ニュルブルクリンク24時間 2015(後編)
2015.05.19 画像・写真2015年5月16-17日、ドイツの名門サーキットを舞台に開催された、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」。前編の車両紹介に続いては、今年の“長丁場”における見どころや、本戦に劣らず観客を湧かせたサポートレースの様子をリポートする。(文と写真=廣本 泉/text&photo=Izumi Hiromoto)
→ニュルブルクリンク24時間 2015(前編)はこちら

2015年3月に行われたニュルブルクリンク耐久シリーズ(VLN)第1戦では、「日産GT-R」がコースアウトし、観客を巻き込む事故が発生した。これにより一時はSP9クラスを対象にしたGT3マシンの走行が禁止されていたのだが、速度制限の区間を設けることで、全ての車両が出走できるようになった。その結果、今年のニュル24時間も、SP9クラスではGT3規定のマシンによるハイスピードバトルが展開されることとなった。
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2015年3月に行われたニュルブルクリンク耐久シリーズ(VLN)第1戦では、「日産GT-R」がコースアウトし、観客を巻き込む事故が発生した。これにより一時はSP9クラスを対象にしたGT3マシンの走行が禁止されていたのだが、速度制限の区間を設けることで、全ての車両が出走できるようになった。その結果、今年のニュル24時間も、SP9クラスではGT3規定のマシンによるハイスピードバトルが展開されることとなった。
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ワークスチームのGT3マシンから、プライベーターの小排気量コンパクトカーまで、さまざまな車両が走行するニュル24時間レースでは、バックマーカーへの対応がリザルトを左右する。遅いクルマはいかにタイムを落とさずに速いクルマにラインを譲るか、速いクルマはいかに接触を避けながら遅いクルマをパスするか――それが、ニュルの戦いで重要になる。
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速度レンジの異なる車両が150台以上も参加するだけに、ニュルには接触がつきもの。スタート直後から、アクシデントが続出するサバイバルレースが展開された。多くのマシンが、応急処置を施されつつ過酷な24時間にチャレンジした。
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時間がたつほどに、リタイアする車両が目に付くようになってくる。各コーナーポストの待避所には、クラッシュやマシントラブルでストップしたマシンが、まるでスクラップ場の光景のごとく運び込まれてくる。
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24時間レースでは、ナイトセッションも勝負の決め手となる。このニュル24時間でも毎年、多数のドラマが生まれる。写真の黄色い光の帯は、マシンが照らすイエローランプ。バックマーカーとの接触を回避すべく、今大会よりGT3を中心とするSP9クラスの車両は、ヘッドランプの配色がイエローに統一されている。
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ピットワークも重要だ。「アウディR8 LMS」は車重が重いために、ブレーキパッドやローターを頻繁に交換する必要があるのだが、優勝した28号車のメカニックたちは、わずか2分で交換作業を終わらせる。
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今年も数多くのギャラリーがニュルブルクリンクに来場した。レース前のグリッドはご覧のように、足の踏み場もない状態。皆が、年に一度の祭典を満喫していた。
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“ギャラリーコーナー”では、多くの観客がキャンプをしながらレースを満喫。テントはもちろん、中には仮設の小屋を建設するベテランまで登場する。彼らはテレビや冷蔵庫、シャワーなどを持ち込み、長丁場のレースを快適に楽しんでいるのだ。
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1996年から1999年にかけて、世界ラリー選手権(WRC)で4連覇を果たしたトミ・マキネン(写真右)も来場。スバルのワークスドライバーとして活躍した彼は、STIの辰己英治総監督(同左)を表敬訪問していた。
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かつてニュル24時間レースは「偉大なる草レース」などと呼ばれていたが、今では世界中から数多くの自動車メーカーが参加、ワークスチームや有力なカスタマーチームを投入している。地元ドイツの御三家であるBMW、メルセデス・ベンツ、アウディはマーケティングやプロモーションにも積極的で、世界耐久選手権(WEC)と同様にパドックに巨大なホスピタリティーを建設し、ゲストのサポートを実施している。
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ニュル24時間ではタイヤメーカー間の“競争”も展開される。チーム数も、タイヤの使用本数も多いため、各タイヤメーカーのサービスベースは、まるで基地のような巨大スペースとなっている。
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同時開催のヒストリックカーレース「24hクラシック」は今年も健在だ。オーナーたちが自慢の愛車で、3時間の耐久レースにチャレンジしていた。
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ツーリングカーレースの最高峰シリーズ、世界ツーリングカー選手権(WTCC)も同時開催された。3ラップのレースを2ヒート争う設定で、各レースともにスタート直後から激しいバトルが展開された。各メーカーともに、参戦車両は1.6リッターターボエンジンを搭載したFFモデルだが、そのタイムは8分40秒台。STIの「スバルWRX STI」をもしのぐ実力を有している。
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WTCCで初開催となるニュルブルクリンク戦では、昨年のチャンピオンであるシトロエンが圧倒的なスピードを披露。ポールポジションを獲得した昨年の王者、ホセ・マリア・ロペスが「Cエリーゼ」を武器に第1レースで今季4勝目を手にしたほか、チームメイトのイヴァン・ミュラーが第2レースで今季3勝目を獲得した。
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前戦のハンガリー大会から、マイナーチェンジに合わせて最新仕様の「シビック」を投入しているホンダは苦戦。第2レースでポールポジションからスタートしたティアゴ・モンテイロがなんとか3位で表彰台を獲得したものの、スピードが求められる予選および第1レースでは大敗を喫するなど、課題を残した。
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「クルーズ」を駆るシボレーのカスタマードライバーも苦しいレース展開を強いられている。今大会からの新エンジン導入が功を奏し、ヒューゴ・バレンテが予選で2位を獲得したものの、第1レースではクラッシュを喫しリタイアに終わった。
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昨年までの「グランタ」から「ベスタ」へと主力モデルをスイッチしたラーダ。空力性能は向上したものの、まだまだパフォーマンス不足は否めず。ロブ・ハフによる第2レースでの7位が今大会のベストリザルトとなった。
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シトロエンで活躍する元WRC王者のセバスチャン・ローブにとっても、ニュルブルクリンクは特別なサーキットになっているようだ。聞けば、「ニュルブルクリンク耐久シリーズで日産が飛び出したコーナーが、チャレンジング」とのこと。ちなみにローブは「Cエリーゼ」を駆り、第1レースで2位入賞を果たした。
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世界ツーリングカー選手権(WTCC)に参戦するマニュファクチャラーも、会場でのマーケティングおよびプロモーションに余念がない。ホンダ、シトロエンともにWTCCのレーシングカーとベースの市販車モデルを展示。巨大なモーターホームでゲストにケータリングサービスを行った。