マツダ・ビアンテ20S(FF/5AT)【ブリーフテスト】
マツダ・ビアンテ20S(FF/5AT) 2008.09.09 試乗記 ……322万4250円総合評価……★★★
個性的な外観をまとう、マツダの新型ミニバン「ビアンテ」。使い勝手や乗り味など、実際の中身はどうなのか? 2リッターモデル「20S」で試した。
修行がたりない
いまでは情報量も多く、乗らないでクルマを造ることも可能なのかもしれない。
デザイナーもクルマに乗らない人らしく、ドライバー心理を理解しているとは思えない。部分部分はよくできていても、クルマ全体としてのまとまりに欠ける――「ビアンテ」には、そんな状態で乗せられている感じがする。
本来ならばここがスタート地点。これから、順次走り込んでチューニングを加えてゆくのがクルマ作りの常道。今のユーザーは、こんな雑然とした感触に慣れてしまうのだろうか? これはビアンテに限ったことではなく最近のクルマの傾向でもあるが、今回は特に気になったので、苦言を呈させてもらいたい。
端的に言って、熟成感がないのだ。
たとえば、前方直下が見えない視界の悪さ。こちらが車外にいる時には、ドライバーの視界に入っていないことを自覚して、子供を遠ざけるなど自衛しなければならない。
運転中に信号待ちで最前列に止まる場合には、キチンと路面を確認できる場所で停止させようとすると前にビアンテ約1台分の距離が必要になる。クルマ作りの流れは路面面積の占有率を下げるため全長を詰める方向にある、この点も完全に逆行している。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ビアンテ」は、両側スライドドアを備えるマツダの8人乗りミニバン。2008年7月8日にデビューした。
「トヨタ・ノア/ヴォクシー」や「日産セレナ」を直接のライバルとしつつ、クラス最長を謳う室内幅(1545mm)など、広い室内空間がウリ。3人掛けの2列目シートを左右に分割し、キャプテンタイプの使い方ができる「ウォークスルーモード」や、3列目の座面をチップアップして2列目を大きくバックさせる「リビングモード」など、多彩なシートアレンジもアピールポイントだ。
シャシーの基本コンポーネントはコンパクトミニバンの「プレマシー」ゆずりで、2リッターと2.3リッター2種のオールアルミ製の直4エンジンもプレマシーと同型のものを搭載する。
(グレード概要)
試乗車は「20S」。2種類ある2リッターモデルのうち上級グレードにあたり、ルーフスポイラーやアルミホイール、フォグランプなどを標準装備する。
駆動方式はFFと4WDが選べ、前者は5AT、後者は4ATとトランスミッションが異なる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
計器類はウィンドウ直下の一番見やすい位置にある。見やすいのはよいことだが、その存在がかえって前方視界の妨げにもなっている。
3段重ねのインパネは、境目のモールがサイドミラーに映り込んで邪魔。中央部のナビ画面や空調、インパネシフト関連は、おおむね操作しやすい。ETC機器をルーフ側に隠すのはマツダの常套手段、バイザーを下げるとあらわれるコレも使いやすい。
(前席)……★★
シートはいわゆる“腰掛け型”で、座面後傾斜角が足りない。ハイト調整機構の質がそれをさらに助長する。表皮のデザインやクッションの硬さ配分からも腰は前にズレやすくなる。
前方直下が見えない眺めは問題だ。三角窓下端のラインから上が目隠しになり、鼻先にいる子供の存在などが確認できないので、非常に不安。計器類があるインストゥルメントパネルの2段目をすべて排除したくなる。しかも、ダッシュの継ぎ目を隠すモールは、どの角度でもサイドウィンドウに映り込んで視界を妨げる。
サイドミラーは内側下端を斜めにカットしてあるため、肝心の後輪あたりが見えない。
(2列目シート)……★★
ホイールベースの真ん中に位置する中央席は、本来ならばミニバンの特等席でなければならない。前後スライドの量も大きく居住空間は十分だし、横にスライドして通路を作りウォークスルーを可能にするなどいろいろ凝った仕掛けはあるものの、基本的な座り心地や走行中の乗り心地があまりよろしくない。前席同様、腰は前にズレやすく、しかもアイドル振動など上下振動を拾いやすく、不快。
(3列目シート)……★★★
ここも決して快適とは言いがたいが、高めに座れるので視界がいいし、クッションはやや硬い設定ながらむしろ微振動の類は少ない、狭いけれどもかえって包まれ感があって安心できることなどのおかげで、2列目より不満は少ない。
背もたれを倒すとトランクの延長となることを考えると望外の仕上がり。二分割されるシートの真ん中にはヘッドレストがなくシートベルトが2点式とはなるものの、使用頻度を考えればやむなしか。
(荷室)……★★★
この手のミニバンのトランクとしては、容量は普通のレベル。このクルマはシートをギリギリまで下げてまでも乗員のための空間を確保する考えで、必要ならば足元のフロアに置けばいいということか。もともとピープルムーバーであり、荷商車ではないという用途を考えるとこの程度で諦めるしかないが、フロア下を有効に使っているクルマもある。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
アイドル振動は4気筒としてはやや大きめながら、遮音には努力の跡がみられ常用速度域(100km/h以下)での静粛性は高い。特に街なかの低速域では静か。ただし活発な加速を試みると、高回転域は耳につく。パワーはもっと欲しいところだが、燃費を考えれば2リッターで十分といえる。我慢を強いられるほどではない。
ATもDレンジのままで十分。マニュアルモードを選ばずとも、右足の踏み込み加減に応じたギアポジションを選べる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
基本コンポーネントはプレマシーとのことだが、重心高が高くなったにも関わらずロールセンター高は見直されていない。ジオメトリーがそのままなので、やや足元をすくわれるようなタイヤのグリップ感を示す。しかしロール角そのものはよくチェックされており、気になるほどは傾かない。バネ系もさほど固められておらず、おおむね姿勢はフラットで良好。目地段差などのハーシュネスも巧くおさめられている。乗り心地は総じて良好だ。
(写真=菊池貴之)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年8月29日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:4556km
タイヤ:(前)205/60R16(後)同じ(いずれも、ダンロップSP SPORT)
オプション装備:電動両側スライドドア+本革巻きステアリング&シフトノブ(11万7600円)/クリーンエアパッケージ(5万2500円)/コンフォートパッケージ(5万5650円)/HDDナビ+フロント&サイド&バックビューモニター++リアエンターテインメントシステム(50万4000円)/SRSエアバッグシステムカーテン&フロントサイド(9万4500円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:172.7km
使用燃料:24.6リッター
参考燃費:7.02km/リッター

笹目 二朗
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