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【スペック】全長×全幅×全高=4628×1891×1713mm/ホイールベース=2774mm/車両重量=1825kg/駆動方式=4WD/3リッター直6DOHC24バルブターボ・インタークーラー付き(285ps/5600rpm、40.8kgm/1500-4800rpm)(欧州仕様車)

ボルボXC60 T-6(4WD/6AT)【海外試乗記】

これはボルボなのか? 2008.11.10 試乗記 島下 泰久 ボルボXC60 T-6(4WD/6AT)

「BMW X3」を筆頭に「アウディQ5」「メルセデス・ベンツGLK」など、活況を呈するコンパクトSUV市場に、ボルボが投入したモデルが「XC60」。あらゆる意味で驚くことばかりだったという、そのわけは……。
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殻を打ち破った!

ヨーロッパで今、もっとも熱いカテゴリーといえるコンパクトSUVのマーケットに、ボルボが送り出すニューモデル、XC60のこのスタイリング、おそらく多くの人が「これがボルボ?」と驚くに違いない。なだらかな線と面で構成されたフォルムは、サイドから見ると明確なウェッジを描き、くびれたウエストと大きく張り出したリアフェンダーが艶かしい雰囲気をつくりだしている。Vシェイプのボンネットや張り出したショルダーといったアイデンティティも踏襲されてはいるが、やはり正直、ボルボとは思えないほどの若々しさといえる。

インテリアから受ける印象も同様だ。象徴的なのは、ポップアップ式からようやくビルトイン式とされたナビ画面や、フリーフローティングセンタースタックが明確にドライバー側へと向けられていること。ボルボらしい温もりを感じさせる素材感や色遣いにこそ変化はないが、やはり今までのモデルとはちょっと違う。

もちろん、それは単なる意匠の問題ではなく、つくり手からのなんらかのメッセージが込められたものだと解釈するべきだろう。なにが言いたいかといえば、このXC60、見た目ばかりでなく走りに関しても、これまでの殻を打ち破るものに仕上がっているということである。

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ステアリングフィールが饒舌に

ボルボの乗り味を知る人ならば、走り出してすぐに、そのステアリングフィールが非常に饒舌なことに気付くはずだ。手応えはしっとり穏やかでありながら、手のひらには正確な路面感覚が伝わり、切り込んでいくとリニアに重みを増しながら素直にノーズがインに向いていく。しかもコーナリング中にさらに切り増したり、あるいはスッと切り返した時の反応にまるで遅れがなく、思い通りのリズムで駆け抜けることができる。スタイリングと同様、「これがボルボ?」という驚きがもたらされるのだ。しかも嬉しい方の。

今回試乗できたのは、直列6気筒3リッターターボエンジンに6段ATを組み合わせた「T-6」。最高出力285ps、最大トルク40.8kgmというスペックに不満があろうはずがなく、ストレート6ならではの爽快な吹け上がりも心地良い。しかし今後はもう少し手頃なユニット、おそらくは直4ターボあたりも追加されるようだから、主力はそちらになるはずだ。

駆動方式はとりあえずフルタイム4WDのみ。システムはお馴染みハルデックス式だが、最新世代のそれは、後輪に常にある程度のトルクを配分することでスロットルのオン/オフに対する挙動変化が抑えられ、また高速巡航での安定感も増している。ようやく本当の意味でフルタイム式になったともいえ、これが軽快感を増したフットワークに、ボルボらしい落ち着きをプラスする絶妙な味つけにもなっている。

安全へのこだわりも忘れない

あまり従来との違いばかりを強調すると、XC60はボルボらしからぬクルマなのかと思われてしまうかもしれないが、けっしてそんなことはない。見た目にしろ走りにしろ、大きく若返りを果たしつつも本質を見失ってしまったわけではないのだ。むしろ、これまで不器用に貫いてきたボルボらしさを、よりとっつきやすいかたちで提供しているというべきだろう。

逆に、いかにもボルボらしいのが安全性の面へのこだわりで、なんとこのXC60、15km/h以下での追突を回避できる前方障害検知自動ブレーキ「シティセーフティ」の全車標準装備化を実現している。日本市場に関しては、現状では細かい部分で国交省との折衝中ということだが、間違いなく安全に貢献し、また世界で普通に採用される装備だけに、導入にむけ良い方向の結論が出ることを期待したい。

その日本導入は、2009年夏頃の予定。当初はT-6のみの設定となるもようで、そうなると価格的には若干高めとなってしまいそうだが、今後登場予定のライバル達を見まわしても、見た目も中身も間違いなく個性的で、そして魅力ある存在に仕上がっていることはたしか。そういう意味ではボルボファンならずとも注目し、期待すべき1台といえるだろう。

(文=島下泰久/写真=ボルボカーズ・ジャパン)

島下 泰久

島下 泰久

モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。

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