トヨタ・アルファード240S(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アルファード240S(FF/CVT) 2008.07.17 試乗記 ……394万3650円総合評価……★★★
威風堂々で人気上々の「アルファード」。2列目ベンチシートの8人乗り仕様はどうなのか? ベーシックな2.4リッターモデルの走りは?
専用エアロパーツで個性を上乗せする、「S」グレードで試した。
テコ入れは必要
大容量キャビンをもつ大型ミニバンは、自由度があって楽しい。乗員が定員より少ない時にはあちこち席を選べる。その点、2列目も3列目もそれほど乗り心地に差がないのは美点だ。
大人数での移動となると荷物もそれなりに増加すると考えられ、通常のトランク部分だけでは不足する、足元など室内への同居もあり得るが、クライスラーの「ボイジャー」などと比べれば、まだまだ効率的な収納の余地はある。単に見た目の変更だけを実施したマイナーチェンジならば納得できるが、次回は根本的なテコ入れが期待される。
ブレーキはもっとパワフルでありたい。重量や動力性能に対しては不満だ。たしかに、強く踏めば利かないことはないが、最近の欧州車のレベルからすると、減速Gは踏み始めの立ち上がりが弱めで、その後の踏み込みに対する増加率も期待値を下まわる。ブレーキアシスト云々ではなく、全体の容量というかシステム自体のグレードアップがそろそろ必要な時期にきている。
サイドブレーキは同じペダルを2度踏みしてリリースするタイプで、緊急時の反復使用がしにくい。たとえば下り坂で主ブレーキが失陥して使えないと仮定しよう。サイドブレーキを試せば減速させうるのだが、次第にフェードしてきたとき反復使用するのに毎回2度ずつ踏まなければならない。ロックさせてしまう危険性があるし、解除時もそこまで踏みこむ必要がある。
膨大な車種をかかえるトヨタ・ファミリーとしては、極端な抜け駆けは許されないのかもしれないが、上級車種から目覚めないと流れをリードできないのではないか。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「アルファード」は2002年5月、トヨタの最上級ミニバンとしてデビュー。6年後の2008年5月にフルモデルチェンジし、2代目になった。
新型は、初代のセリングポイントであった“威風堂々路線”を踏襲、基本性能を正常進化。さらに兄弟車として、車体前後のデザインが異なる個性派モデル「ヴェルファイア」をラインナップした。
スリーサイズは、全長と全幅が微増。全高を45mm下げつつ床位置も55mm低めることで、低重心を手にする一方、室内高は10mmアップさせた。座席は先代同様、「2+2+3」の7人乗りか「2+3+3」の8人乗り。オットマン機能は7人乗り仕様の2列目だけでなく、助手席にも装備される。
パワーユニットは、2.4リッター直4「2AZ-FE」(170ps/6000rpm、22.8kgm/4000rpm)と3.5リッターV6「2GR-FE」(280ps/6200rpm、35.1kgm/4700rpm)の2本立て。直4、V6ともに、先代モデルよりパワーアップを果たした。なお、2003年7月に登場したハイブリッドバージョンは、新型ではカタログ落ち。エコロジーなミニバンの役割は、「エスティマハイブリッド」に一任されることになった。
(グレード概要)
試乗車は、8人乗り仕様の「240S」。2.4リッター直列4気筒を搭載するベーシックグレードで、前後バンパー、カラードサイドクラディングパネルなど、専用のエアロパーツが「S」たる特徴である。標準18インチのホイールは、オプションでより小径な16、17インチをセレクト可能。内装は、上級グレードの「G」同様、本革巻きのステアリング&シフトレバーなどが備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
大きなウィンドウ面積と傾斜に伴い、インストゥルメントパネルも立体的で広々と感じられるデザインになっている。木目調樹脂パネルも仕上げが巧く高級感を演出。メーター類も完備しており正面ハンドル内に収めた、正統派ゆえの落ち着きが感じられる。ナビ画面と空調オーディオ関連のスイッチや配置も適切。インパネシフトも邪魔にならないし、カップホルダー、小物入れ、ポケット類も抜かりなく完備。
(前席)……★★★
高く見晴らしのいいポジションからの眺めは上々。シート表皮は滑りにくい材質で腰は前にズレにくい。だがシート座面の後傾斜角は少なめで、前屈みに腰かける形になり、上体のほとんどの重さは腰にかかる。そのクッションの中央部が固く盛り上がった感じで長時間ではお尻が痛くなるタイプ。横方向のホールドはサイドの張出しが有効。ランバーサポートの張りはもっと強くてもいい。
|
(2列目シート)……★★★
ここは応接間のソファーのような雰囲気をもち、止まっていて談笑するには適当かもしれないが、動きだすとやはり座面の後傾斜角が足りない。長時間の移動は疑問。腰部を安定させるには、大きく背もたれを倒して寝そべって座れば腰から背中への依存率は確保される。前後の移動量は十分に大きく空いたスペースへの荷物搭載も可能。
(3列目シート)……★★★
前席、2列目と同じ理由で座面後傾斜角はもっと大きくとるべきだ。箱型空間の最後部席にありがちな籠もり音などはよくチェックされている。絶対的に広い室内スペースにより解放感は上々。乗り心地としてはたくさん乗るほど落ち着きを増すが、一人や二人ではやや微振動域の不快感がある。背後のスペースはほとんど無くリアウィンドウがすぐ迫るが、圧迫感は少ない。
(荷室)……★★★
シートを8人がけの状態にしたままだと空きスペースは少ないが、シートアレンジ次第で何とか収めることはできそう。しかし、FF車の特徴を生かしてシートを畳み込ませたり収納スペースを設けたりと、フロア下をより有効活用した例もあるから、これがベストとは思えない。これまでの延長というか、常識や慣例から抜け出す努力は見られない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2.4リッター170psでも必要にして十分にパワフル。アイドル振動は横置き4気筒のなかでもよく抑えられている。渋滞時など低回転のマナーもいいし、回せば期待に違わぬ力を発揮、音もそれほど高まらない。
ATは効率よく加速を助ける。シフトもスムーズで、無用にホールドし続けたり、早めにシフトダウンする悪癖はなし。負荷が軽い時にはどんどん上位ポジションに移行し経済的な運転が可能。ただしエンジンブレーキの利きは、もっと欲しい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
全体に静かで、乗り心地は概ね良好。普通に走行する公道上のほぼ8割の路面では特に不満は見当たらない。この辺がトヨタの想定内なのだろう。しかし高価格上級ミニバンとして輸入車も含めてみると、サスペンションが小刻みにストロークを繰り返すような微振動域の処理はまだまだ不満だ。また、想定範囲より入力が大きくなると、それまでとは打って変わった反応を示す。ボトミングするような大入力時の許容度はもっと欲しい。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2008年6月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:1777km
タイヤ:(前)235/50R18(後)同じ(いずれも、TOYO TRANPATH R30)
オプション装備:パワースライドドアデュアル(5万2500円)/HDDナビゲーションシステム&パノラミックスーパーライブサウンドシステム+音声ガイダンス機能付カラーバックガイドモニター+ETCユニット(52万5000円)/G-BOOK mX Pro専用DCM+盗難防止システムオートアラーム(6万6150円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(5):高速道路(5)
テスト距離:295.8km
使用燃料:39.30リッター
参考燃費:7.52km/リッター

笹目 二朗
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。




































