第867回:ハイエースオーナー必見! スマホで操作できる可変ダンパー「KYBアクトライド」を試す
2026.04.22 エディターから一言 拡大 |
KYBからスマートフォンのアプリで操作できる可変ダンパーシステム「ActRide(アクトライド)」が登場。まずは「トヨタ・ハイエース/レジアスエース」用からの展開となるこのシステムの仕上がりを、実際に試乗して確かめた。
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後付けできて、スマホで操作できる電子制御ダンパー
いまや可変ダンパーシステムは、プレミアムなインポートカーの必須装備だ。いっぽう国産モデルでは、まだオプションでさえ用意するモデルは少ない状況で、これがとても残念だと筆者は常々思っている。あのクルマもこのクルマも、可変ダンパーがあればかなりよくなるはずなのに。
そんななか、数多くの自動車メーカーにダンパーをOEM供給するKYB(カヤバ)が、次世代のアフターマーケット用サスペンションシステム、アクトライドを、2026年の東京オートサロンで発表。そして今回、その効果を体験する試乗会が袖ケ浦フォレストレースウェイで開催された。
アクトライドの特徴をひとことで表せば、それは「後付けできる電子制御ダンパー」だ。システムとしてはIMUセンサーを内蔵したコントローラーでダンパーの減衰力を可変化させ、クルマの乗り心地やハンドリングを制御するというもの。操作は、専用のアプリをダウンロードしたスマホでできてしまうという便利さである。ちなみに、アプリの動作確認済みOSは、「iOS」なら17.0以上、「Android」なら12以上となっている。
肝心の対象車種は、現状200系のトヨタ・ハイエース/レジアスエースのみというのが少し残念。とはいえ、KYBはトヨタにハイエース用ダンパーをOEM供給しているメーカーだから、そのノウハウはばっちり。だからこそユーザーが多く、手堅いハイエースを第1弾として攻めたのは、納得できるところだ。
ちなみにシステムは、全グレードの2WD/4WDに適応。当日の試乗車には、標準ボディー・標準ルーフ・5人乗りの「ハイエース スーパーGL(ディーゼル/4WD)」が用意された。
使用状況やドライバーの好みに応じて緻密な調整が可能
さて、アクトライド最大の魅力は、その減衰力調整をスマホで完結できることだろう。ライバルを見ると、テインの「EDFC5」やクスコの「e-con2」が専用モニターに設定画面を表示するのに対し、スマホが使えるアクトライドはカラー液晶で画面も大きい。とはいえそれって、自分のスマホなわけだけれど(笑)。
加えてこのシステムで有利なのは、車体の動きを感知するセンサーを、モニターと別にできること。こうすることで、車体側の制約こそあれど、理論上はセンサーを重心の近くに設置できる。
ちなみにアクトライドのセンサーは、X軸/Y軸/Z軸(ヨー/ロール/ピッチ時)における加速度(G)と角速度の、計6つの情報から車体の動きを計測。さらにスマホのGPSから車速を取得している。そしてこれらの情報は、スマホの画面に表示することができる。
ダンパーは、伸び/縮み同時調整の1WAYタイプ。スプリングは、純正をそのまま使う。減衰力は、目安として「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」の3種類が初期設定されているが、いずれもドライバーの好みで変更が可能。さらに「カスタム1~3」として、好みの仕様を3つまでプリセットできるようになっている。スマホで各モードアイコンの歯車マークをタップし、カスタム画面に移動すれば、前後ダンパーのダンピングを0~100段階のピッチで調整し、好みのベースダンピングをつくることができる。
そのまま固定減衰の状態で走ることも可能だが、ここから「オートモード」を選択すると、プリセットしたベースダンピングを基準に、「ライド」(乗り心地)、「ハンドリング」(操縦性)、「スピードアダプト」(車速連携)を自動で可変制御するようになり、さらにそれぞれのパラメーターを任意で上下させれば、減衰力の変化の大きさを好みに設定できる。ちなみに、オートモードを使う場合は、その可変幅を残すため、ベースダンピングの硬さは0~50までに制限される。
言葉にするとこんな感じだが、この手の電子制御はパラメーターが多くて、説明だけだと頭の中が混乱しがちだ。ということで、ここからはインプレッションに移ることにしよう。
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乗り比べで感じた可変制御の効能
