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【スペック】全長×全幅×全高=4590×1695×1590mm/ホイールベース=2750mm/車重=1350kg/駆動方式=FF/1.8リッター直4DOHC16バルブ(144ps/6400rpm、17.9kgm/4400rpm)/価格=184万円(テスト車=232万900円)

トヨタ・ウィッシュ1.8X(FF/CVT)【試乗記】

結果がすべて 2009.06.25 試乗記 佐野 弘宗 トヨタ・ウィッシュ1.8X(FF/5AT)
……232万900円

多人数乗用車のセグメントリーダーとして、確固たる地位を築き上げた「トヨタ・ウィッシュ」。2009年4月にデビューした2代目の実力は? ベーシックグレード「1.8X」を試した。
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変わらない理由

ウィッシュのフルモデルチェンジは6年ぶりだそうである。最近は日本車のモデルライフが伸びたとはいっても、平均は5年くらいだから、初代ウィッシュはかなりの長命モデルだった。で、そんな6年という歳月を経て登場した新型ウィッシュだが、正直なところ、ブランニューならではの新鮮味はあまりない。

もちろん内外装のデザインはすべて新しい。しかし、5ナンバーが基本のローハイトミニバンという基本形はもちろん、1590mm(FF)という全高も、2750mmのホイールベースも、最近では少数派となったスイング式のリアドアも、そして基本的なエンジン排気量も、すべて先代と変わりない。さらに、クルマの土台となるいわゆるプラットフォームもまた、6年前に発売された初代の改良版である。

シート設計でもセカンドとサードは初代からの流用で、ミニバン開発の必須項目であるシートアレンジも、初代と寸分のちがいもない。パッケージ関連における新しさといえば、Aピラーの前出しと薄型シートバックの新設計フロントシートくらい。これで後席レッグルームが30mm拡大して、心理的開放感もわずかに進化したともいえるが、レッグ以外の“なんとかルーム”という空間数値はまったく拡大していない。

じつは先日、新型ウィッシュの開発エンジニアの皆さんにインタビューする機会があったのだが、ユーザーや販売現場から出てきた初代の不満点は「ホイールサイズが小さめで見た目が貧弱」という程度のものだったという。室内空間も、スタイルも、走行性能も、シートアレンジも、ドア形式も、質感も、価格も、すべて不満なし……どころか積極的に好評。販売台数もモデル末期まで安定して上位キープ。初代が長寿となったのも特別な理由があるわけではなく、「無理してモデルチェンジする必要がなかったから……」という結果論っぽい。

1.8リッターと2リッターの両方に「バルブマチック」が採用された。バルブマチックは、走行状況に応じて、スロットルの開度と吸気バルブのリフト量を協調させつつ、流入する空気量を連続的にコントロールする技術。これにより燃焼効率が高まり、燃費向上に貢献する。1.8Xの10・15モード燃費は、16.0km/リッター。
1.8リッターと2リッターの両方に「バルブマチック」が採用された。バルブマチックは、走行状況に応じて、スロットルの開度と吸気バルブのリフト量を協調させつつ、流入する空気量を連続的にコントロールする技術。これにより燃焼効率が高まり、燃費向上に貢献する。1.8Xの10・15モード燃費は、16.0km/リッター。
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ウィッシュは、5ナンバーボディの「1.8X、2.0G」、エアロバンパー装着で全幅が1720mmとなる「1.8S」、ワイドトレッド化により全幅が1745mmとなる「2.0Z」という具合に、車幅違いのバリエーションが3タイプある。
ウィッシュは、5ナンバーボディの「1.8X、2.0G」、エアロバンパー装着で全幅が1720mmとなる「1.8S」、ワイドトレッド化により全幅が1745mmとなる「2.0Z」という具合に、車幅違いのバリエーションが3タイプある。 拡大
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圧倒的なコストパフォーマンス

新型ウィッシュは、技術的な新味や新機軸はほとんどないかわりに、商品力の充実ぶりは著しい。ボディは5ナンバー1種に3ナンバー2種の合計3種類も用意されるし、サイド&カーテンエアバッグ、スタビリティ制御(S-VSC)、オートエアコンは全車に標準装備。2.0G以上はすべて標準でアルミホイールがつく。エンジンは全機種が最新鋭バルブマチック(1.8のバルブマチックは今回が初出)で、トランスミッションも全機種が7段マニュアルモード付のCVTである。

デビュー時期から推測すると、この充実した装備内容が確定したのはリーマンショック以前、実際の価格決定がそれ以後だろう。そんなこんなで、新型ウィッシュのコストパフォーマンスは結果的に(?)、ストリーム、プレマシー、ラフェスタといったライバルを圧倒することになった。まあ、巨大な販売スケールを背景にした買い得価格はもともとウィッシュの売りではあったが、そのアドバンテージは新型でさらに拡大している。趣味嗜好や走行性能やトヨタ商法の是非をひとまず無視して、機能や装備と価格を天秤にかけると、上記のライバル各車に勝ち目はない。ハッキリいって。

