アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)
やっぱりアルファは個性が命 2026.05.19 試乗記 2026年3月に大幅改良モデルが発表され、ほどなくメディア試乗会も開催された「アルファ・ロメオ・トナーレ」。今回はこれをあらためて借り出し、一般道から高速道路まで“普通に”走らせてみた。進化を遂げたアルファの中核SUVの仕上がりやいかに?ハイブリッドの速いヤツ
さて、アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ベローチェ(Alfa Romeo Tonale Ibrida Veloce)である。まったく興味のない人が聞いたら、それはスタバの注文と同じくらい難しい呪文だ。しかしこの名前を順に見ていくと、極めて当たり前の言葉の羅列だとわかる。
“アルファ・ロメオ”は、いわずもがな。かつてのAnonima Lombarda Fabbrica Automobili(ロンバルダ自動車製造株式会社)の経営権を、ニコラ・ロメオさんが取得してできた自動車メーカー/ブランドである。車名となる“トナーレ”は、イタリア北部、アルプス地方の峠の名にあやかったもの。兄貴分である「ステルヴィオ」が、「ジロ・デ・イタリア」でも名所となるつづら折りの峠から名前を取ったことを受けて、弟分の名前には、隣のちょっと標高の低い峠が選ばれた。
“イブリダ”はイタリア語でハイブリッドの意味。英語ではハイブリッド(Hybrid)だけど、イタリア語では“H”は発音しないのでイブリッド……と考えていくと、この呼び名もなんとなく理解できる。
そして最後の“ヴェローチェ”は、「速い」であり「早い」だ。それは「ジュリア1600GTヴェローチェ」のveloceであり、「カフェ・ベローチェ」のveloceだ。クルマでいえばビュンビュン系。カフェでいえば、エスプレッソがパッと出てくるイメージである。
つまりはアルファ・ロメオ・トナーレの、(マイルド)ハイブリッド仕様の速いヤツ。一つひとつの語意を意識しながら、適当でもなんでもイタリアンっぽく発音してみると、ちょっと楽しい。でもここからは、“トナーレ”だけで済ませよう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
力を抜いたほうがリズムが合う
新型トナーレを街なかで走らせてまず感心するのは、重厚感のある乗り味だ。その土台は「ジープ・コンパス/レネゲード」にも共用された、FCA時代の「スモールワイド4×4プラットフォーム」。Bセグメント用の基礎をCセグ向けにも拡張・転用したこのプラットフォームは、どことなく古い感じもあるのだけれど、どっしりとしていて質感が高い。
対してハンドルは、驚くほど軽い。そして、意図した以上にスパッ! と切れる。速度感応式の電動パワーステアリングは、低速域だとアシストを目いっぱい効かせている。なおかつステアリングラックのギア比が13.6:1と超クイックだから、いつもの調子でハンドルを切ると曲がりすぎてしまう。
恐らく開発陣は、ステルヴィオやセダンの「ジュリア」に与えた“キレッキレ”なハンドリングを、内燃機関で個性が出しにくくなった近代アルファ・ロメオにおける、ひとつの目玉としたかったのだろう。とはいえ、フランス系プラットフォームをベースとする「ジュニア」などはこの限りではなかったりするから、このまとまりのない感じも、ラテンぽくて面白い。
話を戻せばトナーレは、しかめっ面をしながら両手に力を入れて、生真面目に運転すればするほどテンポが合わせにくい。片手をステアリングのトップに据えて、片ヒジつきながら運転するミラノスタイルはお勧めできないが、とにかく肩の力を抜いて運転すると、リズムが合ってくる。
機敏なハンドリングにレスポンスのよいパワーユニット
パワートレインは、1.5リッター直列4気筒直噴ターボエンジン(最高出力160PS/最大トルク240N・m)に48Vの電動アシスト機構を追加したハイブリッド。モーター(最高出力20PS/最大トルク55N・m)は7段DCTに直結される仕組みだ。
ドライブモードセレクター「アルファD.N.A.システム」で「N」(ノーマル)を選んで走らせたところ、その出力特性は完全なトルク型。パワーメーターを見るとアクセルの踏み始めでブルーのバーがスッと立ち上がり、大ぶりなボディーを押し出すのがわかる。
街なかではエンジン回転が低く抑えられているけれど、ピークトルクは1500rpmで得られるから、この回転域でもほとんど事足りる。ターボチャージャーにコストのかかる可変ジオメトリータービンをおごっただけあって、低速でもブーストが素早く立ち上がり、クロスした1~3速のギアが初速を稼ぐ。そしてテンポよくギアを上げながらクルージング態勢に入る。
