第93回:ジャパンモビリティショー大総括!(その2) ―激論! 2025年の最優秀コンセプトカーはどれだ?―
2025.11.26 カーデザイン曼荼羅 拡大 |
盛況に終わった「ジャパンモビリティショー2025」を、デザイン視点で大総括! 会場を彩った百花繚乱(りょうらん)のショーカーのなかで、「カーデザイン曼荼羅」の面々が思うイチオシの一台はどれか? 各メンバーの“推しグルマ”が、机上で激突する!
(その1へ戻る)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
真っ二つの「カローラ コンセプト」評
webCGほった(以下、ほった):前回は「アクセスがスゴかった!」って理由で新型「日産エルグランド」をお題にしましたが、今度は、おのおのが注目した展示車を取り上げたいと思います。渕野さんと清水さんがジャパンモビリティショーで注目したのは、どのクルマでした?
清水草一(以下、清水):僕はトヨタの「カローラ コンセプト」だね。まさか次期カローラがあんな風になるなんて、思ってなかったなぁ。
渕野健太郎(以下、渕野):僕は、これまでのカローラとはまったく異なるものでしたので、どうもピンとこなかったですね。デザインはトヨタらしく凝った面白いものでしたが。
清水:確かに、あれはカローラだから衝撃的なんであって、カローラじゃなかったら意外性はないですけど。
渕野:シルエットがこれまでのカローラとは全然違って、「プリウス」寄りですよね。ちょっと背は高そうだけど。
清水:これ、背高いですかね? イメージ的にはさらに低く見えたな。まぁ、プリウスよりだいぶ全長が長そうなんで、それもあるのでしょうが。
渕野:全体的にプリウスに似たくさび形のシルエットなのですが、フードが低くサイドウィンドウの下端も前のほうは低くしてますよね。案外視界など機能を考えたデザインかもしれません。ただ攻撃的な印象が強く、カローラといわれると疑問を感じます。
清水:でも、おそらくこういう方向性でいくんでしょう。渕野さんは以前、現行のプリウスに対して「誰のためのクルマなのかわからない」っておっしゃってましたけど(参照)、これも似たような感じですか?
渕野:そうですね。少なくとも日本ではカローラのユーザーはシニア層もいますよね。誰にでも乗れることがカローラの大きな価値なのではと思います。
清水:プリウスに続いてカローラよ、お前もかと。
これが非SUV系モデルの生きる道?
渕野:トヨタグループのブースだと、レクサス、センチュリー、ダイハツと、それぞれの世界観がしっかりありましたよね。そんななかで、トヨタだけはちょっと、テーマをつかみかねたというか。
ほった:ちょっと寄せ集め感がありましたよね。そんななかでも、カローラ コンセプトに対する注目度は、残念ながら低かったような気が。
清水:もっと派手なのがいっぱいあったからね。「ランドクルーザー“FJ”」とか。でもこれを見ると、「トヨタは現行プリウスのデザインを、まったく失敗だったとはみてないんだな」って思ったんです。日本では販売ランキングで10位以下に落ちちゃってるけど、アメリカではセクシーなデザイン(笑)が好評で、先代より売れてるし。
ほった:先代が歌舞伎顔でメタメタだっただけじゃないですか? それと比べればってことでは。
渕野:清水さん的にはこのカローラのデザイン、どうなんですか?
清水:懐かしいカッコよさを感じました。昔はこういう、低くて長くてスポーティーなのがカッコいいっていう共通認識があったわけですよ。カローラでも、ちょっとだけそんな雰囲気のハッチバックがあったでしょ?
ほった:「FX」とかですかね?
清水:マツダにも「ファミリア アスティナ」とかあったよね。セダンでも「トヨタ・カローラ セレス/スプリンター マリノ」とかがいたりして。まぁとにかく、今回カローラ コンセプトを見て、「トヨタはSUV以外の乗用車系を、ぜんぶそっちに持っていくのかな」って思ったわけです。
渕野:ちょっとスペシャリティー方向みたいな。
清水:ですね。
ほった:しかし、プリウスっていう前例もあるし、あんまり目新しい感じはないですよね。最終的な完成形も、なんとなく想像がつくというか……。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
カーデザインも“マルチパスウェイ”で
渕野:個人的には、いかにもセダンらしいちっちゃなセダンを出してくれたほうが、楽しそうな気がしますけど。今は普通のセダンがなかなか厳しい状況で、そっち系のクルマが全然ないじゃないですか。
清水:いやー。それは大コケ間違いなしですから(笑)。僕も好きですよ、「トヨタ・ベルタ」とか最後の「日産ラティオ」とか。輸入車だと「フォルクスワーゲン・ヴェント」とか。
ほった:変態小型セダンですね(笑)。
清水:今見ると超マニアックだよね。
ほった:当時から十分マニアックでしたよ。いずれにせよ、非SUV系の乗用車って、こうして外野が騒いだところで販売の主役には戻れないし、スペシャリティーに振っていかないと、生き残れないってことなんでしょうね。
渕野:ただ、実用車だったカローラがこんな風にスタイリッシュになるっていうのは、ちょっと。デザイナーとしては、実用車だったら実用を突き詰めたもののほうが魅力的に感じるわけです。
清水:「セダンらしいちっちゃなセダン」ですね。でも、現状のカローラのモデル別国内販売台数を見ても、今ってSUVの「カローラ クロス」が半分で、セダンの、いわゆるただの「カローラ」は1割ぐらいになっちゃってるんですよ。
渕野:もう必要ないってことですかね?