今回の試乗に連れ出したのは、ベーシックグレードの「1.8X」だ。エアロを装着する上級グレードのような派手さはないが、最も安価なこのモデルにまでリアスポイラーが標準装備なのも、ウィッシュを購入する顧客の気持ちをよく理解している。2リッターモデルとの出力差は14ps、トルク差は2.1kgmだが、ハッキリいって、直接乗り比べなければ違いは分からないくらい。売れ筋は間違いなく3ナンバーエアロ系の「1.8S」だが、こっちの1.8Xでも営業車的な安っぽさはない。本体価格が184万円と大台の手前なのも、新型ウィッシュではこのモデルだけ。そして、しっかりと50%減税対象車でもある。

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シートアレンジや各部の寸法は先代モデルから変わっていないが、今の基準で見ても見劣りしない。
シートアレンジや各部の寸法は先代モデルから変わっていないが、今の基準で見ても見劣りしない。 拡大
ラゲッジルーム容量は最大幅が95mm拡がり、186リッターとなった。ゴルフバッグを横置きできるという。
ラゲッジルーム容量は最大幅が95mm拡がり、186リッターとなった。ゴルフバッグを横置きできるという。 拡大

クラストップの静粛性

ウィッシュの1.8Xは、走ってみても、200万円を切る実用ワゴンとして文句をつけるところはない。ドライブフィールは初代に酷似しているが、各部の改良はツボを得たもので、乗り心地も総じて良好。バルブマチックエンジンはパワーうんぬん以上に燃費でのメリットが大きい。また、スポーティカー的な視点で見ても、前後グリップバランスがうまくまとまっているので、荷重移動を積極的に使って操りたい人の期待にも応えられそうな感触だ。速くはないけど。

とはいっても、新型ウィッシュにはストリームほどべったりと張りついた低重心感はないし、プレマシーほどレスポンシブでもなく、またラフェスタほど滑らかで有機的なロードホールディング性能は持たない。しかし、すべてがまずまずの高水準で、どこかで明確に劣るところもない。さしずめ「全項目で2位。結果的に平均点1位」みたいな感じ。トヨタよのお……って、これは別に皮肉ではなく、全項目2位のクルマづくりはトヨタにしかできない芸当だ。

もっとも、新型ウィッシュにも初代から明確に進化していて、お世辞ぬきにクラストップのポイントがひとつある。静粛性だ。これはガラス厚や空力、局部剛性、吸音材配置などの総合的な工夫で得たものだという。新型ウィッシュのカーペットをはぐると、ボディのところどころに粘土をこぼして盛ったような跡があるのだが、それはペイント式の吸音材なのだそうだ。

初代ウィッシュは事実上の国内専用モデルでありながら累計55万台を売り、一世代にして、カローラ、ヴィッツ、ヴォクシー/ノアなどとならぶ国内ド定番モデルの座を確固たるものにした。まあ、結果的に最悪の時期のデビューとなったこともあって、だから私のようなヒネクレ者が「新鮮味がない」とツッコミを入れたくもなるわけだが、ウィッシュはカローラと同じく、もはや私のような偏狭なマニアがガタガタいうべき存在ではないのかも。

実際、発売の翌月(2009年5月)の新型ウィッシュの登録台数は前年比2倍以上で、全体の5位、トヨタ車では3番手であった。クルマのデキでも販売台数でもこうして結果を出しているのだから、それでいい。新型ウィッシュは結果がすべてのクルマなのだ。

(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸)

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トランスミッションは、マニュアル操作のシフト感覚が楽しめるスポーツシーケンシャルシフトマチック搭載のCVTが全車に標準装備される。
トランスミッションは、マニュアル操作のシフト感覚が楽しめるスポーツシーケンシャルシフトマチック搭載のCVTが全車に標準装備される。

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【試乗車のオプション装備】
ボディカラー=3万1500円/スマートエントリー&スタートシステム+盗難防止システム=4万5150円/ワイドビューフロントモニター+インテリジェントパーキングアシスト=6万3000円/HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター+ステアリングスイッチ+NAVI・AI-SHIFT制御=33万750円/ETCユニット=1万500円
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ボディカラー=3万1500円/スマートエントリー&スタートシステム+盗難防止システム=4万5150円/ワイドビューフロントモニター+インテリジェントパーキングアシスト=6万3000円/HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター+ステアリングスイッチ+NAVI・AI-SHIFT制御=33万750円/ETCユニット=1万500円
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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