よって常用域での走りは、とても快適だ。ずぼらなアクセルワークでもスタートはスムーズだし、その後の加速にも勢いがある。ハンドリングは前述のとおり機敏だから、自然とメリハリよく、普段の道を走れるようになる。
特段EVモード用のボタンなどはないけれど、状況によっては信号待ちなどの停車時にエンジンがストップし、モーターのみで再発進できる。またエンジンがかかったとしても、遮音が効いているから残念感はない。国産ハイブリッドほどEVライクではないけれど、静かで高級感あふれる仕上がりになっている。
高速巡航も、同様にストレスがない。合流ではアクセルにトルクが素早く追従するし、4気筒の回り方も滑らかだ。そしてクルージング態勢になると、街なかと同じくエンジンをストップさせたりする。ステランティスがそろえるコンパクトモデルのパワーユニットを見ると、現状ではフランス由来の1.2リッター直列3気筒系が主流となっているが、トナーレのようなCセグメント以上の重いボディーには、この1.5リッター直列4気筒ターボのほうがリニアでマッチすると思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ちょっとアンバランスなところも魅力
気になったのは、アルファとしては肝心要であろうはずの、「D(ダイナミック)」モードでの走りが、少しばかりチグハグに感じられたことだ。
パワーユニットの制御に不満はない。まずはエンジンが高回転をキープし、アクセルオンに対してモーターがより長くパワーを追従させるようになる。そのサウンドも、自然吸気時代に比べれば野太く低めだが、現代のユニットとして考えれば十分に勇ましく、吹け上がりにもパンチがある。もっとサウンドエフェクトをバリバリに効かせて、遊んでしまうのもアリだと思う。
いまひとつだったのは7段DCTの変速のほうで、素早いパワーユニットの吹け上がりに対して、シフトアップが追従しきれていなかった。同じくシフトダウンでも、ワンテンポ遅れてギアが落ちる。これだけしっかりとしたシフトパドルが付いているのに、ギアリングを楽しめないのはもったいない。また、常用域で多用する、3~4速のギア比が離れているのも残念だ。
速度とともに据わりを増す電動パワーステアリングは、クイックな操舵機構を上手にコントロールさせてくれる。ダンピングを高めた足まわりは安心感が高く、バネ下の20インチタイヤをきちんと抑え込んだうえで、グリップを引き出してくれる。コーナリングは抜群に楽しいのだけれど、こうしたトランスミッションが走りのテンポを若干スポイルしていた。
3速までのショートなギアリングには当然、環境性能との兼ね合いがあるのだろう。そして、速度域が一段高いヨーロッパなら、4速以上のギアで気持ちよく走りをつないでいけるのかもしれない。ただ、オフセットを拡大したホイールで全幅が8mmワイドになり、見た目だけでなく走りまでもがアグレッシブさを増した改良型トナーレでは、よくも悪くも、その突出したハンドリングが全体のバランスをちょっと極端にしてしまっているといえそうだ。
このように、新しいトナーレは依然としてやや“マニア向け”なのは事実だけれど、ハイブリッドモデルとしての仕上がりはまとまっているし、なにより見た目がりりしく力強い。電動化で多くのクルマが同じような味つけになっていく今、この個性は貴重だ。
(文=山田弘樹/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=ステランティス ジャパン)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4520×1835×1600mm
ホイールベース:2635mm
車重:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
エンジン最高出力:160PS(117kW)/5750rpm
エンジン最大トルク:240N・m(24.5kgf・m)/1700rpm
モーター最高出力:20PS(15kW)/6000rpm
モーター最大トルク:55N・m(5.6kgf・m)/2000rpm
タイヤ:(前)235/40R20 96V XL/(後)235/40R20 96V XL(ピレリ・スコーピオン)
燃費:16.6km/リッター(WLTCモード)
価格:653万円/テスト車=674万7910円
オプション装備:メタリックカラー<モンツァグリーン>(8万8000円) ※以下、販売店オプション ETC車載器(1万6060円)/ドライブレコーダーV263A(5万9950円)/プレミアムフロアマット(5万3900円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2948km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(6)/山岳路(0)
テスト距離:242.8km
