日産スカイライン250GT Type P(FR/7AT)【ブリーフテスト】
日産スカイライン250GT Type P(FR/7AT) 2010.03.08 試乗記 ……400万5750円総合評価……★★★★
「日産スカイライン」がマイナーチェンジ。表情がよりシャープになった新型の走りを、新たに7段ATを得た2.5リッターモデルで試した。
新たな見た目が勝負の要
新型「フーガ」を「スカイライン」に似せてきたと思ったら、今度はその「スカイライン」が「フーガ」顔になってしまった。
日産スカイラインが、マイナーチェンジでフロントまわりを変更。海外で同社が展開している「インフィニティ」のブランド戦略が日本市場でも成功するかどうかは未知数だから、パッと見では大から小まで見分けがつかず大量に出回っているように感じられるアウディの戦法を見習った、ということだろう。
いずれにせよ、いまは華流デザインが世界の流行であるから、このクネクネと曲折したボディラインは当分続くのだろう。外から見ると大きく立派に見える反面、中に入ると小さく感じられ取りまわししやすいのが、このデザインの趣旨だろうか。シンプルにしてクリーンな“イタリア流”フォルムがこれまでの流行であったが、最近はラインを途中でうねらせたり、一筆書きに繋げず途中から唐突に合流させてたりする。荒々しさを強調したディテールやランプ類も加勢して、その顔は遠くからでもわかる威嚇型が主流になっている。
これらの世界的な流行は世界中の自動車メーカーが、中国市場を意識している証拠。自然、人工物を問わず、中国でよく目にするデザインを研究した結果だ。確かに中国国内で目にすると、実にしっくりと目に馴染む。ある意味、子供じみた処理と受け取られるものもあるが、たしかに「強さ」は実感される。さらに販売に結びつくとなれば、肯定することにやぶさかではない。
しかしこのデザイン手法も飽きられてきたのか、最近はもう少し洗練されたものになりつつある。フーガやスカイラインは、その流行の末期、次の流れへと模索する途上にあると言える。エンジンやトランスミッション、シャシーなどは、先代のものがリファインされた程度で、基本的な部分は踏襲されているが、すでに高い評価を受けている。よって今回のマイナーチェンジが成功するかどうかはひとえに、この新しいスタイリングが日本市場で受け入れられるか否かにかかっている。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
現行スカイラインセダンは、2006年11月20日に発売された12代目。当初のエンジンラインナップはハイレスポンスをうたうV6ユニット「VQ35HR/VQ25HR」の2種が用意され、トランスミッションはいずれも5段AT。
2008年12月のマイナーチェンジで、従来の3.5リッターエンジンがバルブ作動角・リフト量連続可変システム(VVEL)を備えた3.7リッター「VQ37VHR」エンジンに変更され、トランスミッションはマニュアルモード付きの7段ATが採用された。
その後、2010年1月の小変更で、2.5リッターモデルもトランスミッションが7段AT化。フロントグリルやバンパー、ヘッドランプ、アルミホイールなどのデザインも改められ、より精悍な外観とされた。
(グレード概要)
テスト車の「250GT」はエントリーグレードに位置づけられる2.5リッターモデルで、「Type P」は電動のステアリングホイールのチルト&テレスコピック調節機構やシートの細かな電動調節機構など、装備が充実した豪華仕様。シート地も本革となっている。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
ステアリングホイールは、通常のテレスコピック/チルト調整機構と違いメーターまわりが丸ごと動く。メーターの視認性を確保するうえでは便利だが、その際にできる隙間の処理もデザインのうち。一考を要す。計器そのものは見やすく、凹凸ある立体的なデザインは高性能イメージに合致している。センター部分もすっきりしており操作性も良好、ナビの画面も見やすい。装備品も排気量に左右されず、2.5リッターモデルでも事実上3.7リッターモデルと同じ装備となるのがよい。
(前席)……★★★★
ボンネットの稜線が見える、前方の眺めはいい。Aピラーは太めでドアミラーの位置はやや高めながら、「フーガ」ほど邪魔な感じはしない。シートはサイズ、形状、座り心地ともによく、調整機構も完備される。表皮の材質も滑りにくいものが使われている。座面後傾斜角はちゃんと確保されているが、どちらかと言うと浅く腰掛けて立ち気味に座る、アメリカンスタイルのようだ。もちろん調整次第でいかようにも座れる。
(後席)……★★★
ミニバンやSUVなどを経験してしまうとセダンの後席は手ぜまに思われるが、少し暗めでしっかり囲まれた感覚こそセダンの持ち味。後席としての落ち着きや安心感が得られる。その意味で正統派の後席だ。シートバックは高め。無用に寝ていない形状は好ましいが、クッションはもう少ししっとりと沈んでホールド感のある方が好ましい。天井とのせめぎ合いで座面が相対的に下がり、膝を立てて座らされるから腿の部分が浮く。座面は硬めで角度も浅め。腰が前にずれやすい。FRゆえセンタートンネルも高い。
(荷室)……★★★
このクラスのトランクとしては並の容量。リッドの開口部は中央でせまいが、デザイン上の処理だから仕方ない。フロアは低く、床面積は十分に広い。アームレストの部分が開いて細い長尺物なども室内に通して積める。リッドに備わる内部からのオープナーが、アメリカ仕様であることを示している。リッド支持部にはダンパーも備わる。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
VQ型エンジンは3.7リッターに比べボアもストロークも小さく、シリンダー壁は厚くコンロッドも長いから、回り方としてはより静粛だ。7段ATは、微妙に速められた下3段のギアで引っ張るから、特に発進加速で元気がいい印象。シフトレバーは、右側に引き寄せることでマニュアルモードに移行するタイプ。ステアリングホイールとの距離も短くなるのはよい。マグネシウムのパドルシフトは、スポーティグレードの「Type S」にしか付かない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
フラットでダンピングよくシットリと落ちついた乗り心地。シャシーの剛性感あって欧州車にひけをとらない。ただしハンドリングは、フリクション低減に腐心してか、動きの中央部分のヒステリシスが大きく、定常姿勢に戻るときの収まりがあいまいでスッキリしていないため、自分の定位置を自覚できない感じがする。ここを詰めないと欧州車を抜けない。よって構成パーツはいいけれどもチューニングにはいまだ余地を残すといえる。とはいえ、現状でも日本車中の白眉である。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2010年2月12日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2010年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)225/55R17(後)同じ(いずれも、TOYOプロクセス R30)
オプション装備:BOSEサウンドシステム(12万750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:--
使用燃料:--
参考燃費:--

笹目 二朗
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