ほった:正直そうだと思います。セダンだけじゃなく、実用的なハッチバックもワゴンも……。
清水:減るいっぽうだろうね。だからスペシャリティーカーにして、SUVとは逆のベクトルで勝負するんでしょう。
自分は今「プジョー508セダン」をカッコいいと思って乗っているわけですが、次期カローラはそれよりもっとスポーティーなフォルムになるかもしれない。それって攻めの姿勢だと思うんです。いつか「SUVは普通すぎてダサイ」ってなる時代がくるかもしれないし!
ほった:トヨタ得意のマルチパスウェイですね。見通しはわかりませんが。
清水:実車の視界は最悪だろうけどね!(笑) リアなんか空しか見えないだろうし。でも、ファッションは痩せ我慢だから!
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ダイハツよ、あなたはスゴかった
ほった:続いて、渕野さんはどれに注目しました?
渕野:ちょっと対象が広がっちゃいますけど、自分がいちばんいいと思ったのは、ダイハツの展示(その1、その2)なんですよ。もう完全にダイハツです。具体的には「ミゼットX」と「K-OPEN(コペン)」ですね。
ほった:(歓喜の踊り)いや~。今回、ダイハツは最高でしたよね!
清水:ほった君もダイハツがよかったの?
ほった:ワタシの推しはミゼットXですから。あれが今回のデザイン・オブ・ザ・ショーです。次点は「トヨタIMVオリジン」、二輪も含めてOKなら「スズキe-VanVan」!
渕野:ダイハツはお客さんの顔がすごくよく見えてるというか、「わかってデザインしてるなぁ」と思いました。コンセプトも含めて。
おのおののクルマを見ても、ミゼットXの内装とか、結構チャレンジングな素材選びや色使いをしてるんです。こういうシティーコミューター系の展示って、細かい部分はヤッツケなものも多かったと思うんですよ。でもダイハツは、しっかりつくり込んできた。コペンのほうも、前回のもの(参照)より断然いい。プロポーションは完全にFRで、しかもデザインはめちゃくちゃシンプル。いずれコペンを復活させるとして、どういう人が欲しがりそうかをすごくしっかりとらえている。どちらも、これだけたくさんショーカーを出しているのに手抜かりがなくて、スゴいなと思いました。
ダイハツの出展は、車両の造形だけじゃなくて、コンセプトメイクからCMF(カラー・マテリアル・フィニッシュ)まで含めて、「総合的なデザイン力が高い」と思ったんですよ。しかも、今回はクルマごとにムービーまでつくっていて、これは相当な労力を使っています。
清水:どっちも、実際の商品にしていただければいいんですけど。
渕野:それはありますね。前回のショーでもダイハツのコンセプトカーは魅力的だったんですが、実際に出てきたクルマは、旧来の価値観に縛られている面が強かった(参照)。ただ前回も今回も、ショーカーを見ていると、「デザイナーは本当はこういうのがやりたいんだな」っていうのが、すごくよくわかる。なおかつ、デザイナーとして見て「なるほど、これはいいな」と思えるんです。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ショーカーに課せられた使命
清水:ユーザー目線で見ると、コペンはこれで全面的に賛成ですけど、ミゼットXの商品化は絶対ムリでしょ。これを発売したら、たぶん軽トラより値段が高くなっちゃう。それでいて、積載容量は100分の1くらいかな?
ほった:昔、「ミゼットII」ってありましたけど。
渕野:よかったですよね、あれ。
清水:あれはよく出したよね、本当に。ダイハツの心意気はすごかった。でも、買わないよね普通。2人しか乗れなかったし。
ほった:MTモデルは1人乗りでしたよ。ちなみに今回のミゼットXは、一応、3人乗りです。
清水:えっ? 中身どうなってんの?
