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第387回:1000円高速道路、悲喜こもごも
 問題山積みのETC構造にもの申す!

2009.04.13 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第387回:1000円高速道路、悲喜こもごも 問題山積みのETC構造にもの申す!

どこが民営化なんだっつーの!

いやはや、俺がしばらく海外に行ってる間にすっかり盛り上がってんのね。上限1000円高速問題。道が混んでるだの、ホントは混んでないだの、実はアクアラインだけだの、一体どっちなんだ〜って感じではあるが、基本的には喜ばしいことだと思っております。

全然混んでない、つまり利用者が増えてないんだとしたら大問題だが、とりあえず高速代が安くなって、ユーザーが多少なりともクルマに乗る喜びを思い出してくれるんならめっけもん。一般道の最高速を80km/hにするっていう改革案と同様、クルマを愛する者としてこれほど喜ばしいことはない。もちろん言うべき文句は言った上でね。

最もアタマにくるのは2年間で約5000億円も投入される税金だ。正直これを聞いたときは耳を疑ったね。どこが民営化なんだ! って。どこの民営企業に、税金投入してもらって新規事業をやるところがあるんだっつーの!(どっかの週刊誌連載みたい(笑))

民営化なんて名ばかりで、実際は完璧に公団のままじゃないか。どの企業だって客が減ったり、事業存続の危機を覚えて新規サービスをやる時には、身を削って、利益を取り崩して行うのがスジ。民営企業に税金投入なんてのは最後の最後の手段で、そのままじゃ会社が潰れて、失業者が増えて困っちゃう場合にのみ行われるものでしょうに。正直あきれかえりましたよ。なんでこんな不条理がまかり通っちゃうんだろうね。この国って。

ようするにこれは与党の政策であって、道路会社の判断、要求じゃないってリクツなんだろうけどね。明らかにヘンだ。たしかにこれで経済効果が5000億円以上あればいい部分もあるが、ちょっとそれは本質とは違う。

すべてに向けて、いい顔を

もう1つは、メチャクチャな料金体系。「週末1000円」の聞こえのいいキャッチフレーズと、実際問題なるべく損をしたくない各道路会社の意見、そして今までの料金体系、それぞれすべての整合性を持たせたいからなんだろう。
とにかく複雑多岐で、正確な料金を調べるだけで疲れちゃう。道路会社ホームページの「高速道路の料金引下げ(全国版)」って資料を読んでもらえればよくわかる。なんせコイツだけで全16ページ! 驚異的な複雑さだ。(http://www.jehdra.go.jp/goannai.html

基本的には首都高と阪神高速を除く全高速道路の料金が、土日祝祭日のみ「上限1000円」となるというシンプルな決まりのはずだが、これが実はややこしい。距離によっては1000円以下のケースがあったり、実は「全高速道路」じゃなくて大都市近郊が微妙にこの要件に入らなかったり、同様の「例外道路」にアクアラインやら四国の大橋があったり、もっというとこの「例外道路」の割引率が様々だったり、土日祝祭日以外には3割引きだったりと、とにかく「あちら」にも「こちら」にも顔を立て、整合性を取ろうとしているから複雑きわまりない。聞くところによれば、銀座−名古屋のルートでも18通りの料金があるらしい。

それどころか複雑すぎて、最初は3月20日にアクアラインで試し、翌週の3月28日に本格導入し、さらに今後順次修正していくというのにも驚いた。

まさに“セクショナリズムとはこういうこと”の見本だね〜。いろんな意見をすべて聞き、頭のいい人が全方位的に嫌われないように考えるとこうなる。六法全書が難しいってのは、こういうことなんだろうね。
これこそ“ザ・日本社会”であり、官の体質そのもの。内部としては誰も損をしたくないわけで、ったくうらやましい話だ。

ただ、これまたたいしたもので、今では高速料金を正確に調べる「高速.jp」というサイトができてるから恐れいる。他のどの道路会社のオフィシャルサイトより良くできていて、こちらはまさに“民のお仕事”。笑っちゃうくらい対照的なのよ。

ビンボー人はクルマに乗るな!?

ってなわけでぐだぐだとあげつらってきた俺だけど、先日さらに怖いことを聞いてしまった。この1000円高速話は、ハッキリいって人権侵害だという内容だ。いや正確に言えば、人権侵害だった……というべきか。
問題は非常にシンプル。ETCカードの問題である。

今、ETC車載器そのものの供給が足りなくて困っているという話もあるが、そういうことではない。今の日本、実はETCカードそのものを作れない人が結構いるということだ。それは俺みたいなフリーライターで安定収入が無い人だったり、一部の外国籍の人だったり、カード破産した人などである。

正確には数年前からこの問題に対応した「ETCパーソナルカード」というものが作られて、問題は一応解決しているのだが、普及はあまりしていない。
だからあえて問題を蒸し返すと、一般的に使われているETCカードは、ユーザーの当座の現金の有無とは無関係に、クレジットカードに付随してくるものなので、当然それがないと作れない。つまり、今回の恩恵はある程度の社会的地位、経済的状況がないと受けられなかったものなのだ。

もちろん、お金持ちからすると「破産した人や一部在日外国人はしょうがない」と思うかもしれないが、それは完全なる差別であり、基本的人権の侵害に繋がっていたと俺も思う。
というか、そういうお金のない人、困っている人こそ、本来安い高速道路の恩恵を受けられるべきではないだろうか。お金が足りずに普段は実家に帰れない人が、仲間内寄り添ってレンタカー&高速を使って帰れる、ローコストで帰郷できる。それが本来の格安高速の使われかたであり、平等というものではないだろうか。

そもそも今回の料金引き下げは、なんのために行われたのか? それは一部政党の票集めのためなどではなく、国民の幸せの実現であり、高速の有効活用であり、経済の活性化のためだ。そう考えると、やはり今回の価格の引き下げ方法は、理念的に間違っていると思う。
極論すると「ビンボー人はクルマに乗るな!」と言っているような決まり事は、おかしいのである。

もちろん今ではパーソナルカードがあって、一応誰でも乗れるようになってはいるが、基本的にETCが手間がかかり、不便であるものに違いはない。本来ETCなどを使わずとも、スイスのようにユーザーに対して一律年間いくばくかの料金を取るか、民主党案のように無料にするのがスジ。
いくら1000円にしようが、基本的にETCが歪んだシステムであることに違いはないと思うのだ。

1000円高速を使うみなさん。楽しむのは非常にいいと思います。でも、その裏にこういう問題があることを決して忘れないようにしましょうね!

(文=小沢コージ)

※ 読者からのご指摘があり、一部内容を加筆修正し、再掲載しました。

小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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