするときのフリクションが少ないからだ。BEVの4WDの場合、バッテリーをできるだけ温存するためにフルタイム四駆というのは少ない。2WDでの走行で問題となるのは、休んでいるモーターが引きずりを起こして抵抗になってしまうこと。これを回避するために、クラッチを設けてデカップリングする機構を備えるBEVもあるが、アウディは前後のモーターの種類を変えることで対応したようだ。
よって高速巡航中は基本的に後輪駆動で走っているはずだけれど、例えば追い越しなどの加速時に前輪も駆動しているかどうかは正直分からなかった。いっぽうで、気になったのは乗り心地である。タウンスピードでは気にならなかったばね下の重さを意識させられるようになり、比較的大きめの路面からの入力に対して4輪がバタバタする場面に何度か遭遇した。直進安定性に関しても、個人的にはもう少しステアリングがどっしり据わって路面に張り付くような安定感がほしい。前述のようにステアリングの操作荷重が軽いので、路面からの入力でステアリングがわずかに動いてしまうような局面では、その都度それを微舵修正することが何度かあった。
そんな小さな愚痴を除けば、Q6 e-tronクワトロは総体的に悪くないと思う。ただ、1000万円を用意してまでもこのクルマでなくては絶対にイヤだという、記憶に深く刻み込まれるような強烈なインパクトや魅力にちょっと乏しいと、幼稚な自分なんかは感じてしまった。こういう無機質な乗り味のほうが妙なクセがなくてむしろしっくりくるというほうが、尋常な民意なのかもしれない。
(文=渡辺慎太郎/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=アウディ ジャパン)
テスト車のデータ
アウディQ6 e-tronクワトロ アドバンスト
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4770×1965×1670mm
ホイールベース:2895mm
車重:2420kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流誘導電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:275N・m(28.0kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:580N・m(59.1kgf・m)
システム最高出力:387PS(285kW)
タイヤ:(前)255/50R20 109W XL/(後)285/45R20 112W XL(ブリヂストン・トランザT005)
一充電走行距離:644km(WLTCモード)
交流電力量消費率:167Wh/km(WLTCモード)
価格:998万円/テスト車=1237万円
オプション装備:ボディーカラー<デイトナグレーパールエフェクト>(9万円)/テクノロジーパッケージ<パッセンジャーディスプレイ、MMIエクスペリエンスプロ、Bang&Olufsen 3Dプレミアムサウンドシステム[16スピーカー+フロントヘッドレストスピーカー]>(63万円)/Sラインパッケージ<Sラインエクステリア、Sスポーツサスペンション、e-tronスポーツサウンド、アルミホイール 5アームストラクチャー グラファイトグレーポリッシュト フロント:8.5J×20 255/50R20タイヤ/リア:10J×20 285/45R20タイヤ、マトリクスLEDヘッドライト、ダイナミックターンインジケーター、デジタルライトシグネチャー、シートヒーター[フロント/リア]、ステアリングヒーター、スポーツシート[フロント]、ステアリングホイール 3スポーク レザー マルチファンクション パドルシフト フラットトップ&ボトム、ステンレスペダルカバー、ヘッドライニング ブラック>(56万円)/ファンクションパッケージ<プライバシーガラス、ロールアップサンシェード、フルペイントフィニッシュ>(12万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:3708km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:257.9km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:4.8km/kWh(車載電費計計測値)

渡辺 慎太郎
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