ドイツのレースの“いま”を見る ~ドイツツーリングカー選手権 第2戦オッシャースレーベン
2014.05.19 画像・写真2014年、日本国内の最高峰レースSUPER GT選手権は、ドイツのツーリングカー選手権(DTM)に倣った車両規則を採用し、争われている。では、DTMとはどんなレースなのか? そこでは、どんなマシンが戦っているのか? カテゴリー設立から30年を迎える“箱車のレース”の今を、写真とともに紹介する。
(文と写真=廣本 泉)

1984年にスタートしたDTMは30年目に突入。2014年も引き続き、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツの3メーカーが激しいバトルを展開中だ。今年に入って、エンジンを除く車両規則の基本部分が日本の最高峰レースSUPER GTと統一されたこともあり、今後の動向が注目されている。
-
1984年にスタートしたDTMは30年目に突入。2014年も引き続き、アウディ、BMW、メルセデス・ベンツの3メーカーが激しいバトルを展開中だ。今年に入って、エンジンを除く車両規則の基本部分が日本の最高峰レースSUPER GTと統一されたこともあり、今後の動向が注目されている。
-
1984年から1993年にかけてトップ争いを展開、復帰参戦を開始した2012年には「M3」を武器にブルーノ・スペングラーがチャンピオンを獲得したBMWは、今季、「M4」ベースのニューマシン「BMW M4 DTM」を投入。開幕戦のホッケンハイムで、マルコ・ウィットマンがデビューウインを獲得した。
-
「エアロダイナミクスが良くなっているから、コントロールしやすいよ」と語るのは、2011年の王者マーティン・トムチェク。その言葉通り、大胆なフォルムは「M4 DTM」の特徴と言えるだろう。
-
1984年から参戦し続け、2000年以降は6回もタイトルを手にしているアウディも、DTMの名門だ。昨年はニューマシン「アウディRS 5 DTM」を投入し、マイク・ロッケンフェラーがチャンピオンの座を獲得。2014年の開幕戦ホッケンハイムでもアウディ勢が2位、3位で表彰台を獲得している。
-
アウディのチーフエンジニア フローリアン・モドリンガーによれば「2014年モデルは、エアロダイナミクスや足まわりなど、ほぼ全ての領域でアップデートしている。昨年モデルよりもバランス性は高い」とのこと。その言葉通り、個性的な空力パーツが採用されている。
-
DTMの設立以来、常に最前線で活躍し、これまでに計9回のタイトルを獲得したメルセデス・ベンツだが、ここ数年は低迷。今季も主力モデル「DTMメルセデスAMG Cクーペ」に改良を施すものの、開幕戦ホッケンハイムの予選では、7台中5台がQ1で脱落し、決勝の最高位もパスカル・ウェーレインの11位止まりだった。
-
開幕戦の不振を理由に主力チーム「HWA AG」のテクニカルディレクターが引責辞任。メルセデスのディレクター、ウォルファン・シュタッリングが言うには「マシンは問題点だらけ。ひとつずつ解決しないと勝負にならない」とのことで、しばらくは苦戦を強いられることになりそうだ。
-
DTMでは4リッターのV8エンジンを採用。28mmのリストリクターで吸気制限が行われてはいるものの、約500psを発生する。コストを抑えるべく、エンジンは最低でも4レースの使用が義務づけられている。写真は「DTMメルセデスAMG Cクーペ」のエンジン。
-
DTMでは、オーバーテイクのチャンスを増やすべく、2013年からF1でもおなじみのDRS(ドラッグ・リダクション・システム=空気抵抗低減システム)を採用。リアウイングのフラップを調整することで、トップスピードを高められるようになっている。写真は「BMW M4 DTM」のリアウイング。
-
日本の人気シリーズSUPER GTと基本的に共通の車両規定で争われるDTM。エンジンをはじめ相違点はあるものの、カーボン製のモノコックなどには、GT500クラスの車両と同じパーツが採用されている。写真は「BMW M4 DTM」。
-
ブレーキディスクは、SUPER GTと同様にカーボン製。オフィシャルサプライヤーはAPレーシングで、全モデルともにAP製のブレーキシステムが採用されている。写真は「BMW M4 DTM」のもの。
