ハーレーダビッドソン・ストリートグライド(6MT)/ロードグライド(6MT)
最後のアメ車に試される 2024.04.27 試乗記 ハーレーダビッドソンが擁する巨大なグランドツアラー「ストリートグライド/ロードグライド」が、2024年モデルでフルモデルチェンジ。すべてが新しくなった2台の巨艦を神奈川・横浜で試した……のだが、試されていたのは、むしろテスターのほうだったようだ。2024年モデルの目玉商品
神奈川・横浜で開催されたハーレーダビッドソン2024モデルのメディア試乗会に参加。今年のイチオシとされるオールニューのロードグライド/ストリートグライドと相まみえたので、その感想を報告したい。
ハーレーダビッドソンの試乗会でこのクラスをあてがわれるたび、顏の引きつりが悟られないかとヒヤヒヤする。それでなくてもハーレーはデカいのに、目のそらしようがない巨大なカウリングを目の当たりにすれば、ハンドルを握る前から「オレは何かを試されているのか?」とつぶやかずにはいられなくなる。いや、本当に……。
ハーレーのカテゴリーにおいて、ラグビーにたとえるならフォワードにあたる巨漢ぞろいなのが“グランド・アメリカン・ツーリング”。そのなかで、高らかにオールニューをうたうのが2024年モデルのストリートグライドとロードグライドの2台だ(参照)。
ともに“グライド”を名乗るので区別しにくいが、バットウイングと呼ばれる横広がりのフェアリングをハンドルマウントしているのがストリートグライド。対してシャークノーズという名称そのままに、今にもかみつきそうに前方へ飛び出したフェアリングをフレームに備えているのがロードグライド。このどデカい2台は、顔つきこそ異なるが基本構成もニューな箇所も同じ。そんなわけで、モデルチェンジで刷新されたいくつかのポイントにそって試乗の感想をお伝えする。
完全刷新のフェアリングがもたらす恩恵
もとよりデカいハーレーをどデカく見せるフェアリングは、前年モデルの「CVO」を踏襲するかたちで新しくなった。その展開センスは孤高の域に達しており、最新型を見るにつけ、偉そうにも「うまいなあ」とうなってしまう。ハーレーはいまだ存在感やイメージを主に語られがちだが、個人的にはプロダクトデザインの妙がもっと喧伝(けんでん)されてもいいと思っている。
そのフェアリングは、形状の刷新に伴ってエアロダイナミズムのアップデートも果たしているという。バフェッティングと呼ばれる、フェアリングが受け流した走行風がヘルメットを揺らす現象を60%低減させたらしい。そういえば、前に大型フェアリング付きハーレーに乗ったとき、眼前に大きなシールドがあるのに風が頭に当たるなあと思ったことがある。今回はどうだったか? 高速道路を走れなかったのでなんとも言えないが、これまた「そういえば」という感じで、試乗を終えてから走行風の刺激を受けなかったように思った。
巨大フェアリングの恩恵は、12.3インチという、もはや四輪レベルのTFTカラータッチスクリーンを収納できるところにもあるようだ。これ、見やすくて操作しやすくて、とても便利なうえにハイエンド感が満喫できる。二輪もここまできたのかと感心したのは言うまでもない。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
スロットルを開けると“蹴り”が飛んでくる
「デカい」「どデカい」を連呼しているが、それはエンジンが大きくなったせいでもある。2023年までは、「ミルウォーキーエイト114」。末尾の数字は排気量を示していて、慣れている単位に直すと1868cc。対して新しいロードグライド/ストリートグライドに搭載されたのは、1923ccとなった「ミルウォーキーエイト117」。114のときですら、どこまで大きくするんだとあきれたが、このままだと2リッター超えを迎える日は遠くないかもしれない。
このキャパシティーアップによって、3%の出力アップと4%のトルクアップが実現されたという。そのあたり、2023年モデルと厳密な比較をしないと向上の実態はつかめないが、不用意にスロットルを開けたときの暴力性は、114ですでに顕著だった。それがわずかであれ増したとあれば、117で愚かなことはできない。が、実は試してみた。反応に俊敏性はないものの、遅れてやってくる衝撃はヘビー級の回し蹴りそのもの。キャパシティーアップは、より安定した走行に寄与するものと受け止めるのが正しいようだ。他方、ブランニューでは増量だけでなく、ストリートグライドで8.2kg、ロードグライドで7.3kgの減量、すなわち軽量化も果たしている。
