ボルボXC60 T6 SE AWD(4WD/6AT)【試乗速報】
ペットのラクダ 2009.08.04 試乗記 ボルボXC60 T6 SE AWD(4WD/6AT)……687.5万円
日本上陸を果たしたボルボ初のクロスオーバー「XC60」。試乗をしてみると、ライバルとなるドイツ勢のミディアムサイズSUVとは異なる魅力を備えていた。
ドイツ勢の対立候補
日本の道でもギリギリ持て余さないサイズだし、市街地での乗り心地はいいし、高速ではパワフルだし……。輸入車界の新たな人気者になる可能性がある(というか、なりつつある)のが、ミディアムサイズのSUVだ。で、このセグメントがホントに盛り上がるのかどうかの鍵を握っているのが、2009年8月より日本への導入が始まる「ボルボXC60」だと思う。
「ミディアムサイズのSUVに注目!」なんていっても、このセグメントは実質的にドイツ車による“一党支配”になっているわけです。輸入車の中からミディアムサイズのSUVを選ぼうと思ったら、それはドイツ車オーナーになるということと、ほぼイコールだ。
まあ、「VWティグアン」も「アウディQ5」も「BMW X3」も「メルセデス・ベンツGLK」も、それぞれみんなよくできているから、ドイツ連立与党の一党支配でも問題ないっちゃあ問題ない。でも、「われわれはドイツ車とは違う魅力を提供します」と公約する対立候補が現れれば、注目度がグッと上がって活気を帯びるはず。
ボルボXC60は、まずデザインでドイツ勢との違いを強烈にアピールする。このクラスのドイツ勢の外観はわりとシンプルで男っぽく、その道具っぽさが魅力でもあるけれど、このクルマははっきりと違う路線を狙っている。ベタな書き方をすると、広尾や白金の奥様が乗っても似合いそうな、キラキラしたカッコなのだ。
自分のセンスがよくなった!?
ドアを開けて乗り込むと、多くの人はインテリアのデザインにも感心するはず。シンプルで清潔な意匠や明るくてやわらかい色づかいは、明らかにドイツ車のクールさとは異なるテイスト。また、使い勝手のよさを上手に表現してやさしい印象を与えるから、頭の中に“北欧デザイン”という文字が躍る。
ただしXC60のインテリアは、そうしたボルボらしさ、北欧デザインっぽさだけでは語れない。ドライバー側を向くようになったセンタースタックや「X(クロス)」をモチーフにしたシートなどが、ちょっとしたスペシャリティ感も味わわせてくれるのだ。なお今後登場するボルボは、内外装ともにXC60のような洒落た路線になるという。
あるいは、「素朴で木訥だったボルボが懐かしい」と思われるかたもいるかもしれない。けれども個人的には、この新しい北欧スタイルにうっとり。モダンで洗練された雰囲気に囲まれていると、自分が知的でセンスのいい人間になったと錯覚してしまう。試乗車のセンタースタックはウッドだったけれど、アルミパネルのほうが未来を向いている感じがして好き。
そして外観やインテリアだけでなく、走らせてみても「ボルボXC60」は、これまでのボルボのイメージを覆すモデルだった。いままでのボルボといえば、たくさん荷物を積んで長距離を心穏やかに走るのに適したクルマというイメージだった。動物にたとえればラクダだ。でもXC60のことは、もうラクダなんて呼べない。
道具からペットへ
ボルボXC60の基本プラットフォームは同社の「S80」や「V70」と共通のはずだけれど、走らせてみるとその事実がにわかには信じられないほど印象が違う。体がとろけそうになるほどソフトで快適な乗り心地だったS80やV70に対して、XC60ははっきりと軽快なのだ。
すれ違いに気を遣うような狭い道からハイスピードコーナーの連続まで、さまざまな山道を走ったけれど、XC60はどんな場面も軽いロールとともに駆け抜ける。ステアリングの効きは正確で、切れば切ったぶんだけノーズが向きを変える。ステアリングホイールの手応えも、しっとり&しっかりしたもので好ましい。
さらに、3リッターの直列6気筒ターボユニットもレスポンスに優れたエンジンで、踏めば踏んだ分だけリニアにトルクが盛り上がる。意外に(失礼!)、回すといい音がする。ブレーキの効きもカチッとしているから、「止まる」「曲がる」「走る」の3要素に、“軽快な走り”という統一感が感じられる。
こと日本市場に限れば、XC60は“のほほん系”のセッティングのほうが、ゲルマンのライバルたちと差別化が図れるような気もする。とはいえ、このクルマに気持ちのいい統一感があることは間違いない。ボルボXC60は、人と荷物を運んでくれる道具としてのラクダではなく、共に旅を楽しむペットのようなラクダだった。
安全へのこだわりは変わらず
最新のボルボは、ルックスだけでなく中身も昔とはかなり変わっているのだ。ただし、自動車の安全について真摯な態度で臨むメーカーである点は変わっていなかった。ボルボXC60には、「シティ・セーフティ」という安全デバイスが標準で装備されている。
これはルームミラーの前方にあるレーザーセンサーで、停まっている車両や同じ方向に進む車両をモニターし、追突の危険を察知するとブレーキの反応を速くしたり自動的にブレーキをかけるというもの。ボルボの調査によれば衝突事故件数のうち75%が30km/hまでで発生しており、事故発生件数の半数では衝突の瞬間までドライバーはブレーキを踏んでいないという。
「シティ・セーフティ」によって追突事故を避けることや、あるいは速度低減によって追突した際のダメージの減少が期待できる。なるほど、と思ったのは安価なレーザーセンサーを用いることで全車標準装備をはたしたという点だ。議論はあるだろうけれど、ひとつの見識だ。
華のある外観、センスのいいインテリア、さらっと軽い走行感覚、そして安全へのこだわり。もしかすると昔のボルボを知っている人ほど“食わず嫌い”をする可能性があるけれど、「ボルボXC60」は、十分にドイツ勢のオルタナティブになり得る存在だ。
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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