シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)
ツルンと滑らか 2026.05.02 試乗記 シトロエンのコンセプトカー「OLI(オリ)」の思想を継承する新デザイン言語を用いた2代目「C5エアクロス」が上陸。ステランティスの最新プラットフォーム「STLAミディアム」や48Vマイルドハイブリッド機構によってどう進化したのか。その走りを報告する。新デザイン言語で内外装をゼロから構築
約7年ぶりの刷新で2代目となったC5エアクロスは、近い将来、シトロエンのフラッグシップとなるであろうクルマだ。現在のそれはご承知のとおり「C5 X」だが、このクロスオーバーサルーンに次期モデルが存在しないことは、公然の秘密である。とすれば、2021年本国デビューのC5 Xが生産終了を迎えた以降は、このクルマが必然的にトップ昇格となるはずである。
そんな新型C5エアクロスはこれまで同様、最新の「プジョー3008」や「プジョー5008」と共通のプラットフォーム上に構築されたSUVである。全長やホイールベースが、3008より少し大きく、5008よりはちょっと小さい……という位置づけも従来と変わりない。
シトロエンといえば、2014年の「C4カクタス」から2023年ごろまで“エアバンプ”をチャームポイントとしたデザイン言語を使ってきたが、今は2022年のコンセプトカー、オリを源流とするものに移行している。その新デザイン言語では、基本シルエットもエアバンプ時代の曲線基調から一転してボクシーなものとなり、アクセントモチーフもエアバンプから、いわばフィン(魚などのヒレ、あるいはヒレ状の平らな物体)に置き替えられた。
シトロエンの新デザイン言語は「ベルランゴ」や「C4」といった既存機種のマイナーチェンジでも導入されているが、それをゼロから取り入れた例としては、このC5エアクロスはコンパクトカーの「C3」および「C3エアクロス(日本未導入)」に続く3つ目となる。
その新デザイン言語でゼロから構築されただけに、C5エアクロスのデザインはさすがにまとまっており、表現も安価なC3より明らかに上質で凝っている。特徴的なフィンをアームのように伸ばして車幅感を表現したテールランプは面白いし、各部にあしらわれるフィン状のカラーアクセントも、C3よりだいぶ落ち着いた使われかたとなっている。
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情緒商品としてはすでに成功
先代C5エアクロスは当時のエアバンプデザインに内装の「アドバンストコンフォートシート」とシャシーの「プログレッシブハイドローリッククッション」を加えた“シトロエン三種の神器”(?)を大きな売りとしていた。エアバンプがフィンに置き替えられた新型でも、残る2つの神器は健在である。
アドバンストコンフォートシートを取り囲むインテリアでも、C3同様の新デザイン言語が徹底している。左右いっぱいにフラットな水平基調はC3に似るが、マテリアルや装備の充実ぶりは、さすがフラッグシップ級だ。
ダッシュボードやドアトリムにはソファのような肌ざわりのクッションがあしらわれて、縦型13インチのディスプレイはセンターコンソールと一体となった「ウオーターフォールスクリーン」を形成する。さらに、コンソールの超一等地にワイヤレス充電機能付きのスマホトレイが鎮座するのは、いかにも現代っぽい。これなら(短時間の停車中にも)スマホを即座にチェックできる。このアイデアは今後一気に浸透しそうである。
また、コンソール“地下”部分のドリンクホルダーや収納にもしっとりとした手ざわりの樹脂が使われ、本国資料によると、内装の透明部品の一部にはブルゴーニュ産有機ブドウの枝を2割含有した(クルマ用としては世界初の)バイオ樹脂も使われているんだとか。さらに、ダッシュボードの左右に、先述のテールランプに似たフィン状の突起が……と思ったら、そこにはオーディオ用スピーカー(ツイーターか?)が仕込まれていた。
シトロエンの新デザイン言語をコストとサイズをたっぷり(?)費やして表現しているC5エアクロスは、このように内外装を観察しながら、いちいちコメントしたくなる……ということは、少なくとも情緒商品としてはすでに成功しているということだ。
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これまで以上に柔らかな乗り味
しかし、C5エアクロスのインテリアで最大のハイライトは、やはりアドバンストコンフォートシート(ACS)だろう。座面や背もたれの表層に分厚い低反発フォームを使うことで、独特の柔らかな肌ざわりを実現しているのがACSのキモである。
しかも、今回試乗した上級グレードの「マックスハイブリッド」では、そのACSにプレミアムテップレザー表皮、電動調整機構、ベンチレーター、後席を含むシートヒーター、電動アダプティブサイドサポート、シートバックに8個のモミ玉を仕込んだ電動マルチランバーサポート(とそれを動かすマッサージ機能)などなど、およそ考えつくすべての装備がトッピングされていた。これだけで契約の最後の一押しとなるキラーアイテムといっていい。