試乗は再現性をもってダンパー制御の違いを体感するため、まずは敷地内でパイロンスラローム(車速20km/hくらい)と、段差通過テストを行った(車速10km/hくらい)。
最初は基準車、いわゆる“つるし”のハイエースでコースを走る。乗員は筆者とKYBのエンジニア氏、編集部ホッタ君と、インストラクター氏の計4人だ。この状態での操作性は、いかにもハイエースといった、バランスのとれた穏やかなハンドリングだ。段差路では適度に入力をいなしながら、着地後にその揺れを収束させる。
次いでアクトライド装着車に乗り換え、まずは一番ハードな減衰力で走らせた。車速20km/hとはいえ、パイロンスラロームでの応答性は明らかに良好。舵角も小さく、パイロンの間を快適に曲がってくれる。意外だったのは段差の通過で、思いのほか乗り心地がよかった。初期入力こそ高いものの、突き上げもほどほどで、断然収まりがいい。さすがはOEM供給メーカーのつくるダンパーといったところで、減衰力を上限まで高めても、走行安定性に破綻がない。
対して一番ソフトな状態で走らせると、操舵応答性は鈍り、舵角も増えた。段差では当たりこそしなやかだが着地後のバウンスが収まりにくく、これは不整地向きだと感じた。つまり、この大きな可変幅をもってハイエースの走りを制御してくれるから、全域で快適な乗り心地が得られるというわけである。
こうした知識をもとに一般道を走らせると、アクトライドの真価はさらにわかりやすく発揮された。特にオートモードの自動制御は、ハイエースオーナーにとって待ち望んだ乗り味だといえるだろう。カーブの曲率に合わせて操舵するだけで、自然に減衰力が高まって、安定した姿勢でクリアしていける気持ちよさ。聞けばハンドリングに関しては、単に減衰力を上げるだけではなく、曲がりやすくなるよう瞬間的な制御も入れているのだという。
ならばとあえて素早くハンドルを切っても、減衰力もスピーディーに、かつマイルドに立ち上がってくれるから、操舵が遅れず挙動も安定している。またそこから素早く切り返しても、きちんと追従してくれたことにも感心した。荒れた路面でもレスポンスよく減衰力が上下して、入力を吸収しながらバネ下のタイヤを上手に動かしてくれている。
今回は、試乗中にエンジニア氏が細かくシステムを操作してくれたが、ブラインドタッチできないスマホの画面を運転中に操作するのは厳禁である。実用のシーンでは、「ある程度走り込んで、ベースセットを決めてのオートモード」というのが現実的だろう。
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より素早い展開に期待したい
アクトライドでハンドリングや乗り心地以上に興味深いのは、安全への配慮がしっかりなされている点だ。たとえば減衰力を弱めて快適に走らせていた状況でも、ハードブレーキすると瞬時にこれを高めてくれるという。おそらくダブルレーンチェンジのような緊急回避でも、挙動を安定させることができるのだろう。今回、それを試すプログラムがなかったのは残念だが、空荷状態と最大積載状態で1tも重量が変わるハイエースにとっては、こうした制御こそ最大のセリングポイントとなるのではないかと思う。
こうした緻密で素早い制御が可能になるのは、アクトライドがソレノイドバルブで減衰力を制御しているからだという。いっぽうステップモーター式は、既存の減衰力調整機能付き車高調整式ダンパーに装着できるメリットがあり、またサーキットを走らせるような状況でも、その応答遅れに違和感はない。このあたりは、どんな使い方をするかによって選択が変わってくるのだろう。
ちなみに、ハイエース/レジアスエース用のアクトライドの価格は26万9500円。ダンパーのクオリティーや制御の緻密さを考えると、破格とまではいかないけれどリーズナブルだと筆者は感じた。惜しいのは展開の遅さで、どうやら次に商品を展開する車種は決まっているようだけれど、もっと積極的にバリエーションを増やしてほしい。というより、国産各メーカーがもっと積極的にアクトライドのようなシステムを純正採用すればいい。冒頭で述べたとおり、タイヤがどんどん大きくなり、電動化で車重が増えるいっぽうの現代において、可変ダンパーシステムはもはやプレミアムスタンダードだ。
(文=山田弘樹/写真=向後一宏、カヤバ、webCG/編集=堀田剛資)
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山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
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