大事なことを言い忘れた。フェアリング以外で両車で異なっているのが、ハンドル形状。ストリートグライドはフェアリング内に収まる高さにグリップがあり、ロードグライドはフェアリングよりも高くグリップが突き出るチョッパー風。チョイスは好みと体格によると思うが、個人的にはストリートグライドの高さに安心感を覚えた。
興味深かったのはミラーだ。ストリートグライドのミラーがセットされているのはハンドルマウントのフェアリング内。ロードグライドもまたハンドルから伸びていた。後者であれば立派なフェアリングに付ければいいのにと思ったものの、もしやそんな細部にハーレーの安全思想が表れているのかもしれないと勝手に納得した。実際はどうなのだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
そしてお値段据え置き
「デカい」「どデカい」とおののいても、ひとたび走りだせば快適さが勝つ。しかし、この巨漢たちの特性を存分に味わうなら、ハイウェイを使ったロングツーリングが最適だ。撮影のためとはいえ、ちまちまUターンするたびに冷や汗をかくような場面は可能な限り避けたい。そんなわけで今回の試乗会でも、グランド・アメリカン・ツーリングに不慣れな者は終始試されている気分を拭い切れなかった。
けれど「試す」をキーワードにするなら、試されているのは頼りないテスターだけにとどまらないだろう。そう思ったのは、2024年モデルのストリートグライド/ロードグライドの価格設定を知ったからだ。両車とも、2023年モデルからお値段据え置きの369万3800円~。物価高騰に加え円安が続くなかで値上げを行わなかったのは、ハーレー側にも試す意図があったようだ。
本国では総販売数の半分を占めるグランド・アメリカン・ツーリング。しかし日本でのシェアは15%前後。その現状をできるだけ本国に近づけたいという思惑を、ブランニューのストリートグライド/ロードグライドの価格に込めたらしい。となれば、普通の二輪好きであれハーレーファンであれ、一度はハーレーの頂を極めたいと夢見る人には、2024年モデルのストリートグライド/ロードグライドはお得なのかもしれない。などと煽(あお)ると、試される気になる人が増えるのではないだろうか。
あれこれ語っているけれど、複雑な時勢に鑑みるにグランド・アメリカン・ツーリングは、というよりハーレー自体が、大排気量エンジンと特異なデザインを魅力としたかつてのアメ車のように思えてくる。その最後の存在となりそうな相手と付き合っておくか否かも、われわれが試されているところかもしれない。
(文=田村十七男/写真=ハーレーダビッドソン ジャパン/編集=堀田剛資)
テスト車のデータ
ハーレーダビッドソン・ストリートグライド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2410×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:715mm
重量:368kg
エンジン:1923cc空油冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:107HP(80kW)/5020rpm
最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、EU134/2014)
価格:369万3800円~398万9700円
ハーレーダビッドソン・ロードグライド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2410×--×--mm
ホイールベース:1625mm
シート高:720mm
重量:380kg
エンジン:1923cc空油冷4ストローク V型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:107HP(80kW)/5020rpm
最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:6.0リッター/100km(約16.7km/リッター、EU134/2014)
価格:369万3800円~398万9700円
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆ハーレーダビッドソンが「ロードグライド」「ストリートグライド」の2024年モデルを発売