ほった:「マクラーレンF1」みたく運転席がセンターなんですよ。で、後ろに2個、補助席みたいなシートがついてる。
清水:そうなのね(笑)。そんなにムリしなくても……。
ほった:このクルマに関しては、ワタシはすげえ志が高いと思うんですよ。最近は、スズキも未来のベーシックカーのかたちを模索しているけど(参照)、これは、同じ課題に取り組むダイハツの、ひとつの回答なんじゃないかと。スズキは「次期型『アルト』はクルマづくりをイチから見直して、100kg軽量化する!」って息巻いてますが、切磋琢磨(せっさたくま)しているダイハツが、先んじてひとつのかたちを提示してみせた、みたいな。
渕野:それに、今回のイベントでは市販予定のあるクルマの存在が目立ちましたけど、ショーのためのショーカーは、それはそれとして残っていってほしいんですよ。市販化はされないとしても、ブランドのイメージ広告として存在価値がありますから。
ほった:「私たちはこんなことを考えているんですよ」って伝えるの、大事ですもんね。
渕野:そういうところにも期待したいですよね。市販車には、どこかにそのニュアンスが落とし込まれるだけでもOKなので。
清水:確かに、ミゼットXはメッチャカワイイので、量販モデルのどこかにイメージを落とし込んでもらいたいですね。
(その3へ続く)
(語り=渕野健太郎/文=清水草一/写真=ダイハツ工業、トヨタ自動車、webCG/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

渕野 健太郎
プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間にさまざまなクルマをデザインするなかで、クルマと社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
-
第131回:新型三菱パジェロ(後編) ―レトロブームには頼らない? 最新のデザイントレンドを追求した三菱の思惑― 2026.10.7 正式発表を間近に控え、ますますファンの間で話題が盛り上がっている新型「三菱パジェロ」。歴史的な旗艦の復活だというのに、三菱があえてレトロブームに乗らなかった理由とは? カーデザインの識者とともに、新型パジェロに見る最新のデザイントレンドを探る。
-
第130回:新型三菱パジェロ(前編) ―泥や雪より都会が似合う!? 高級&上質に進化した“関越キング”に思う― 2026.9.30 いよいよ登場した新型「三菱パジェロ」。復活を遂げたクロスカントリーSUVの雄だが、そのデザインは海や山やスキー場より、むしろ都会が似合うものに仕上がっていた!? 三菱が世に問う渾身の力作、その造形をカーデザインの識者とともに考察した。
-
第129回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(後編) ―プロポーションの進化と「駄作」の消失に見る、日本車の現在地― 2026.9.23 今や欧州と立場が逆転? 世界的に見ても高い水準にあるという日本のカーデザインだが、そこには本当に足りないものはないのか? 今後、さらなる発展を望むうえで必要なものとはなにか? カーデザインの識者と、日本の自動車デザインの“今”を考えた。
-
第128回:日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの(前編) ―厳しい制約が鍛えた独創の美と創造性― 2026.9.16 日本の地に自動車産業が芽生えて幾星霜。今やすっかり自動車大国となったわが国だが、ことカーデザインの質については、世界的に見てどれほどのレベルにあるのだろうか? 日本車の“美”がさらに進化していくうえで必要なものを、カーデザインの識者と考えた。
-
第127回:新型BMW X5(後編) ―迷走するBMW 結局アナタは“ノイエクラッセ”でなにがしたかったの?― 2026.9.2 その姿が明らかとなるや、賛否両論を巻き起こしている新型「BMW X5」。このクルマは既存のBMW製SUVとはなにがちがうのか? そもそもBMWは“ノイエクラッセ・デザイン”になにを託していたのか? カーデザインの識者と、迷走するBMWの明日を探った。
-
NEW
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く
2026.10.9デイリーコラムパナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。 -
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】
2026.10.8試乗記フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。 -
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る
2026.10.8デイリーコラムスバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。 -
“クルマづくりのプロ”の話をライブで配信! 「あの多田哲哉のクルマQ&A」公開収録のお知らせ
2026.10.7From Our Staff元トヨタの多田哲哉さんが、自動車に関するさまざまな疑問・質問に答える「あの多田哲哉のクルマQ&A」。その話がライブで聞けて質問もできる公開収録を、10月15日(木)の夜、19時半から実施します。 -
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか?
2026.10.7デイリーコラムいよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。 -
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】
2026.10.7試乗記新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
























