マセラティ・グラントゥーリズモ(FR/6AT)【試乗記】
ハイエンドGT 2008.04.21 試乗記 マセラティ・グラントゥーリズモ(FR/6AT)……1668万6000円
マセラティの4シータースポーツカー「グラントゥーリズモ」。これまでマセラティブランドに特別な感情を抱いたことがない執筆者だったが、グラントゥーリズモは思いもよらないフィーリングを……。
これまでのイメージ
熱狂的“マセファン”(?)の方には申し訳ないけれど、ボクはこのブランドに特別な思いを抱いたことがなかった。要因のひとつが、自身には金輪際縁のなさそうな車両価格にあったのはもちろんだが、正直なところ、これまで経験したモデルの走りのテイストが、どうももうひとつ個人的な好みとは相容れないものであったからだ。
たとえば、かつての「クーペ」もそうだったし、「クアトロポルテ」もそうだった。どれもボディやシャシーのしっかり感が、自分の中での期待値に届いていなかった。「今やフェラーリの“親戚”なんだから、走りもそれに準じて当然」と、無意識のうちに思っていたのかもしれない。というわけで、言葉は悪いが「何だか粋がった見た目のわりに……、カッコ負け」といったイメージが僕の心の中にできあがっていた。が、そんなネガティブさにズバリ終止符を打ったのが今回乗ったグラントゥーリズモだ。
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すべてが軽い
走り出した瞬間から「あれれれ? マセラティってこんなに良かったっけ!?」と目から何度もウロコが落ちた「マセラティ・グラントゥーリズモ」。オーソドックスなFRレイアウトを含め、ハードウェア面からは「AT仕様のクアトロポルテのクーペ版」とでも言ってしまえばすみそうなこのモデル。だけどいざ走らせてみれば文句ナシに“マセラティ史上最良”(自身比)の優れたフィーリングを味わわせてくれた。
全長はおよそ4.9mで、車両重量も1.9トンに迫ろうという重量級のグラントゥーリズモ。しかし、実際にはその走りが、そうしたスペックが信じられないほど「すべてが軽い」ことに驚かされる。
0→100km/h加速が5.2秒、0→400m加速が13.4秒というデータからも明らかなように、たしかにグラントゥーリズモの速さは一級品だ。けれども、絶対的なスピード性能の高さだけが“軽いフィーリング”をもたらしているわけではなさそうだ。
人とクルマの一体感
乗り込んだ当初はちょっとやり過ぎと思えるほど、操舵力の軽いパワーステアリング。4つのタイヤからバランスよくグリップを引き出しながら、ヒラリヒラリとコーナーをこなしていく絶妙なハンドリング。フロント245/35、リア285/35というファットな20インチシューズを履くにもかかわらず、路面のアンジュレーションをこともなげにいなしていく乗り味などが、グラントゥーリズモの「すべてが軽い走り」を演出している。
このクルマをドライブしていると、実際のボディサイズよりずっと小さく、前述の重量よりもずっと軽いモデルを走らせているような錯覚におちいるのである。そう、ありていに言ってしまえば「人とクルマの一体感」が望外に高いのだ! そんなスポーティな心地よさが、まさかマセラティから得られるとは!!
こうした走りの印象がすこぶる優れていると、例のカッコ付けルックスもますます冴えて見えてくる。
スラリと伸びた長いノーズの先端に、中央部にトライデントのモチーフをレイアウトしたグリルを低くマウントしたフロントセクションは、いかにもGT=グラントゥーリズモという名に相応しい贅沢さをアピール。
トランクスペースこそ小さいものの、リアシートが「大人がさほど無理なく座れるスペース」であるのにも驚いた。レッグスペースにもヘッドルームにもそれなりの余裕があるのだ。インテリアの贅沢な造りは今さら述べるまでもない。
なるほど、これは何とも本格的な“ハイエンドGT”ではないか。
いやいや、改めてマセラティというブランドを見直させてくれたグラントゥーリズモ。スミマセン、も一度勉強し直して来ます……。
(文=河村康彦/写真=高橋信宏)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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