クロスカントリーラリー「バハ・ポルタレグレ500」参戦マシン
2015.10.27 画像・写真2015年10月22-24日、ポルトガル東部のポルタレグレ県で、クロスカントリーラリー「バハ・ポルタレグレ500」が開催された。今年で29回目となるこのラリーは、ダカールラリーへの参戦車両も集う、極めて過酷なもの。その代表的な参戦車両や走行シーンを、写真で紹介する。(文と写真=廣本 泉)

日本では、ややマイナーなクロスカントリーラリーも、海外では人気のモータースポーツのひとつ。かつて“砂漠のF1”とも称された伝統のダカールラリーを筆頭に、世界各国で国際イベントが開かれている。今回紹介するのは、FIAのシリーズ戦「クロスカントリーラリー・ワールドカップ」の第9戦となる「バハ・ポルタレグレ500」。2015年10月22日から24日にかけて開催され、92台の四輪を筆頭に、二輪、バギーなど計312台が参戦した。写真は、地元チームが投入したオリジナルラリー車両の「ヴァンゲスト プロトVGJH12」。
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日本では、ややマイナーなクロスカントリーラリーも、海外では人気のモータースポーツのひとつ。かつて“砂漠のF1”とも称された伝統のダカールラリーを筆頭に、世界各国で国際イベントが開かれている。今回紹介するのは、FIAのシリーズ戦「クロスカントリーラリー・ワールドカップ」の第9戦となる「バハ・ポルタレグレ500」。2015年10月22日から24日にかけて開催され、92台の四輪を筆頭に、二輪、バギーなど計312台が参戦した。写真は、地元チームが投入したオリジナルラリー車両の「ヴァンゲスト プロトVGJH12」。
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クロスカントリーラリー競技といえば、ダカールラリーのような砂丘エリアのステージがイメージされがちだが、ヨーロッパを舞台とするラリーレイドは、丘陵地や山岳エリアで開催される。それゆえにステージの雰囲気は、世界ラリー選手権(WRC)やヨーロッパラリー選手権(ERC)などのスプリントラリーに近い。バハ・ポルタレグレ500も、ステージ沿いにはWRCと同様に数多くのギャラリーが詰めかけていた。写真は2012年から2015年にかけてダカールラリーの4連覇を果たしたMINIのワークスマシン「MINI ALL4レーシング」で、今大会でも総合2位を獲得した。
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クロスカントリーラリー競技の特徴としては、豊富な車種ラインナップが挙げられるだろう。特に改造範囲の広いT1クラスには、大胆なモディファイが施されたプロトタイプカーが集結。SUVをベースにしたマシンから、コンストラクターが開発したオリジナルモデルまで多彩な顔ぶれとなっている。駆動方式は、4WDだけでなく2WDもあり。エンジンも、ガソリン、ディーゼル、ターボ、自然吸気と、さまざまな組み合わせが見られる。ラリーでは、排気量に応じてリストリクターのサイズを調整するほか、最低重量を設定するなどの性能調整が実施される。自由度の高いレギュレーションを採用していることから、ニュルブルクリンク24時間レースのようにさまざまな車両が参戦可能なのだ。写真は国内部門に参戦した「UMMアルター ターボ」で、同部門12位で完走している。
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世界ラリー選手権(WRC)のステージに近い雰囲気ながら、クロスカントリーラリーの路面コンディションは過酷だ。同じグラベルながら、グレーダーで整備されたWRCと違って、バハ・ポルタレグレのステージは凹凸が激しく、ウオータースプラッシュの川底もかなり深い。しかも、スーパーSSとして設定された約5kmのSS1を除いて、レグ1のSS2が約83km、レグ2のSS3が約144km、SS4が約200kmとコースも長くなっている。そのため、絶対的なスピードはWRCより低いものの、クロスカントリーラリーではスペクタクルなアクションが見られる。アドベンチャー要素が高い競技で、常に脱落者が続出するサバイバルラリーが展開されている。写真はオペルの小型SUV「モッカ」をベースに開発されたディーゼルエンジン搭載の「オペル・モッカ プロト」。
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地元チームが投入した「メルセデス・ベンツ プロト」。エクステリアはコンパクトSUV「GLAクラス」のイメージを踏襲するものの、パイプフレームの競技専用モデルで、全日本ダートトライアル選手権のDクラス車両に近い作りだ。クロスカントリーラリーの参戦マシンは、自動車メーカーのワークスチームのほか、レーシングチームやチューニングメーカーが製作したマシンを含め千差万別。その多くは、川渡り対策としてシュノーケルを装備している。
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T1クラス用のプロトタイプカーは、レーシングマシンのような仕上がりだ。パイプフレームに独自のエンジンを搭載。写真はMINIのワークスモデル「ALL4レーシング」。もともとBMWのラリーレイドモデル「X3 CC」をベースに開発されているだけに、エンジンもBMW製の3リッターディーゼルエンジンが搭載されている。エンジンの搭載位置はかなり低く、フロントミドシップのレイアウトで、車体中央寄りにマウントされている。クーリング対策としてラジエーターも大型化。世界ラリー選手権(WRC)の最高峰モデル、WRカーよりも改造範囲は広範囲に及んでおり、まさにモンスターマシンと呼ぶにふさわしい仕上がりとなっている。
