レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)
極上の平穏 2026.06.03 試乗記 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。レクサスはセダンを切り捨てない
1989年、北米市場を皮切りに展開を開始したレクサスブランド。そのスタートをLSとともに彩った車種といえばESだ。発表ベースでいえばレクサスの歴史のなかで最も古いモデルということもできるだろう。
以来37年近い時がたち、ESは7代にわたって販売され続けている。というか、ブランド的には長らく台数的に大黒柱であり続けてきたわけだが、現在はその役割を「RX」や「NX」が担っているのはお察しのとおりだ。自家用車の車型はもはやSUVが標準となり、各社が渾身(こんしん)のモデルを投入、市場は百花繚乱(りょうらん)となっている。他方、セダンは大苦戦……というのはなにもレクサスに限ったことではない。
それでもESは未来へとバトンをつないだ。確かに台数的な伸長は望みづらい。でも、世界のエスタブリッシュメントに信任されているレクサスとしては、セダンを捨てる選択はありえない。そしてESは全数的にみれば、今でもレクサスの屋台骨の一本となる。そこに個人的な見解を挟めば、同じ移動体にしてもSUVではなくセダンにしか成し得ない質感というものも依然としてあるわけだ。クルマの開発に携わる方々がよく口にする「すべての基本はセダンにある」という意思は、クルマ好きであれば体感を通して伝わるものがあると思う。
かくして登場した8代目ES。その最大のトピックはすべての仕向け地で完全電動化を果たしたことだろう。そしてパワートレイン的にはハイブリッド車(HEV)と電気自動車(BEV)が併売されることになる。
その種別をグレード名で記せば、HEVが「300h」と「350h」、BEVが「350e」と「500e」とおのおの2つずつだ。そのうち300hは一部の海外仕向け用となり、日本市場で展開されるのは350hと350e、500eとなる。さらに日本市場向けの特筆点として、350hはFFと4WD、2つの駆動方式が選べるようになった。ちなみにBEVについては350eが前軸1モーターのFWD、500eが前後軸2モーターの4WDということになる。
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ボディーサイズが大幅に拡大
プラットフォームは先代ESでも採用されているDセグメント主体のGA-Kをベースとしているが、BEVとHEVとの共用を実現すべく要所に手が加えられた。この数年でパワートレインの趨勢(すうせい)に伴う開発のトレンドが目まぐるしく変化。加えてモデルラインナップが著しく多様化したことにより、マルチパスウェイを掲げるトヨタでもプラットフォーム戦略の修正を繰り返している。ましてや、「グランドハイランダー」や「センチュリー(SUV)」など、当初の想定を大きく上回る守備範囲が求められているのも確かだ。
こういったプラットフォーム側の事情もさておき、新しいESはさまざまな地域でセダンの総代を担うという意気込みもあるのだろう、その車格は前型に対して全長で165mm、全幅で55mm、ホイールベースで80mm伸ばされている。長さ的には現行LSよりも少し短い程度だが、床面高に伴って全高も1550mm前後が予想されるため、路上でのボリューム感からいえばLSを超えるところにくるのではないかと思う。
が、見た目にはそういう車格的な威圧感は感じられない。電動化に伴って冷却性能の意匠的負荷が軽減されるぶん、シグネチャーであるスピンドルをクルマ全体で表現するRXからの手法は一歩前進したものとなった。ちなみにHEVとBEVとのデザイン的差異はフロントフェイスの先端部にひと筋の導風口があるか否かで識別できる。
内装はダッシュボードに水平線がしっかりと通されたT字型のレイアウトだ。クラスターが廃された液晶メーターの周縁には質感を演出しながら映り込みを抑える起毛材が貼り込まれるなど細かな仕立ても行き届いている。アンビエントライトの演出も昨今のクルマでは珍しくはないが、その光映が最も際立つバンブー調のフェイシアに照らされるイルミネーションにも、きちんと節度や品位が感じられるのがレクサスらしいところかもしれない。
後席環境は間違いなくESの静かなセリングポイントとなるだろう。GA-Kの恩恵あらたかで、足元空間のみならず入念にチューニングしたという頭上空間も、同門のLSを含めたFR車台のライバルたちに比肩、もしくはそれ以上の広々感がある。試乗車にはリアコンフォートを強く意識したパッケージもあったが、背もたれをスライドさせながらオットマンを引き出してのくつろぎ感は、正味なところ現行LSの「エグゼクティブ」と大差はない。しかし乗せられるクルマとしての選択肢は同門だけでもミニバンにSUVにとゴマンとあるわけで、ESには「だからこそ選ぶ」と思わせる独自性が求められる。それすなわち、セダンの存在意義ということになるだろう。
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際立つ快適性
新たに設定されたBEVは床面に74.7kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載。航続可能距離は1モーターの350eでは650km、500eでは600kmと発表されているが、日本のWLTCモード値ではもう少し伸びるだろうということだった。ちなみに日本仕様は350eと500e、どちらも導入される予定だという。
試乗ルートは舗装のサーフェスが目まぐるしく変わる高速道路や、補修が間に合わないほどにポットホールが散見される市街路など、いかにもアメリカらしい変化に富むものだった。むしろ地上高が低く音源に近いセダンにとっては不向きではないかというコース繰りだが、静粛性が美点となるBEV版のESでは、その環境がむしろプラスに働いたかもしれない。それほどに快適性が特徴として際立って感じられた。
