レクサスRX350 “version L Air suspension”(4WD/6AT)/“version S”(4WD/6AT)【試乗速報】
白いゴハン 2009.02.03 試乗記 レクサスRX350 “version L Air suspension”(4WD/6AT)/“version S”(4WD/6AT)……617万3950円/580万1550円
日本におけるレクサス初のSUVモデル、RX350に乗ると、このブランドがアメリカで支持される理由が少しわかったような気がした。
“レクサス代”は、120〜130万円
「レクサスRX350」がフルモデルチェンジを受けて3代目となった、と自分で書いていてもあまりピンとこないのでちょっと整理します。
このクルマは、もともと欧米や中近東などではレクサス・ブランドで売られていた。1998年デビューの初代、そして2003年にフルモデルチェンジを受けた2代目ともに大人気で、世界的に見るとレクサスの販売台数の約3割がRXとなっている。特に北米市場においてはこのクラスのSUVのマーケットリーダーで、2位の「アキュラMDX」の1.3〜1.5倍も売れているというからまさに“ドル箱”モデルだ。
いっぽう日本では、このクルマは1998年に「トヨタ・ハリアー」として生を受けた。そして2005年に日本でもレクサスが立ち上がったため、3代目となる新型からはレクサスRXを名乗ることになった。まず3.5リッターV型6気筒エンジン搭載のRX350が導入され、4月にハイブリッドのRX450hが遅れて登場する。
「ボディの拡大+装備の充実+新開発したリアサスペンション」などの値上がり要素があるために、2代目トヨタ・ハリアーからどれぐらい価格が上がったのかを比べるのは難しい。それでも同じような仕様同士で比較しつつ価格上昇要素を加味、えいやっ!でソロバンをはじくと120〜130万円ほど価格がアップした勘定になる。実質的にはこのあたりが“レクサス代”といったところか。この価格アップを憂慮して今後1年ほどは、トヨタ・ブランドで2代目ハリアーの2.4リッター直列4気筒モデルを売るという。
ま、あまりハリアー、ハリアーと書くのも、恋人に昔の彼氏のことを根掘り葉掘り聞くみたいで品がない。いまのキミが素敵だったら昔のことなんていいじゃないか。ということで本題の新型「RX350」は、先代が好評だったことを受けて、外観のデザインに大きな変更はない。特に初代から継承されている、天井からお尻に向かうシャープなライン(いわゆるCピラー)がこのクルマらしさを醸している。全体にキープコンセプト、あまり変わっていないっすね、と思いながら運転席に腰掛けて、ハッとする。
ついにクルマにパソコンのマウスが
センターコンソールに、見慣れない黒い物体が配置されているのだ。感じとしては、移動電話と呼んでいた頃のケータイみたい。これがカーナビやエアコン、オーディオなどを一括操作する「リモートタッチ」。BMWのiDriveやアウディのMMIのように、視線の移動を最小限にしながら直感で操作できるインターフェイスだ。
今頃?という気もしなくはないけれど、相互通信式のカーナビやETCなどを駆使して走るこれからの時代、インターフェイスの充実は大事だ。タッチパネル式だとどうしても目線が移動してしまうけれど、この方式だと目は前方とカーナビを見ることに専念できる。
実は最初、映画『E.T.』みたいに人差し指を突き出して操作したら全然うまくいかなくて、「ダーメダコリャ」と心の中の長さんがつぶやいた。けれど、それは使い方が悪かった。パソコンのマウスを扱うように手のひらで装置を包み込んで、人差し指や中指の腹で操作ノブを扱うとバッチリだった。ポインターの移動はスムーズで、操作すると確実なクリック感がある。少なくとも初対面から半日までの間は、iDriveよりスムーズに仲良くなれた。
ドライバーにはタイトな囲まれ感、いっぽう助手席には開放感を与えるというインテリアの造形的な狙いは成功している。細かいところではあるけれど、メーター類に用いられる白色有機ELの光も目に新しい。エンジンを始動して走り始めても、このクルマとはすぐに仲良くなれると思った。
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声の小さな高級車
ステアリングホイールの手応えは軽くてスムーズ。これが軽々しいという印象を与えないのは、ペダルやスイッチ類の操作フィーリングもまったく同じように軽くてスムーズで、クルマ全体に統一感があるからだろう。伊勢丹で試着して値段を見て戻した、カシミヤのコートみたいなふんわり軽い“いいモノ”感がある。
今回の試乗会ではワインディングロードは試すことができなかったけれど、市街地から首都高速までの範囲であれば乗り心地は抜群。「RX350」には、「version S」「version L」「version Lのエアサスペンション仕様」と3種の足まわりのセッティングが存在する。「version S」がステアリングの手応えも含めてしっかりした感じ、「version L」がゆったりしたセッティングとなっているけれど、滑らかな走行感覚は3者とも共通している。ちなみに「version Lのエアサスペンション仕様」は、低速では「version L」のラクシュリーな乗り心地、高速コーナーでは「version S」のソリッド感が味わえる、“いいとこ取り”仕様だった。
3.5リッターのV型6気筒ユニットは、基本的にはトヨタ・アルファードなどに積まれるものと共通。高回転域まで回すとなかなかシャープでイイ音を発するけれど、普段は黒子に徹するタイプで、変速ショックが極端に少ない6段ATとともにクールに仕事をこなしている。パワーにはまったく不満なし。
「レクサスRX350」には「オレがオレが」という主張やクセがなく、初めて乗ってもすんなりなじめる。なんというか、白いゴハンのような感じ。おいしいゴハンだったらカレーをかけてもいいし、ステーキ丼にしてもいい。もちろんそのまま食べても、寿司にしてもおいしい。どんな国籍の料理にもそつなく合わせる柔軟さこそ、「レクサスRX」が人種の坩堝であるアメリカで受ける理由ではないかと思うわけです。
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日本市場での「レクサスRX350」がツライのは、日本人は白いゴハンのありがたみをなかなか感じないことだろうか。国産車は軽自動車から高級車まで、おしなべて白いゴハンの方向を向いているから、どうしても埋もれてしまう。そのあたり、単なる白いゴハンではなく世界的に“健康食品”として認められているハイブリッドの「レクサスRX450h」こそが、このシリーズの真打ちなのかもしれない
(文=サトータケシ/写真=郡大二郎)

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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