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軽規格でFR!? 次の「ダイハツ・コペン」について今わかっていること

2025.11.10 デイリーコラム 工藤 貴宏
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市場が“軽”を望んでいる!

これは何が何でも、たとえ世界を敵に回そうとも全力で応援するしかない! ……なんてことを筆者に思わせたクルマが、ダイハツが“モビショー”ことジャパンモビリティショー2025に出展した「K-OPEN(コペン)」だ。これは誰がどう見たって、次期型コペンを示唆するコンセプトカー。2026年8月に生産を終了する現行型コペンの“次”というわけである。

ただ、このコンセプトカーがそのまま市販されるわけではない。ダイハツは公式プレスリリースにおいて、コペンは次の世代へバトンをつなぐ予定であることを明言しているが、現行コペンが生産を終えてもすぐに“次”が出てくるわけではなさそうだ。開発者に進捗(しんちょく)状況を尋ねてみたら「登山に例えれば、やっと登山道具を一式そろえて登り始めたくらい。まだ2合目にもたどり着いていない」と明かしてくれた。発売までにはまだ時間がかかるだろう。

とはいえ、何よりうれしいのはダイハツが“次のコペン”の準備に取りかかってくれているということである。「ホンダS660」や「スズキ・アルトワークス」なきいま、気軽なスポーツカーといえば、とにもかくにもコペンである。現行型の生産終了がアナウンスされつつも、「やめない」という意思表明をしてくれるだけでダイハツの意気込みが伝わってくるというものだ。

今回明らかになった次期コペンのポイントは「FR(フロントエンジン・リアドライブ)である」ことと「軽自動車枠におさまる」ということ。記憶のいい読者諸兄なら2年前のモビリティショーでダイハツが出展したコンセプトカー「VISION COPEN(ビジョン コペン)」を覚えていることだろう。その際は「軽自動車枠からはみ出してエンジンは1.3リッターターボ」となっていたが、今回は軽自動車に逆戻り。そのシフトにどんな背景があるのかといえば、市場からの声。「あのときは小型車もプランのひとつだったが、その後『軽自動車のほうがいい』という声をたくさんいただいた。だから軽自動車でいくことにした」のだという。

2025年10月29日のプレスデーで開幕したジャパンモビリティショー2025。そのダイハツブースの中央には、次期「コペン」の姿を示唆するコンセプトカー「K-OPEN」が展示された。
2025年10月29日のプレスデーで開幕したジャパンモビリティショー2025。そのダイハツブースの中央には、次期「コペン」の姿を示唆するコンセプトカー「K-OPEN」が展示された。拡大
フロントよりもワイドに張り出した「K-OPEN」のリアまわりは、後輪駆動車であることを誇示するかのようである。
フロントよりもワイドに張り出した「K-OPEN」のリアまわりは、後輪駆動車であることを誇示するかのようである。拡大
インテリアはすっきり、シンプル。洗練された大人っぽいデザインでまとめられている。
インテリアはすっきり、シンプル。洗練された大人っぽいデザインでまとめられている。拡大
「K-OPEN」のシート。センターに溝の入った座面や背もたれ、フローティング形状のヘッドレストなど、デザイン上の特徴は「ビジョン コペン」(2023年)から引き継がれている。
「K-OPEN」のシート。センターに溝の入った座面や背もたれ、フローティング形状のヘッドレストなど、デザイン上の特徴は「ビジョン コペン」(2023年)から引き継がれている。拡大
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専用の車台に商用エンジン

いっぽうでこれまでFF(フロントエンジン・フロントドライブ)としていたのを次期型はFRとする駆動方式の変更に関しては「後輪駆動を歓迎する声が多かった」のだとか。やっぱりね。開発者いわく「皆さんの期待が多い『軽自動車』と『後輪駆動』の組み合わせでいく」とのこと。民意を受けた方針転換なのである。

そしてダイハツの本気を感じさせるのは、現行コペンのボディーに軽商用車系の3気筒ターボエンジンとドライブトレインを移植した後輪駆動の実験車両「K-OPENランニングプロト」まで展示したこと。すでに後輪駆動を見据えた先行開発を行っているというわけだ。

この開発車両は現行コペンのプラットフォームにエンジン縦置きの後輪駆動パワートレインを無理やり押し込んだものだが、市販する際はさすがに後輪駆動前提のコペン専用プラットフォームをおこす算段らしい。そこにはコストを掛けつつも、パワートレインはダイハツが持つ商用車系軽自動車(ターボ付きなら「アトレー」用か?)から流用してコスト、すなわち車両価格を抑えることを視野に入れているようだ。ある意味スズキの商用車系(ターボ付きなので「エブリイワゴン」用)のパワートレインを組み込んだ「セブン170」と同じということになる。

開発者によるといま悩んでいるポイントは2つあるらしい。ひとつは「リアサスペンション」。もうひとつは「ルーフ」なのだとか。

リアサスペンションに関しては軽商用車ベースであればリジッドサス(リジッドアクスル)だと駆動系の流用範囲が広いので価格を抑えられるが、走りを考えたら独立サスが欲しくなるところ。ただ、ピュアスポーツカーのケータハムだって一部モデルはリジットとしているくらいだから、絶対的な速さとスタビリティーを求めないのならリジッドサスでコストを抑えて車両価格を下げるという方法もアリだと思う。次元や特性の違いはあってもクルマを操る楽しさ自体はサスペンション形式に依存するものではない。