乗り心地的には歩道やマンホールといった直角的な段差を越える際に少し強めのリアクションが表れる癖もあるようにうかがえたが、総じて路面の凹凸のいなしは丸く、大きなうねりのような路面変化でのバネ下の追従性や上屋の収束もきれいにまとめられている。リアサスはBEV用の床面に合わせたマルチリンク式を新設しているが、ストロークやジオメトリー由来の過不足を感じることはなかった。日本仕様ではグレードやオプションに応じて今回の試乗車には用意のなかった電子制御可変ダンパーや後輪操舵なども組み合わせられるが、素の状態でもスタビリティーとハンドリングのバランスは十分納得できるレベルにある。
そこに「だからこそ選ぶ」があるのかといえば、分かりにくいかもなぁと思うところもなくはない。動力性能は瞬発力自慢のBEVでありながら、むしろそれを控えめに丸めて供している。ちなみに0-100km/h加速は350eで8.2秒、500eで5.5秒だ。まったく事足りているものの、数字だけをみれば物足りなさを感じる向きもあるだろう。
第6世代のハイブリッドを搭載
そのぶん、ESのパワートレインは見事に洗練されていて、350eでも500eでもアクセルひとつで滑らかに思い描いたとおりの速度にクルマをもっていける。BEVの特性的にも速くすることは難しくない。現に同門の「bZ4Xツーリング」は500eより明らかに速い数値をマークしてもいる。言い換えれば、速さを価値軸とすることに大意はない。それよりも、いかに極上の平穏を届けられるかがESに課せられたミッションというわけだ。
この卓越した見識をより強く実感させてくれるのがHEV版となる350hだ。トヨタでは第6世代と呼ばれる最新のシステムを搭載。モーターや変速機、インバーターなどを一体構造として騒音や振動を低減したほか、リチウムイオン電池の採用により駆動モーターの稼働域を広げるなど、動的質感の向上が著しい。ちなみに日本市場で第6世代システムを採用するのはHEVとしては初、プラグインハイブリッド車まで含めると「RAV4」に次いで2例目になるという。
350hの走りは低重心による安定感がベースにあるBEVに対して軽快さが際立っている。モーターは稼働域だけでなく応答レスポンスも高められており、加速時のアシスト感は時にエンジンの力感をも上回る勢いだ。搭載エンジンはA25A-FXSと型式に変更はないが、エンジンブロックやスカートの形状変更を受け、音・振動性能が高められている。これによって高速燃焼ならではのギャンギャンと耳障りだった回転音も若干抑えられたものとなった。これもまた、極上の平穏づくりに少なからず貢献している。加えて、新型ESではHEVも「E-Four」、すなわちモーター式の四駆が選べるようになったのも東北以北の方々には朗報となるだろう。
新しいESに乗ると、物理にあらがうことなく溶け込むように自然に走り曲がり止まることの心地よさをあらためて思い知る。と、この瞬間がやはりセダンの本懐なのだろう。ちなみに日本市場への正式導入はこの6月の予定だ。
(文=渡辺敏史/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
レクサスES350h
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5140×1920×1555mm
ホイールベース:2950mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:--PS(--kW)/--rpm
エンジン最大トルク:--N・m(--kgf・m)/--rpm
モーター最高出力:--PS(--kW)
モーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:247PS(182kW)
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ブリヂストン・トランザEL450)
燃費:--km/リッター
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター
レクサスES350e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5140×1920×1560mm
ホイールベース:2950mm
車重:--kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:224PS(165kW)
最大トルク:--N・m(--f・m)
タイヤ:(前)235/55R19 101V XL/(後)235/55R19 101V XL(ダンロップeスポーツマックス)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
レクサスES500e
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5140×1920×1560mm
ホイールベース:2950mm
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:--PS(--kW)
フロントモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
リアモーター最高出力:--PS(--kW)
リアモーター最大トルク:--N・m(--kgf・m)
システム最高出力:342PS(252kW)
タイヤ:(前)235/45R21 104V XL/(後)235/45R21 104V XL(ミシュラン・プライマシー5エナジー)
一充電走行距離:--km
交流電力量消費率:--Wh/km
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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