ホンダ・無限シビック タイプR ユーロ(FF/6MT)【試乗記】
選べる幸せ 2010.03.01 試乗記 ホンダ・無限シビック タイプR ユーロ(FF/6MT)……522万1015円
台数限定で日本に逆輸入されたハイパフォーマー「シビック タイプR ユーロ」。ホンダのスペシャルチューナー“無限”が磨くとどうなる? その実力をワインディングで試した。
キテる見た目にゃワケがある
無限仕様の「タイプR」を目の前にしてまず印象的なのは、圧倒的なボリューム感である。
ちょっとデカ過ぎないか!? とも思う。ノーマルでは「超個性的」とだけ言われていたボディが、無限のフルエアロキットによって「実はとってもデカかった」ということがバレてしまった感じ。(古い例えでなんですが)「深キョンの足はデカかった!」ときの衝撃にも似ている気がする。特にそれを助長しているのが、リアウイングだろう。一連の無限テイストと実際の空力テストによって決められた形状だとは思うが、少し気恥ずかしくもある。
……などと、いきなり文句を付けてるようだが、それは全体的なフォルムがイケてると思えばこそ。明らかにダウンフォースを盛ってくれそうなフロントスポイラーや、そのなかに仕込まれたブレーキ冷却用のエアインテーク、FRP製ボンネットのエアスクープなどを見ていると、さすがワークスならではクオリティと惚れ惚れ。
SUPER GTのマシンのようにエッジの効いたフロントフェンダーは、ホイールハウスには直結していないから、タイヤの回転運動が巻き起こす乱気流を排出することはできないだろうけど、ボンネットと同様に、エンジンからの熱を排出するためのエアスクープは付いている。
しっかり働く足まわり
いっぽう、走り出してます感じられるのは、見た目どおりの(?)少々ハードな乗り心地。足元を「ADVAN NEOVA AD08」でキメていることからも、このクルマがサーキットを完全に視野に入れていることは、わかる。ただ、単にそれだけのクルマではないとも感じた。
突き上げはあったとしても、ノーマルのタイプRよりこちらの足まわりのほうが快適だ。ノーマルで起伏のある路面を走ると、速度に関係なくノーズのピッチングがなかなか収まらない。無限仕様より柔らかいのは事実なのだが、投げ出されるように上下するからかなり不快なのである。
無限ダンパーは、フロントの伸び側初期減衰力領域(ハイスピード領域という)を素早く立ち上げ、そんなピッチングを抑えてくれる。それでも伸び側の最終的な領域(ロースピード)をスローにしてあるので、しなやかにサスペンションが伸びてくれるのだ。ただしスポーツ走行を見越して、縮み側の初期領域(ハイスピード)を早めに減衰力を立ち上げふんばり感を出しているために、突き上げが少々出る。そう感じた。
個人的には、この初期の縮み(ハイスピード)をもう少し緩やかに立ち上げた「ストリート用ダンパー」を別に売り出しても良いのでは? と思ったほど。現状でも、タイヤを「AD08」より柔らかいコンパウンドのものに換えただけで、調和がとれるのかもしれない。
実際、スプリングレートをチェックしてみれば、ノーマルに比べてフロントが115%、リアも140%しか上がっていない。しっかりダンパーに仕事をさせてるタイプのサスペンションと見た。
用途にあわせてご使用ください
もうひとつ見事なのは、ブレーキパッド「Type competition」だ。Sタイヤ装着にも対応する耐フェード性を持つにもかかわらず、街中でのペダルタッチが自然。唐突に効くようなことはない。無限といえば先頃発売になった4ポッドのモノブロックキャリパー&ローターキットもマニア垂涎の一品だが、コストを考えれば、パッドだけでもバッチリ! である。
セダンの「タイプR」に比べて24ps低い201psのエンジンは、スタビリティが上がったボディに対しては完全にアンダーパワーだった。エアクリーナーボックスからエキゾーストマニフォールド、マフラーまでを専用としたことで排気レスポンスは高まるが、パワーがセダン版(225ps)並みに上がるというわけではない。音量も時代を考慮して控えめだ。
そんな動力を受け止める“強化”クラッチの踏力も、名前を意識させるほどの重さはなく、強いて気になる点を挙げるなら、機械式のLSDが街中において走りのリズムをギクシャクさせたことくらい。それとて、作動制限が高すぎて路地を曲がれない、なんてこともない。
このクルマの本当の実力を測るインプレは、ステージをクローズドコースに移してからにしたいと思うが、そんなサーキット仕様の無限パーツを“てんこもり”状態にしていながらもストリートに充分対応していることは、大きく評価できる。
2010台限定の「タイプR ユーロ」を手に入れられたラッキーなオーナーは、無限パーツを自分の走るステージに合わせて選択できる、幸せなユーザーでもあるわけだ。
(文=山田弘樹/写真=峰昌宏)
装着パーツ
【試乗車「無限シビック タイプR ユーロ」の装着パーツ】
フロントエアロバンパー=11万3400円/エアインテークガーニッシュ=2万3100円/リアエアロバンパー=10万2900円/フロントスポーツグリル=3万6750円/フロントエアロフェンダー=8万4000円/エアロボンネット=12万3900円/リアウィング=11万3400円/ハイパフォーマンスエアクリーナー&ボックス=9万2400円/フィルターエレメント=1万500円/スポーツエキゾーストシステム=19万4250円/エキゾーストマニホールド=26万400円/ハイパフォーマンスエンジンオイルREV-R=1万290円/ハイパフォーマンスオイルエレメント=2730円/オイルフィラーキャップ=7350円/イグニッションコイルカバー=3万3600円/LSD=14万4900円/ブレーキパッドtype competition(フロント左右)=2万6250円/ブレーキパッドtype competition(リア左右)=2万1000円/ミクロメッシュブレーキライン=3万6750円/ハイパフォーマンスブレーキフルード=3150円/リザーバータンクカバー=1260円/スポーツサスペンション=15万7500円/アルミホイール「GP」(4本)=29万4000円/i-TCMS(タイヤモニタリングシステム)=7万6650円/ホイールセンサー=1万500円/ヘプタゴンナットセット=1万500円/ホイールナット&ロックセット(ブラック)=9240円/アシストメーター=12万6000円/クイックシフター=2万1000円/無限メタルロゴエンブレム(ホワイト)=7140円/カーボンナンバープレートガーニッシュ=1万290円/ナンバープレートボルト=2415円

山田 弘樹
ワンメイクレースやスーパー耐久に参戦経験をもつ、実践派のモータージャーナリスト。動力性能や運動性能、およびそれに関連するメカニズムの批評を得意とする。愛車は1995年式「ポルシェ911カレラ」と1986年式の「トヨタ・スプリンター トレノ」(AE86)。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。





