-
タイヤはハンコックのワンメイクで争われている。モデル名は「ヴェンタス」で、サイズはフロントが300/680-18、リアが320/710-18を装着。昨年からオプションのソフトタイヤがラインナップされており、レース中の使用が義務化されている。
-
オプションのソフトタイヤを使用できるのは、最大でレース距離の50%以内。つまり、必ず1回はピットストップを行い、タイヤを交換しなければならない。ピットストップのタイミングがポジション争いを左右するわけだ。ちなみに、各チームは、どちらのタイヤでスタートするのかを予選終了後に発表する。
-
予選は、Q1からQ3までの3つのセッションで開催される。全23名を対象にしたセッション1、上位18名によるセッション2、そして上位8名で争われるセッション3で決勝のグリッドが決まる。第2戦のオッシャースレーベンでは、「アウディRS 5 DTM」を駆るミゲル・モリーナが最速タイムをマークしたものの、予選後の車検で規定違反が発覚。2番手タイムをマークしたBMWのマルコ・ウィットマンがポールポジションを獲得した。
-
第2戦オッシャースレーベンの決勝ではポールポジションのマルコ・ウィットマンが好スタートでトップをキープ。完全にレースを支配するかと思われたのだが、スタート直後に降り出した雨が激しさを増し、サバイバルレースが展開されることになった。
-
スタート直後から激しい雨にたたられ、数ラップでウエットコンディションに。3回に亘ってセーフティーカーが導入されるなど、波乱のレース展開となった。
-
「ウエットでのペースは良かった」と語るように、メルセデスのクリスチャン・ヴィエトリスが終盤でトップに浮上。巧みなレース展開と冷静な走りで混乱を抜け出し、自身初となる勝利を手にした。
-
メルセデス陣営のヴィエトリス(写真中央)が待望の初勝利。マイク・ロッケンフェラー(左)が2位、エドアード・モルタラ(右)が3位入賞を果たし、アウディ勢が表彰台を獲得した。なお、BMWの最上位は、アウガスト・ファルファスの5位にとどまった。
-
ドライバーやチーム関係者だけでなく、数多くのゲストをサポートする各チームのホスピタリティーは豪華だ。BMWの仮設ビルはテラスのある2階建てで、オシャレな雰囲気に仕上がっている。
-
アウディ、メルセデス・ベンツ、BMWにとって、DTMはまさに効果的なマーケティングツール。当然、各メーカーはパドックに主力モデルを展示するなどプロモーションを欠かさない。メルセデスはコンプリートカー「A45 AMG 4MATIC エディション1」を展示。来場者の注目を集めていた。
-
このレースのセーフティーカーは、2012年から公式モデルとしてマーシャルカーを務めてきた「メルセデス・ベンツC63 AMGクーペ」。しかし、BMWも「M4クーペ」のセーフティーカーを発表、今後はニューマシンのM4にスイッチされる予定だ。
-
イベント前のオフィシャルプログラムでは、コースの敷地内にある射撃場で、アウディのマティアス・エクストローム(写真中央)、メルセデスのガリー・パフェット(右)、BMWのマルコ・ウィットマン(左)によるクレー射撃対決が開催された。「シューティングは難しい」と語ったパフェットだけが、一度も当てることができずに終了。
-
DTMはドイツで人気の高いレース。土曜日のピットウオークはご覧のような人だかりだ。各チームのドライバーもサイン会に出席し、ファンサービスを行っていた。
-
パドックにはこんな顔出しパネルも設置。マシンのヘッドランプのところから顔を出すという、ちょっと変わったデザインだが、ギャラリーは楽しそうに記念撮影を行っていた。
-
DTMはサポートレースも充実している。写真の「ロータス・レディス・カップ」をはじめ、「フォルクスワーゲン・シロッコRカップ」、「ポルシェ・カレラカップ・ドイチェランド」などが開催されており、各クラスで激しいバトルが展開されていた。
-
同時開催のフォルクスワーゲン・シロッコRカップのマシンは、天然ガス仕様車だ。パドックに大量のポンベを持ち込み、ガスの補給を行っていた。