フランス車といえば快適な乗り心地、そのなかでもシトロエンはその権化にして象徴……というのがカーマニアのイメージであり、今のシトロエンはそこを強調する。そのために欠かせないアイテムが、いうまでもなくACSであり、フルバンプ領域に第2の油圧ダンパーを内蔵したプログレッシブハイドローリッククッション(PHC)というわけだ。通常はウレタン製バンプストッパーが担当する領域を、よりキャパの大きいダンパーが肩代わりすることで、通常ストロークの部分をよりソフトに設定できるのがPHCの利点である。
そのACSとPHCによる新型C5エアクロスの乗り心地は、これまで以上に柔らかである。とくに鋭いジョイントを乗り越えるときのツルンという滑らかさは格別だ。そのいっぽうで、以前のようなこれ見よがしの上下動は減っており、高速特別区間の120km/hでも適度に上下しつつも、基本的にはフラットである。大きめのジョイントやうねりを高速通過するときの、縮んで伸びて収束……という一連のストロークの所作が素晴らしい。
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腹八分で軽く流すのが楽しい
こうしたダイナミクス性能の進化は、PHCにまつわるノウハウの蓄積に加えて、新型3008や5008に続く新プラットフォーム、STLAミディアムの恩恵もあるだろう。STLAミディアムではボンネットキャッチも前身の「EMP2」より増えた2個になっていて、車体の局部剛性への深い配慮もうかがえる。
同じフランス車、さらに共通プラットフォームでも、しなやかながらムダな動きのない“フワピタ”がプジョーとすれば、シトロエンの理想はさしずめ“ふわとろ”といったところか。ステアリングの仕立ても対照的で、強力かつ俊敏に利かせるプジョーに対して、C5エアクロスはステアリングホイールこそ小径化されたが、その利きはスローでゆるい。ただ、スローではあるが、あくまで正確なので退屈ではない。だから山坂道などでも、プジョーのようにコーナーのクリッピングに挑むより、腹八分で軽く流しているときが、C5エアクロスの良さが際立つように思う。
そんな乗り味に個人的には満腹感が高いが、あえて注文をつけるなら、標準装着のオールシーズンタイヤである。この種のタイヤは近年のハヤリだが、少なくとも今回ときおり気になったゴロゴロとした突き上げや耳ざわりなロードノイズも、それ相応のタイヤに履き替えるだけで改善しそうな気もするからだ。
パワートレインはすっかりおなじみの1.2リッター直3ターボ+48Vマイルドハイブリッドだ。車格からすると明らかに小排気量だが、少なくとも市街地では不足は感じない。まあ、高速で100km/hからさらに追い越しをかける……みたいなシーンではさすがにアタマ打ち感が出てくるものの、もともと動力性能ではなく、アシのよさでアベレージを稼ぐ……というフランス流の運転術をマスターするのが、C5エアクロスとの正しい付き合いかただろう。実際、このパワートレインはアクセルを強引に踏み込むほどギクシャクするので、優しいアクセルワークで、EV走行とエンジン走行を滑らかに往来させるのが快適に走るコツだ。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=櫻井健一/車両協力=ステランティス ジャパン)
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テスト車のデータ
シトロエンC5エアクロス マックス ハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4655×1905×1710mm
ホイールベース:2790mm
車重:1630kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:136PS(100kW)/5500rpm
エンジン最大トルク:230N・m(23.4kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/4264rpm
モーター最大トルク:51N・m(5.2kgf・m)/750-2499rpm
タイヤ:(前)225/55R19 103V XL/(後)225/55R19 103V XL(ミシュラン・クロスクライメート2 SUV)
燃費:19.4km/リッター(WLTCモード)
価格:570万円/テスト車=584万3650円
オプション装備:メタリックペイント<ブランオケニトゥ>(6万6000円) ※以下、販売店オプション ETC1.0車載器(1万7700円)/ドライブレコーダー<V263A>(5万9950円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1282km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(5)/山岳路(3)
テスト距離:451.0km
使用燃料:35.0リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:12.9km/リッター(満タン法)/13.6km/リッター(車載燃費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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