ボルボV70 3.2SE(FF/6AT)/T-6TE(4WD/6AT)【試乗記】
北欧発/北米行き 2007.11.02 試乗記 ボルボV70 3.2SE(FF/6AT)/T-6TE(4WD/6AT)……575.0万円/750.0万円
ボルボの主力ワゴン「V70」が7年ぶりのモデルチェンジを受け、よりスポーティな印象に生まれ変わった。日本導入前の先行輸入モデルで新型を試す。
期待のニューモデル
新しい「ボルボV70」は、イエテボリはもちろん、ディアボーンからも熱い視線を注がれての登場となった。ニューモデルは、ボルボの主幹車種であると同時に、混迷を深める親方フォードのプレミアム担当ブランド、その売れ筋モデルとしての期待をいっぱいに詰め込まれ、ボディがふくらんだ。
全長4825mm、全幅1890mm、全高1545mmの車両寸法は、旧型と比較するとほぼ1割増し。前後車軸間は60mm延びて2815mmとなった。クルマのカテゴリーが1段上昇した計算で、実際、ベースはこれまでの「V70/S60」から同社のフラッグシップ「S80」由来のモノとなった。フォードグループとしては、新型V70をして「メルセデス・ベンツEクラス」や「BMW5シリーズ」のライバルと位置づけ、これまで以上に“稼げる”クルマに育てたいわけだ。
Eクラスや5シリーズのワゴンと較べると、V70のディメンションは「短く、幅広」である。よりスポーティに、コーナリング性能を重視した……というよりは、直列6気筒をエンジンルームに横置きする特異なレイアウトのためで、ベーシックなグレードを除き、新型V70のパワーソースはストレート6をメインとする。この点でも上位移行が図られた。
日本に導入されるのは、2.5リッター直5ターボ(200ps、30.6kgm)、3.2リッター直6(238ps、32.6kgm)、3リッター直6ターボ(285ps、40.8kgm)の3種類。いずれも6段ATと組み合わされる。
グレード名と駆動方式は、「2.5T LE」(FF)、「3.2SE」(FF)、「3.2SE AWD」(4WD)、「T-6 TE AWD」(4WD)。
うち、2007年11月1日から受注を始めるのは以下の2車種となる。
・V70 3.2SE=575万円
・V70 T-6 AWD=750万円
広がった室内
大きく、高価になったボルボV70。トップモデル、3リッターターボ搭載の「T-6 AWD」は車両本体価格750万円!と、先代の「R」をわずかに上まわる。それでも「メルセデス・ベンツE300ステーションワゴン」が自然吸気にもかかわらず723万円、「BMW530iツーリング」が797万円、4WD版530xiにいたっては818万円のプライスタグをさげることを考えれば、“お値打ち”ということなのだろう。
……でも、やっぱり、ちょっと、高いな。
そう思いながらニューモデルに対面すると、意外に大柄に感じない。絞り込まれたフロントから、SUV「XC90」の好評を反映したとおぼしき、ややゴツめのリアエンドまで視線がスムーズに流れるからか。ヘッドランプはすこしシャープなデザインとなり、サイドはショルダーの張り出しが控えめに、そしてDピラーの直立度がやわらいだ。「プレミアム」を声高に主張しないところがいかに北欧のブランドらしい。が、一方で個性が薄れた感は否めない。
むしろ“らしさ”を感じるのは室内で、S40/V50で取り入れられた「フリーフローティング・センタースタック」がV70にも採用され、大きめのシート、雪の丘陵を思わせるなだらかなダッシュボード、質感の上がった樹脂、パネル類などが、うーん、スカンジナビアン。
リアシートは、キャビンが拡大したのにともない膝前が5cmほど広くなり、背もたれは4:2:4の分割可倒式となった。ユニークなのは内蔵される「チャイルドクッション」で、今回から子供の成長に合わせ、2段階に座面の高さを上げることができる(ファミリーパッケージ装着車)。操作は簡単で、使っているときも使わなくとも、見た目がスッキリしている。
荷室は、(計測方法にもよるが)BMWより広く、メルセデスよりは小さい575リッター。フロアパネルがゲートに合わせてロックされるようになり、床下収納物の安全性が上がった。また、テールゲートは全車パワーとなった。2段階のピンチプロテクション付き。ゲート開閉時の抵抗が増すと、動作が止まる。
上昇志向の意欲作
現行のS80と一緒にデビューを飾ったストレート6は、補機類の配置にも気を配ったコンパクトなアルミエンジン。ターボユニットは、NA版とボアもストロークも異なる。2953ccの排気量から、285ps/5600rpmの最高出力と、40.8kgmという太いトルクを1500から4800rpmにわたって発生する。スペック通り力強いパワープラントで、ラグを感じさせない反応のよさがウリだ。
ただ、4WDシステムをもつT-6は車重1900kgとなかなか重量級で、頻繁な加減速やステアリング操作が楽しさにつながるタイプのエステートではない。先代「R」ゆずりの「3ドライビングモード付きFOUR-Cアクティブパフォーマンスシャシー」やアシスト量を3段階に変えられるパワーステアリングをもつが、まあ、これらはインパネの肥やしになりましょう。
新しいボルボの、1890mmの車幅は日常使いにはギリギリ、か。そのうえターボモデルは18インチを履くためか、最小回転半径が6mと大きめ。先代Rの6.6からは改善されたが……。ターボ版V70は、遠距離の高速巡航を頻繁に行うユーザーでないと、なかなか長所を引き出せないかもしれない。
カタログ燃費(申請値)は7.9km/リッターと厳しい数値。先代のRは8.1km/リッターだった。
84.0×96.0mmのボア×ストローク、3192ccから、最高出力238ps/6200rpm、最大トルク32.6kgm/3200rpmを得る「3.2SE」は、「T-6 TE AWD」より175万円安い575万円。スロットルペダルを踏み込んだときの絶対的な速さこそターボに譲るが、車重は1770kgと130kgも軽いので、気分的にも扱いやすい。
クルーズコントロール時の車間距離を保つ「ACC」、追突警告機能、ドライバーの注意力低下を警告する「ドライバー・アラート・コントロール」、車線逸脱を注意する「レーン・デパーチャー・ウォーニング」、それに死角エリアに他車が入ったときに警告灯で知らせる「BLIS」といった先進的な装備こそオプション設定になる。しかし、実際に使うにあたって、大きなネガは感じられないんじゃないでしょうか。
最小回転半径は5.5。カタログ燃費(申請値)は8.0km/リッターとなる。
新しいボルボV70は、上位カテゴリーへの移行を狙ってゴージャスになった。メインマーケットたる北米での嗜好により強く合わせたクルマといえよう。気になるのは、最近の極東市場において、アメリカンなクルマはなかなか受け入れられないということである。
(文=webCGアオキ/写真=郡大二郎)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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