ジャパンモビリティショー2025では「K-OPEN」(写真奥)とともに、次期「コペン」のテスト車「K-OPENランニングプロト」も展示された。本気で次期型の開発に挑んでいるという、ダイハツのやる気の表れだ。
ジャパンモビリティショー2025では「K-OPEN」(写真奥)とともに、次期「コペン」のテスト車「K-OPENランニングプロト」も展示された。本気で次期型の開発に挑んでいるという、ダイハツのやる気の表れだ。拡大
今回提案されたパワーユニットは、軽商用車用の3気筒ターボエンジン。傾斜させてエンジンルーム後方に搭載することで、低重心化と前後重量配分の最適化(50:50)を目指すという。写真はテスト車「K-OPENランニングプロト」のエンジンルーム。
今回提案されたパワーユニットは、軽商用車用の3気筒ターボエンジン。傾斜させてエンジンルーム後方に搭載することで、低重心化と前後重量配分の最適化(50:50)を目指すという。写真はテスト車「K-OPENランニングプロト」のエンジンルーム。拡大
「K-OPENランニングプロト」の展示に際しては、鏡を使ってエンジンルーム下面の様子までが披露された。泥はねなどが残ったままの姿がかえって、開発現場のトライ&エラーを想像させる。
「K-OPENランニングプロト」の展示に際しては、鏡を使ってエンジンルーム下面の様子までが披露された。泥はねなどが残ったままの姿がかえって、開発現場のトライ&エラーを想像させる。拡大
「K-OPENランニングプロト」の車内。フルバケットシートやスエード調表皮のステアリングホイールなど、レーシーなアイテムが開発の本気度を物語る。
「K-OPENランニングプロト」の車内。フルバケットシートやスエード調表皮のステアリングホイールなど、レーシーなアイテムが開発の本気度を物語る。拡大

あなたの声が追い風になる

ルーフは、車名からしてオープンカーになるのは当然だが、従来どおりの“電動開閉式ハードトップ”、「マツダ・ロードスター」ほろ車のような“ソフトトップ”、それからS660のようにAピラーからBピラーの間だけを外せる通称“タルガトップ”の3タイプが考えられるという。

ポイントは“走りとの兼ね合い”で、電動開閉式ハードトップよりはソフトトップ。そしてソフトトップよりはタルガトップのほうが「車体構造的にリアサスペンションのストロークが稼げる車体設計になり、走りが良くなる」という。しかし電動格納式ハードトップこそコペンのアイデンティティーという考え方もあるから、これも今後のファンの声が開発を左右するかもしれない。

それらに関しては「これから決めていく」とのことだが、逆にいえば「まだそんな基本的なことも決まっていない」わけだ。そう聞けば「開発は始まったばかり」というのもうなずける。デビューはどれだけ早くても3年先だろうか。

いずれにせよ、スポーツカー好きのひとりとして全力で応援せずにはいられない次世代コペン。開発者いわく「皆さんの応援が市販化に向けての大きな力となります」とのこと。具体的にはニュース記事のコメント欄にポジティブなコメントを書いたり、お客さま相談室へ「欲しい」というメッセージを送ったりすると“大きな追い風”になるそうだから、欲しい人は全力で応援しようじゃないか。

ちなみに軽自動車よりも長く見えるコンセプトカーのK-OPENだが、しっかりと軽自動車枠におさまっているとのこと。そしてノーズが長いのは前後重量配分の最適化を目的にエンジンをフロントミドシップに搭載するため。そんな話を聞くと、ますます期待するしかないじゃないか!

(文=工藤貴宏/写真=webCG/編集=関 顕也)

次期「コペン」のルーフは、ソフトトップかそれともハードトップか? パッセンジャーの真上だけを開閉させる“タルガトップ”タイプも検討しているという。
次期「コペン」のルーフは、ソフトトップかそれともハードトップか? パッセンジャーの真上だけを開閉させる“タルガトップ”タイプも検討しているという。拡大
コンセプトカー「K-OPEN」のトランスミッションはMT。開発車両「K-OPENランニングプロト」のそれも同様であり、マニュアルシフトに対するこだわりは相当なものとみられる。
コンセプトカー「K-OPEN」のトランスミッションはMT。開発車両「K-OPENランニングプロト」のそれも同様であり、マニュアルシフトに対するこだわりは相当なものとみられる。拡大
FR車らしい「ロングノーズ&ショートオーバーハング」のスタイリングが目を引く「ダイハツK-OPEN」。展示車は16インチサイズのホイールを装着していた。
FR車らしい「ロングノーズ&ショートオーバーハング」のスタイリングが目を引く「ダイハツK-OPEN」。展示車は16インチサイズのホイールを装着していた。拡大
ヘッドランプやグリルの意匠に「ビジョン コペン」(2023年)との違いは見られるが、基本的なフロントフェイスのデザインは変わらず。“コペンらしい顔”で製品化を目指すものと思われる。
ヘッドランプやグリルの意匠に「ビジョン コペン」(2023年)との違いは見られるが、基本的なフロントフェイスのデザインは変わらず。“コペンらしい顔”で製品化を目指すものと思われる。拡大
工藤 貴宏

工藤 貴宏

物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。

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