◆東京モーターサイクルショーでのハーレーダビッドソンの展示を見る

田村 十七男
-
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】 2026.6.24 「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。
-
三菱トライトンGSR(4WD/6AT)【試乗記】 2026.6.23 三菱のピックアップトラック「トライトン」のマイナーチェンジモデルが登場。トヨタの新型「ハイラックス」を迎え撃つべく三菱は、シャシーを鍛え上げ、走行性能をさらなる高みへと引き上げている。400km余りをドライブした印象をリポートする。
-
ハーレーダビッドソンCVOストリートグライド3リミテッド(6MT)【レビュー】 2026.6.22 ハーレーダビッドソンのユニークな三輪モデル「トライク」シリーズが大幅に進化。お値段800万円超(!)の最上級モデル「CVOストリートグライド3リミテッド」の試乗を通し、新しくなった乗り味と、受け継がれる独創のファン・トゥ・ライドをリポートする。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(4WD)【試乗記】 2026.6.20 トヨタからワゴンのようなボディーの新型電気自動車「bZ4Xツーリング」が登場。いわば既存の「bZ4X」のロングボディー版だが、試乗した4WDモデルはよりパワフルになっているなど、長さ以外も結構違う。350km余りをドライブした印象を報告する。
-
シボレー・コルベットZ06コンバーチブル3LZ(MR/8AT)【試乗記】 2026.6.18 ルマンウイナーのパフォーマンスを、爽快なオープンエアで満喫! レース直系のV8エンジンと、圧倒的なシャシー性能が自慢の「シボレー・コルベットZ06コンバーチブル」に試乗。広く門戸が開かれた、アメリカンスーパースポーツの魅力の一端に触れた。
-
NEW
これから『webCG』に期待することは? アンケートご協力のお願い
2026.6.26From Our Staff皆さまは日ごろ、自動車情報サイト『webCG』をどのように利用していて、どんな記事やサービスの提供を期待されるでしょうか? webCGに関する意識調査のアンケートに、ご協力をお願いいたします。 -
NEW
アルファ・ロメオやDS、マセラティの未来やいかに? ステランティスが発表した新戦略を読み解く
2026.6.26デイリーコラム再起を図るステランティスが、新CEOのもとで新しい次世代戦略を発表。地域主導とブランド構成の再構築を軸とした改革によって、私たちが親しんだアルファ・ロメオやDS、マセラティなどはどうなるのか? 欧州通のジャーナリストが考察する。 -
NEW
モルビデリC252V(6MT)
2026.6.26JAIA輸入二輪車試乗会2026イタリアのモルビデリが中国の資本のもとで復活! 試乗した250ccクラスのクルーザー「C252V」は、かつての中国製品のイメージとは一線を画す、完成度の高いマシンに仕上がっていた。再生とともにグローバルブランドへと脱皮した、名門の実力に迫る。 -
第967回:初代「トヨタ・クラウン」や“ヨタハチ”が「ミッレミリア」を走った!
2026.6.25マッキナ あらモーダ!イタリアの歴史あるヒストリックカーラリー「ミッレミリア」に、日本のクルマが初めて参加! 石畳の道を行く初代「トヨペット・クラウン」に「トヨタ・スポーツ800」「2000GT」「スープラ」の姿を、現地在住の大矢アキオがリポートする。 -
新型「マツダCX-5」が登場 絶版となった先代ディーゼル車の中古価格はどうなる?
2026.6.25デイリーコラム新型「マツダCX-5」の販売が開始され、これまでCX-5の人気をけん引してきたディーゼル車が絶版となった。となれば、先代ディーゼル車の中古車価格は下落か、それとも高騰か。下町の中古車評論家が今後の相場を予想する。 -
アストンマーティンDBX S(4WD/9AT)【試乗記】
2026.6.24試乗記「SUVの形をしたGT」こと「アストンマーティンDBX」が、さらに高性能な「DBX S」に進化。より機敏なフットワークと、よりパワフルなエンジンを得たハイパフォーマンスSUVは、どのような体験を提供してくれるのか? 飛ぶがごとく走る英国の巨獣の実力に触れた。


















