日産名車再生クラブ「車両動態確認イベント」の会場から(その1)
2014.03.27 画像・写真新しいクルマの方が、速くて快適で燃費もよくて、なによりめったに壊れない。そう頭ではわかっていても、どうしても心をひかれてしまうのが「往年の名車」というもの。
今回は、そんなノスタルジックなクルマの再生を行う、日産名車再生クラブの「車両動態確認イベント」を取材した。
そもそも日産名車再生クラブとは、日産社内の有志(OBも含む)が、同社の歴史的な車両を復元し、動態保存することを目的とした活動のこと。活動は会社休日をはじめとした勤務時間外に行われ、もちろん、お給料は出ない。毎年、年初の会議で「今年はどのクルマを再生するか?」を決定し、一年かけて車両を修復。完成したクルマを12月のニスモフェスティバルでお披露目する、というのが具体的な活動内容となっている。
今回のイベントは、これまでに修復してきたクルマの状態確認と、メインテナンスを目的とした「テスト」なのだが、今回はなぜかクラブメンバーの家族の姿が。代表の木賀真一さんいわく「普段、家族サービスそっちのけで休日出勤しているパパが、いったい会社でなにをしているのかを知ってもらおうという思惑なんです」とのことだが、これも素晴らしい「家族サービス」の一環だろう。
ちなみに、今回走行テストが行われたのは以下の6台。
・ダットサン富士号 1958年モービルガス・トライアル Aクラス優勝車
・ダットサン桜号 1958年モービルガス・トライアル Aクラス出場車
・プリンス・スカイラインGT 1964年日本グランプリ出場車(レプリカ)
・日産サニーエクセレント クーペ1400GX 1973年日本グランプリ TS-aクラス優勝車
・ダットサン240Z 1971年サファリラリー優勝車
・日産バイオレット 1982年サファリラリー優勝車
・日産240RS 1983年モンテカルロラリー出場車(レプリカ)
イベントの様子と往年の名車の雄姿を、写真で紹介する。
(文=webCG/写真=森山良雄)
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会場に居並ぶ、本日の主役7台。「サニー」や「スカイラインGT」など、年末のニスモフェスティバルで見たことのあるクルマの姿も。
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1958年のオーストラリア一周ラリー「モービルガス・トライアル」において、排気量1リッター以下のクラスで優勝をはたした「ダットサン富士号」。
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「富士号」とともに1958年のオーストラリア一周ラリーに出場。クラス4位の成績を収めた「桜号」。ちなみにオーストラリア一周ラリーは、あまりの過酷さが問題となり、富士号と桜号が参加した1958年を最後に中止されてしまった。
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4気筒エンジンを搭載する「スカイライン」のフロントを延長して、「グロリア」用の6気筒エンジンを押し込んだ「プリンス・スカイラインGT」。こちらは1964年の日本グランプリにおいて2位入賞を果たした、砂子義一選手のマシンを再現したものだ。
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「日産サニーエクセレント クーペ1400GX」。こちらの個体は北野 元選手のドライビングにより、1973年の日本グランプリにおいてTS-aクラス優勝を果たした車両そのものだ。
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1971年の第19回東アフリカサファリラリーで優勝を果たした「ダットサン240Z」。
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名手シェカー・メッタのドライビングにより、サファリラリー4連覇という偉業を成し遂げた「日産バイオレット」。こちらは1982年に優勝した個体だ。
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グループB時代の世界ラリー選手権に参戦した「日産240RS」のレプリカ。当時、サファリラリー参戦車両を模したショーカーとして利用されていた個体をベースに、当時のワークスカーと同じ仕様に仕立てたものだ。
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「日産名車再生クラブ」とは、座間記念庫に収蔵されるクルマの動態保存を目的に、車両のレストアを手掛けるクラブである。対象となるのはレースカーばかりではなく、2010年には「たま電気自動車」をよみがえらせている。
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走行前の最終チェックを受ける「ダットサン240Z」。
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こちらでは、「サニーエクセレント」のドライバーがフロントグリルをテープでふさいでいる。「グリルを全開にしたまま走ると、エンジンが冷えすぎるんです。90度くらいがちょうどいいのですが」とのこと。
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各車準備を終え、いよいよ走行スタート。なお助手席に見えるのは、イベントに招待されたクラブ員の家族。実走試験を見学するだけでなく、同乗走行も体験できるのだ。
