日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)
鍛え直した成果 2026.01.10 試乗記 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。日産復活のカギを握るルークス
再建途上にある日産の経営危機を招いた一因といえば、利益率や採算性ばかりを重視した挙げ句に陥った国内市場のラインナップの空疎化だ。なにせ社員でさえ買い替えようにも欲しいクルマが見当たらないと嘆いていたのはつい1、2年前の話。こんな状況では販売店も浮かばれない。ラインナップの充実も急務だが、数量でセールスの現場を支える策もしっかり考えないと反転攻勢の出口も先細ってしまう。
その役割が期待されるのがルークスだ。なにせ車型は現代の国民車ともいえるスライドドアのハイトワゴンである。その市場は長年「ホンダN-BOX」が牛耳っているが、直近では「スズキ・スペーシア」の追い上げも目に見えるようになった。そして老舗の「タント」を擁するダイハツは、「ムーヴ」もスライドドア化して価格帯でも二段構えで存在感を高めようとしている。ルークスの月販目標は明示されていないが、この激しいバトルの真ん中に割って入ることができれば、5000台以上の数量が安定的に確保できるかもしれない。
新型ルークスのバリエーションは標準系と「ハイウェイスター」系に大別される。「プロパイロット」とターボが選べるのはハイウェイスターのみで、取材車はそのどちらも搭載した「ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション」だ。新型ルークスの現時点での販売内訳では約4台に1台がこのグレードだという。価格的には「e-POWER」を積む「ノート」のベースグレードにほど近いが、お客さんの多くは軽であることが重要なのだから、現時点では食い合うことへの心配は小さいだろう。
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高価なだけのことはある質感
昨今はいわゆるカスタム的なコスメが退潮傾向にあるというのはよそのメーカーでも聞く話であって、ハイウェイスターもご多分に漏れずギラギラした加飾は抑えられている。標準系との差異はヘッドライト間のガーニッシュが上下に幅広く、ロアグリルの形状が横に広いことだが、一見さんには何がなんだかという話だと思う。そのためにガーニッシュの隅には「HighwaySTAR」のエンブレムが配されるが、それも同色化されていて発見するのも難しい。
さすがに識別点が少なすぎると思ったのか、ハイウェイスターにはオプションで標準系では選べないバイカラーが用意される。ちなみに取材車は「シナモンラテ×フローズンバニラパール」という歯にしみそうな名前だったが、価格は12万2100円とスタバなら100回以上は通えそうなお代が飛んでいく。さらにダッシュボードが型抜きではなく布巻きになるプレミアムインテリアも4万4000円で追加……と、うっかりすると色と内装だけで憧れのドラム式洗濯機が買えそうな出費になってしまうので気が緩められない。
と、そこまでやった取材車は乗り込むとさすがに軽離れした上質さを感じさせてくれた。シートは表皮が工夫されていて肌触りが柔らかく、もちっと沈み込むようなホールド感が印象的だ。造形のなかに織り込まれたポケット類の数はこれでもかと言わんがばかりで、ティッシュ箱が収まるスペースは引き出すと紙が引き出しやすくなるようにチルトするなど芸も細かい。開閉モノは数のぶんだけ異音要素につながるが、ガタミシ音の類いもしっかり封じられているあたりはさすがだと思う。
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基本がよくできている
そういうささいなことも気に留めてしまうほど、ルークスは静粛性にたけている。遮音ガラスや高機能吸音材の採用、シーリングの徹底など外からの音消しには相当気づかったことがアナウンスされているが、パワー&ドライブトレインの音量自体も抑え気味に感じられる。構成されているコンポーネンツは車台も含めて前型からのキャリーオーバーだが、メカ側のハード、ソフト両面のリファインも進んでいるのだろう。それは兄弟車ともいえる「デリカミニ」でも感じられたことだ。
15インチを履くターボ系の乗り味は、凹凸の多いところでは少し角張った印象もあるが、総じてきれいにまとめられている。高重心の上屋をうまくなだめながらロール量をなるべく均一に保つようにしつけられたアシのおかげで、高速域でも安心して舵取りに集中できるのがいい。こうなってくると主に高速巡航で威力を発揮するプロパイロットも使いでがある。ADASこそ走る、曲がる、止まるというクルマ側の基礎がしっかりできていないと不安な挙動が表れるが、ルークスはそういう動的質感面がハイトワゴンとしては相当しっかりできているのがクルマ好きからみた最大の長所といえるだろう。この点においては絶対王者と思えたN-BOXをも凌駕(りょうが)している。
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乗り味のよさでは自然吸気モデルだが……
実はそういう、走ってナンボのことをいえば、より好印象なのはターボではなく14インチを履く自然吸気エンジンモデルの側だ。ターボとの重量差は20~30kgだが、その額面差以上に走りにしなやかさと軽快感がある。CVTのマネジメントもトルクをうまく使う方向で設定されていて、アクセルを踏み込んだ際のエンジンの無駄ぼえもよく抑えられていた。結果的にターボ以上に静かで上質感も高い。が、それはタウンスピード+αのところで、高速域ではターボの余裕が質感をぐっと持ち上げてくれる。長きにわたってハイトワゴンを巡る帯に短し……論争を解決するのはやっぱりBEV化だろうか。
と、その前に重量がかさみ剛性も落ちるスライドドア自体を辛抱すればいいのでは……とオッさん的には思うわけだが、日産調べでは軽のお客さん的にはもはやそういう打算は成り立たないそうだ。両隣を気にせず自動で開け閉めできる扉は、もはや人の乗り降りだけではなく荷物の積み下ろしにも頻用されていて、大きなリアゲートの開閉機会も奪っているほどだという。そういえばムーヴの開発陣も、今やスライドドアでないと検討の対象にもならないんです……とボヤいていた。
特異に進化する日本のアシグルマたちは、果たしてこの先、どんな風景をつくり出すのか。それを楽しみにしてくれているのがアメリカの大統領だったというのが、関税に苦しめられた2025年のクルマ業界にとっては笑えないオチだったのかもしれない。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
テスト車のデータ
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1785mm
ホイールベース:2495mm
車重:990kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:64PS(47kW)/5600rpm
最大トルク:100N・m(10.2kgf・m)/2400-4000rpm
タイヤ:(前)165/55R15 75V/(後)165/55R15 75V(ブリヂストン・エコピアEP150)
燃費:19.3km/リッター(WLTCモード)
価格:224万9500円/テスト車=283万5140円
オプション装備:特別塗装色<シナモンラテ/フローズンバニラパール プレミアム2トーン>(12万2100円)/インテリジェントアラウンドビューモニター<移動物検知、3Dビュー機能付き+ルームミラー+Nissan Connectインフォテインメントシステム+車載通信ユニット<TCU>+ドライブレコーダー<前後セット>+ETC2.0ユニット<ビルトインタイプ>+プロパイロット緊急停止支援システム<SOSコール機能付き>+SOSコール+カーアラーム(32万8900円)/プレミアムインテリア(4万4000円)/快適パック(4万9500円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水12カ月<フロントウィンドウ、フロントドアガラス>(1万3640円)/フロアカーペット<エクセレント>(2万7500円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1781km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:418.5km
使用燃料:29.5リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:14.2km/リッター(車載燃費計計測値)/14.1km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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