「世界ラリー選手権 2012」開幕戦ラリーモンテカルロの舞台から
2012.01.27 画像・写真世界ラリー選手権(WRC)の2012年シーズンが、1月17日〜22日の「ラリーモンテカルロ」で開幕。その戦いの現場から、今年の顔となるドライバーやマシンを紹介する。(文と写真=廣本泉)

2012年の世界ラリー選手権(WRC)は、伝統の一戦「ラリーモンテカルロ」で幕を開けた。今年で80回目を数えるこの大会だが、WRCとしての開催は2008年以来、4年ぶり。1月17日から22日にかけて、フランスのアルプス山麓の街バランスからモナコへと至るクラシカルな形式で争われた。
-
2012年の世界ラリー選手権(WRC)は、伝統の一戦「ラリーモンテカルロ」で幕を開けた。今年で80回目を数えるこの大会だが、WRCとしての開催は2008年以来、4年ぶり。1月17日から22日にかけて、フランスのアルプス山麓の街バランスからモナコへと至るクラシカルな形式で争われた。
-
シトロエン、フォード、MINIのワークスチームとセカンドチームのほか、2013年から本格的な参戦を開始するフォルクスワーゲンなど注目のメンバーが勢ぞろい。スタート前には主要メンバーの集合写真が撮影された。
-
シトロエンは開幕戦に合わせてエンジンブロック、カムシャフト、クラッチ、フライホイールを変更し、さらにダンパーを改良するなど、「DS3 WRC」のモディファイを実施。マニュファクチャラーズ部門、ドライバーズ部門のディフェンディングに向けて、徹底的にマシンの熟成を図っている。
-
シトロエンは、2011年にドライバーズ部門の8連覇を達成したセバスチャン・ローブを引き続きエースに起用。競技初日は雪と氷に覆われた難しいコンディションだったが、序盤から好タイムを連発し、ラリーを支配した。
-
2003年にフォードへ加入し、2004年にスバルへ移籍。2006年から再びフォードで活躍してきたミッコ・ヒルボネンがセカンドドライバーとしてシトロエンに移籍した。「序盤は慎重に走り過ぎた」と語るように競技初日は6番手に出遅れるものの、2日目からペースアップ。4位入賞を果たした。
-
一時は活動休止がささやかれていたフォード陣営だが、2012年もワークス活動を継続している。とはいえ、マシンの熟成不足は否めず、主力モデル「フィエスタWRC」のアップデートはフロントリップスポイラーの変更程度。それでも優れたバランスを生かして、ワークスドライバーたちは上位争いを展開した。
-
昨年までセカンドドライバーを務めてきたヤリ-マティ・ラトバラがフォードのエースに昇格。その期待に応えるかのようにSS2では絶妙なタイヤ選択で総合トップに躍り出たものの、「ペースノートを聞き間違ってしまった」のが災いし、SS4でコースアウト、そのままリタイアすることとなった。
-
フォード、スバルを経て、2009年よりプライベーターとして活動してきたペター・ソルベルグが、今年はセカンドドライバーとしてフォードへ加入した。「テストは少なかったけれど、クルマに関しては言うことがないほど乗りやすかった」と語るように、計4本のSSでベストタイムをマーク、3位表彰台を獲得した。
-
フォード、三菱、プジョーなど長年に亘って活躍してきたフランソワ・デルクールは、フォードのセカンドチーム「Mスポーツ・フォード」よりチャレンジ。49歳ながら「フィエスタWRC」で安定した走りを披露、6位入賞を果たした。「本当に楽しいラリーだった。この成績は悪くない」とのこと。
-
2011年から試験的にWRCを戦ってきたMINIは、今年はマニュファクチャラーとして本格的に参戦。3月に主力モデル「ジョンクーパーワークスWRC」のアップデートが行われることから、今大会は2011年仕様だったが、得意なターマックで抜群のパフォーマンスを披露した。
-
シトロエンを経て、2011年に開発ドライバーとしてMINI陣営に加わったダニエル・ソルド。今年もエースとしてチームに残留し、ターマックスペシャリストとして安定した走りを披露。最終的に2位表彰台を獲得した。ちなみに、チームメイトのピエール・カンパーナは6位入賞を果たした。
-
2013年から正式参戦を開始するフォルクスワーゲンも開幕戦からテストプログラムをスタート。マシンはグループメーカーのシュコダがリリースする「ファビアS2000」だ。ノンタイトルながらパーツの開発や各イベントのデータ収集、ラリーオペレーションのシミュレーションなどが行われている。
-
昨年までシトロエンのワークスドライバーとして活躍してきたセバスチャン・オジエがフォルクスワーゲンへ移籍。そのスプリント能力は健在で、SS2では各ワークスのWRカーを抑えて3番手のタイムをマーク、マシンは格下の「ファビアS2000」ながら、競技初日を総合4番手でフィニッシュした。残念ながら競技2日目にコースアウトを喫しリタイア。チームメイトのケビン・アブリングが総合12位で完走した。
-
競技初日は普通のターマックのほか、雪と氷に覆われた特殊な路面のなかでタイム争いが展開された。そのため、ターマック用タイヤ、スタッドタイヤ(写真)、両タイヤをクロスに装着するなどタイヤ選択が明暗を左右。さまざまなドラマを演出することになった。
-
大会直前の1月8日、FIA(国際自動車連盟)は契約違反を理由にWRCのプロモーター、ノースワンスポーツとの契約解除を発表した。計時などこれまでのシステムが使用できなくなることから大会運営の混乱が危惧されていたのだが、ラリーモンテカルロは独自の計時システムを採用。スムーズにオーガナイズされた。
-
1月17日にバランスでセレモニアルスタートが行われ、18日からバランス周辺の山岳エリアで争われたラリーモンテカルロは20日の夕方にモナコへ移動。ヨットハーバーにサービスパークやパルクフェルメが設置され、21日〜22日はソスペル周辺のフレンチアルプスでタイム争いが展開された。
-
ラリーモンテカルロの名物ステージ、チュリニ峠も健在。暖冬の影響で雪はなく、ドライターマックとして争われたが、ナイトステージの復活で数多くのギャラリーを集めていた。ちなみに、2本のナイトステージでは、フォードのペター・ソルベルグがベストタイムをマークしている。
-
同時開催のSWRC(スーパー2000世界ラリー選手権)で注目を集めたのはマレーシアのプロトンで、元スズキワークスのパー-ガンナー・アンダーソンが「サトリアネオS2000」で首位を快走。後続に7分のリードを築いていたのだが、マシントラブルが発生し、競技4日目にリタイアを喫した。
-
開幕戦のラリーモンテカルロを制したのはシトロエンのエース、セバスチャン・ローブだ。序盤の2日間で計8本のSSを制し、競技3日目からは余裕の走りを披露。まさに“モンテカルロ・マイスター”と呼ぶにふさわしい、今大会通算6回目の勝利を手に入れた。