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コースへと出ていく「ダットサン240Z」。なお、「日産名車再生クラブ」では車両のレストアについて、「レースを終えた際の姿を復元、維持する」ことを目標としている。したがってこちらのダットサン240Zには、レースで負ったダメージがそのまま残されている。
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爆音をとどろかせて走る「スカイラインGT」や「サニー」に対し、1980年代のラリーカーである「バイオレット」や「240RS」のサウンドはかなり穏やかな印象だった。
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走行を終えて戻ってきた車両に、次に同乗走行をする人が乗り込んでいく。ちなみに、乗るクルマはくじ引きで決定。私は北野 元選手の「サニー」に乗ることができた。
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今日集まった7台の中でも、最大級の爆音をとどろかせていた「日産サニーエクセレント クーペ1400GX」。
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ある程度コースを周回したところで、点検のためにいったんクルマを駐車場へ。希少なクルマを間近に見るチャンスだ。
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こちらでは、シェター・メッタがドライブした「バイオレット」がエンジンルームをご開帳。
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こちらでは、私も乗せてもらった「サニー」にトラブルが発生。どうやらオルタネーターがちゃんと発電していないようだ。
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「サニー」のレース用車両は、エンジンの排気量を1.6リッターに拡大し、ヘッドをDOHC化。EGI(電子制御燃料噴射装置)の採用とも相まって、最高出力は200psに迫っていたのだとか。「現役当時は10000rpm以上回っていたらしいですが、今回は大事を取って8500rpmに抑えてます」とはドライバーの弁。
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マニアなら、クルマそのものと同じくらい気になるのが、プロの扱う工具類。アストロプロダクツのツールチェストが使われていた。
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コースをハイスピードで走るほかの車両に対し、1950年代生まれの「ダットサン富士号/桜号」は、パイロンでできた8字コースをゆっくりと周回。
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「日産名車再生クラブ」が再生したレーシングカーは、ダッシュボードに当時のドライバーのサインをもらうのが通例。「ダットサン富士号」には、オーストラリア一周ラリーに参加した初代NISMO社長の難波靖治氏らのサインが。
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「富士号」と「桜号」についてはボディーを飾るイラストにも注目。試作部門のスタッフが、当時の「手書き感」を再現することを重視して描いたのだとか。
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快活に走る「富士号」に対し、「桜号」にトラブル発生。結局、桜号は復活せず、同乗走行では富士号が桜号の分まで頑張ることとなった。
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エンジンルームをのぞき込んで侃々諤々(かんかんがくがく)する「日産名車再生クラブ」のメンバー。
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「桜号」の車内をのぞき込んでみると、なぜかダッシュボードにカンガルーのぬいぐるみが。オーストラリア一周ラリーでカンガルーと激突したエピソードにあやかったものらしい。
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点検の時間が終わり、後半の同乗走行がスタート。こちらの「日産240RS」は「日産名車再生クラブ」が最初にレストアを手がけた車両だ。「NISMOさんからもらった当時の報告書や写真を参考に、レプリカというより『もう1台ワークスカーを送り出す』つもりで作りました」とのこと。
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ニスモフェスティバルなどのイベントでもおなじみの「プリンス・スカイラインGT」。当時、テスト車か練習用車両として使われていたと思(おぼ)しき車両をベースにレストアを施したものだ。
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最後はクラブのメンバーや、その家族とともに記念撮影。2014年は横浜の「こどもの国」が開園50周年を迎えるのに合わせ、当時、遊具として園に納車していた「ダットサン・ベビー」をレストアする予定なのだとか。完成したら、ぜひ実車を拝見したい。