ハーレーダビッドソン・ロードグライド リミテッド(6MT)
魂に突き刺さる 2026.04.06 試乗記 ハーレーダビッドソンを象徴するアメリカンツアラー「ロードグライド」が、2026年モデルに進化。さらなる上級機種「ロードグライド リミテッド」が復活した。新しいエンジンと充実した装備を得た、“至高のツアラーモデル”と称される一台の実力に触れた。エンジンがどこまでも心地いい
編集H田からハーレーダビッドソンの2026年モデル試乗の話がきたときは、うれしかった。幼少期からフル装備のハーレーにあこがれがあったからである。知り合いが、ロードグライドをネタに飲み屋のネーチャンを口説き、タンデムツーリングに誘い出したという話も、若干影響しているかもしれない。なんにしても、ハーレーのツーリングモデルには普通のバイクにはないオーラを感じるのである。
新型のロードグライド リミテッドは、最大トルク175N・mを発生する「ミルウォーキーエイトVVT 117」エンジンを搭載している。このエンジンが、実に素晴らしい。大トルクででっかいフライホイールを回しているからこそ、力強くておおらかなフィーリングが生み出される。当然のことながら全域でトルクはモリモリ。車重が417kgもあるのに、アイドリング付近の回転でクラッチをつなぐだけで、軽快に走りだす。そのままのんびり流してみると、2000rpmあたりの鼓動感と加速感がとても心地よい。トップギアで100km/h走行時の回転数は2500rpmだから、日本の道路だったら、どこを走っていてもこの感覚を楽しめることになる。
おまけにこのエンジン、排気量が1923ccもあるのに“上の伸び”もいい。レブリミットの5500rpmまできれいに回っていく。ラバーマウントによる振動対策によって、アイドリングでのブルブルとした車体の震えは回転が上がるとピタリと止まり、レブリミットまで振動はほとんど感じない。回したときはとてもスムーズかつシャープなフィーリングだ。
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理屈でつくれるものではない
ライディングモードで「スポーツ」を選んだ場合は、スロットルレスポンスが鋭くなり、操作に対してダイレクトに反応するようになる。大トルクがリニアに発生するから、開けはじめのパンチはなかなかのもの。足を前に投げ出し、シートの上にふんぞり返るようなポジションなので、全開加速時はシートの段差にお尻が押し付けられるような感覚になる。もっとも、もともとのエンジンの性格が過敏ではないので、シビアな操作が要求されることもない。スポーツバイクのような加速は望むべくもないけれど、ストリートで走るのであれば、これくらいのパワーが限界じゃないかと思う。
クラッチは相変わらず重めで、トランスミッションのタッチも「ガシャン」という感じなのだけど、これもなんだか「ハーレーに乗っている感」があって悪くない。スポーツモードにしてスロットルを大きく開けたとき、カリカリというノッキング音が少し聞こえるのがやや気になったが、さまざまなテストを経て市販しているはずだから、許容範囲なのだろう。
排気音はしっかり消音されているのにとても心地よいし、上まで引っ張ったときの迫力もある。ハーレーらしいVツインのフィーリングが守られたまま性能は確実に上がっていて、とても楽しい。こういうエンジンは、細かく理詰めで「コンパクトに軽くしよう」なんて考えていたらつくれないのだろうなあ、なんて思ったのであった。
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操る楽しさと快適な乗り心地
ハンドリングは、無敵の安定感が光る。東京ゲートブリッジで強風に吹かれ、周囲のクルマがふらついていたのに、こいつはびくともしなかった。またロードグライドを知らない人は、「コーナリングは苦手だろう」と思っているかもしれないが、実はとても面白い。車体が傾いたところでピタッと安定し、バイク任せにしておけば勝手に曲がってくれるような安心感がある。バイクをコントロールしているというよりも、巨大な生き物を自由自在に操っているような感じである。
しかもうれしいのが740mmというシート高だ。原付二種でも「ヤマハXSR125」なんかは810mmだから、これがどれだけ低いかがわかるだろう。バイクを支えるのも容易だし、走っているときの安心感もある。このシート高を実現するため、リアサスペンションのストロークは長くすることができなかったようで、そのセッティングは硬めだが、車重があるので乗り心地の悪さは感じない。
そんなこんなで、400kgオーバーの車体を忘れてしまうほど楽しく走っていたのだが、唯一、若干苦戦したのがUターン。ハンドル幅があるため、またがったままフルロックまで切ると、外側の腕が伸び切ってしまい、操作に余裕がなくなるのだ。仕方なく、腕が伸び切る手前までハンドルを切ってUターンするのだが、そうなると微妙な半クラッチの操作が難しくなってしまう。ただ、これは筆者が足をつかずに旋回しようとしたことが要因。足つきはいいから、慌てずに足をベタベタとつきながら操作すれば、ビッグクルーザーとしてはUターンもしやすいほうだと思う。
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ほかのバイクにはない感動がある
ロードグライドの世界観をさらに大きく広げる強力な武器は、200Wのオーディオシステムである。たぶん体験したことがない人にはわからないだろうが、バイクで聴く音楽というものは心に響く。しかもロードグライドの場合、タンデムシートの横にもスピーカーがあるから、前後から音に包まれるような感覚になる。周囲の空気感に包まれ、なおかつそこにVツインの鼓動感が加わるため、音響の効いた室内や車内で聴くのとは、感動の質が違うのだ。
もちろん、周囲の環境と流す音楽のマッチングも重要になってくるのだが、きれいな夕日を浴びながら、お気に入りの道でとっておきの音楽を流したりしたら、魂に深く刺さること請け合いだ。たぶん、知り合いが飲み屋のネーチャンを口説き落としたときも、トドメの文句はこれだったんだろう。嘘(うそ)だと思うなら、ロードグライドで夕日のなかを走りながら、音楽を流してみればいい。
大きさや価格などを考えたら、ロードグライドは万人受けするバイクではないかもしれない。しかし、ほかのバイクにはない感動があることも間違いない。威風堂々としたその走りは、最新モデルでも健在である。
(文=後藤 武/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2620×1035×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:740mm
重量:417kg
エンジン:1923cc 空油冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:107HP(80kW)/5020rpm
最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.9リッター/100km(約16.9km/リッター、EU134/2014)
価格:435万3800円~

後藤 武
ライター/エディター。航空誌『シュナイダー』や二輪専門誌『CLUBMAN』『2ストマガジン』などの編集長を経てフリーランスに。エアロバティックスパイロットだった経験を生かしてエアレースの解説なども担当。二輪旧車、V8、複葉機をこよなく愛す。
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