メルセデス・ベンツE63AMG(FR/7AT)【海外試乗記】
本気で過激 2009.08.24 試乗記 メルセデス・ベンツE63AMG(FR/7AT)新型「Eクラス」に、AMGの手になるハイパフォーマンスモデルが追加された。激しさを増す最新AMGモデルの走りを、ドイツで試す。
予想を超えた変貌ぶり
メルセデス傘下になって以降のAMGには、もはやかつての過激なチューニングカーというイメージは無い。圧倒的な高性能には変わりないが、その味わわせ方はルックスも含めて洗練されたものへと姿を変えてきていた。
しかし、流れは変わり始めたようだ。発端は、現在の主力ユニットである100%自社開発のV型8気筒6.2リッターDOHCユニットの登場。限定車「ブラックシリーズ」の投入、そして「C63AMG」「SL63AMG」といった最新作では、ここまでやるかというくらいの過激路線へと完全にシフトしたように見受けられる。
新型E63AMGは、そんな最近のAMGの流れに乗って登場した。その変貌ぶりは予想を超えた驚きをもたらすものだ。
外観はさほど刺激的なものではない。前後バンパー、ライトまわり、エグゾースト等々お約束の部位は、より精悍な仕立てとされているが、フード先端に立ったままのスリーポインテッドスターに象徴されているように、Eクラスに相応しいフォーマル感はキープされている。
しかしよくよく目を凝らして見れば、ある違いに気付くことになるはずだ。フロントフェンダーが微妙に膨らんでいるのである。ここにピンと来た人は、やはりこのクルマは只者ではないとにわかに理解することだろう。
実際、その中身は相当攻めている。エンジンはお馴染みV型8気筒6.2リッターDOHC。スペックはSL63AMGと同じ最高出力525ps、最大トルク64.2kgmとされ、それでいて燃費は約12%向上しているというが、それだけでは驚くほどではない。しかし、そこにギアボックスまでSL63AMGのAMGスピードシフトMCTを流用しているとなれば、目を見開かざるを得ないというものだ。
足まわりを大幅に変更
当然、シャシーにも大きく手が入れられている。フェンダーの膨らみに表れているように、フロントサスペンションは専用品とされトレッドは56mm拡大。ステアリングのギア比もEクラスより22%速められており、同時にバリアブルレシオは廃された。ブレーキにはコンポジットディスクが標準採用されている。
そしてなにより注目なのが、サスペンションが先代が4輪AIRマティックだったのに対して、新型では4輪に減衰力可変式ダンパーを使うのは同様ながら、フロントに通常のコイル、リアにエアスプリングという組み合わせを採用していることだ。AMGの担当者にその理由を聞くと、サーキットなどの高負荷域での性能と日常の快適性を両立させるためだという。ESPもスポーツ走行に配慮した3モードタイプが用意された。
このスペックを見ての通り、走りの感触はまさに激変している。低速域から図太いトルクを発生する一方、6.2リッターという排気量では異例の7200rpmもの高回転を許容するエンジンは、7G-トロニックをベースにトルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを使うことで駆動伝達をよりダイレクトにしたAMGスピードシフトMCTとの組み合わせで、より一層キレ味を増している。特にスポーツやスポーツプラス、そしてシフトパドルで変速できるマニュアルモードでは、多少の変速ショックなど気にしない鋭い変速ぶりで頬を緩ませてくれる。それでいてコンフォートモードであれば、至極快適な走りが可能なのだから嬉しくなる。
とにかくよく曲がる
フットワークもEクラスのAMGに対するイメージを覆す。簡単に言えば、とにかくよく曲がるのだ。ターンインの反応は正確そのもので、切り込んだ瞬間からヨーが立ち上がり、そのまま絶妙な旋回姿勢を保ったまま素早くコーナーを抜けていく。切り返しの反応も軽快とすら言っていいほどだ。
ただしそうした走りの代償か、メルセデスらしい直進時の圧倒的な舵の座りの良さが、ややスポイルされているのは残念なところ。乗り心地も、高速域に至るまでなかなかしっとり落ち着いてはこない。これまでEクラスのAMGを乗り継いできたファンにとっては、これは容易には馴染めないのではと危惧してしまう、過激な味付けなのである。
しかしAMGも、それも十分承知の上だろう。なにしろオプションには、さらにハードなサスペンションや機械式LSDなどをセットにしたパフォーマンスパッケージまで用意されているのだから。この方向性、本気だ。
マーケットでの受け取られ方が楽しみな新型E63AMGは、すでに日本でもオーダー受け付け中。価格は1495.0万円である。
(文=島下泰久/写真=メルセデス・ベンツ日本)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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