使用燃料:14.64リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:16.6km/リッター(満タン法)/15.7km/リッター(車載燃費計計測値)
◇◆こちらの記事も読まれています◆◇
◆【試乗記】アルファ・ロメオ・トナーレ イブリダ ヴェローチェ(FF/7AT)
◆【ニュース】デザインも走りも大きく進化 大幅改良を受けた「アルファ・ロメオ・トナーレ」が登場

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
ポルシェ911ターボS(4WD/8AT)【試乗記】 2026.9.29 「ポルシェ911」シリーズのなかでも最上位に位置するモデル「ターボS」。ポルシェ独自のハイブリッドと2基の電動ターボチャージャーを得た最新モデルは、どのような走りを備えているのか? 最高出力711PSのハイパフォーマンスモデルの実力に触れた。
-
ボルボEX30クロスカントリー ウルトラP5ロングレンジ エレクトリック(RWD)【試乗記】 2026.9.28 ボルボの電動コンパクトSUV「EX30クロスカントリー」に、後輪駆動の特別仕様車「ウルトラP5ロングレンジ エレクトリック」が設定された。530kmの一充電走行距離と、600万円を切る599万円の車両本体価格を実現した新エントリーモデルの走りを報告する。
-
シトロエンC3エアクロス マックス ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.9.26 同じシトロエンの「C3」がクロスオーバーSUVに生まれ変わったこともあり、新型「C3エアクロス」はサイズを拡大し、3列シートSUVへと商売を替えた。果たしてそのリアセクションには、小さいながらも2つのシートが確かに備わっている。使い勝手やいかに。
-
日産ムラーノ プラチナム(4WD/9AT)【試乗記】 2026.9.23 ドナルド・トランプ米大統領の圧力のおかげで(?)新しい「日産ムラーノ」の国内導入が決まった。日本を留守にしていた約11年の間にどう変わったのか、まさに「朋有り、遠方より来たる」の気分だ。本格導入よりもひと足早く北米仕様車の仕上がりを試した。
-
フェラーリ・アマルフィ(FR/8AT)【試乗記】 2026.9.22 フェラーリの最新ラグジュアリークーペ「アマルフィ」に試乗。2+2のシートレイアウトを持つ優雅な一台は、その姿にたがわぬ快適な乗り心地を備える一方で、スーパースポーツにも比肩する高いパフォーマンスも秘めたマシンとなっていた。
-
NEW
安いのは分かってる 軽スーパーハイトBEV「BYDラッコ」のお買い得度を検証する
2026.10.1デイリーコラムBYDの軽スーパーハイトBEV「ラッコ」がいよいよ日本の道を走り始めた。すでに各所で報じられているとおり安いのは間違いないが、装備内容等も考慮したうえでの買い得度はどんなものか。ライバル車との比較を通じて検証した。 -
NEW
マツダCX-5 L(後編)
2026.10.1あの多田哲哉の自動車放談ファン待望の新型「マツダCX-5」ではあるが、試乗した多田哲哉さんは気になるところがある様子。一体、どんなところが……? さまざまな車両を開発してきた専門家としての意見を聞いてみよう。 -
NEW
楽しいのが一番! 世界のスポーツカー特集
2026.10.1日刊!名車列伝過ごしやすい気候になり、ドライブが楽しみな10月。「スポーツの秋」ということで、クルマ好きならグッとくる、国内外のスポーツカーを日替わりで紹介します。 -
NEW
最新のルーテシアはカッコも走りも燃費も“イイ!”
2026.9.30選ぶならルノーのベストセラーコンパクト<AD>車体が小さいだけでコンパクトカーと呼べるのだろうか。少なくともルノーはそう考えておらず、サイズに見合った走りのよさとユーザビリティー、さらにスタイリングの美しさまでを高いレベルで求めている。最新の「ルーテシア」はまさにそれを体現した一台である。 -
目指したのは“さらなるスポーティーセダン” 新型「BMW 3シリーズ」の技術的ハイライトを読み解く
2026.9.30デイリーコラムBMWが「i3」に続いて「3シリーズ セダン」の新型を公開した。かたや電気自動車、かたや内燃機関搭載車とはいえ、どちらも同じ3シリーズなのだが、どうも世間の受け止めはそうではないらしい。それはともかく、「Mスポーツ プロ」も設定された新型の技術的ハイライトを解説する。 -
日産エルグランドG e-4ORCE(4WD)【試乗記】
2026.9.30試乗記日産のプレミアムミニバン「エルグランド」がフルモデルチェンジ。その動力を担う第3世代の「e-POWER」は優れたドライバビリティーとともに、懸案だった高速燃費の改善もうたう。ロングドライブで進化のほどを確かめた。





