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こちらは「MINI ALL4レーシング」の足まわり。外装パネルの材質変更により、軽量化が図られているものの、SUVベースのマシンで車両重量が重いことから、ダンパーにはツインチューブシステムが採用されている。これにより悪路走破性が向上。サスペンションストロークを延長すべく、ダンパーが斜めにオフセットされていることも、クロスカントリーラリー車両の特徴といえるだろう。ちなみにMINI ALL4レーシングのダンパーはライガー製で、ブレーキにはAPレーシングのシステムが採用されている。
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地元チームが「BMW 1シリーズ プロト」を投入。こちらもディーゼルエンジンを搭載したモデルだ。ライバル車両と比べると軽量でコンパクトながら、マシンのパフォーマンス不足は否めず、リタイアに終わっている。
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クロスカントリーラリーにはSUVベースのマシンのほか、T3のバギーも四輪部門にエントリーしている。こちらは同カテゴリーの名物「ポラリスRZR1000」。軽量でシンプルなマシンとなっていることから、排気量は1リッターにすぎないものの、悪路でのパフォーマンスは高い。
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ドイツのチームが投入したオリジナルマシン「ヘラーターV8ダカール」のバックショット。T1クラス用のプロトタイプカーでは、リアハッチにカウルをつけずにスペアタイヤをむき出しのまま搭載する車両も多い。2WDモデルで、ガソリンエンジンが搭載されている。
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クロスカントリーラリーの最前線では、日本のSUVやピックアップトラックも活躍している。こちらは地元チームが投入した「トヨタ・ハイラックス オーバードライブ」で、ガソリンエンジンを武器に素晴らしいパフォーマンスを披露。レグ1を制するとそのままポジションをキープし、バハ・ポルタレグレ500で総合優勝を獲得した。
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ダカールラリーでこれまで12度の総合優勝を獲得している三菱も、2009年のダカールラリー以来、6年ぶりにクロスカントリーラリーに復帰。ワークスチームが「アウトランダーPHEV」を投入した。同車はエンジンと電気モーターを併用するハイブリッドモデルで、抜群のトラクション性能を披露。今大会は国内部門のTEクラスに参戦しており、国内部門の2位でレグ1をフィニッシュした。発電用ヒューズのトラブルによりレグ2でポジションを落としたものの、チームの素早いサービスワークでラリーに復帰し、国内部門19位で完走を果たした。
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三菱ワークスチームで「アウトランダーPHEV」のステアリングを握ったのは、2度にわたってダカールラリーを制した増岡 浩だ。レグ1を国内部門3位でフィニッシュし、「久しぶりのラリーだったけど気持ちよく走れた。バハ・ポルタレグレはハイスピードのラリーだけれど、全てモーターだけで走れた。エンジンと違ってモーターはどこからでもマックストルクが出るのでラリーに向いている」などと語った。レグ2ではポジションを落としたものの、「(ハイブリッドではない)ガソリンエンジン搭載車やディーゼルエンジン搭載車と比べて、遜色のない走りをすることができた。来年はこのモデルをさらに改良して同シリーズに3戦ぐらいスポット参戦したい」とのこと。今後の動向に注目したい。
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三菱のワークスマシンとして2009年のダカールラリーに参戦した「レーシングランサー」も登場した。このマシンは、地元チームがBMW製のディーゼルエンジンを搭載した“改良モデル”なのだが、そのパフォーマンスは高く、レグ1から安定した走りを披露。総合2位でフィニッシュした。
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「トヨタ・ハイラックス」や「三菱RVR」をベースに開発されたASXレーシングと並んで、「マツダCX-5」もクロスカントリーラリーではポピュラーな日本車だ。写真の「CX-5 プロト」は、ディーゼルエンジンを搭載したプロトタイプカーで、コンパクトでありながら抜群のパフォーマンスを披露した。
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四輪部門には、ピックアップトラックをベースに開発されたマシンもエントリー。写真は「フォルクスワーゲン・アマロック」で、ディーゼルエンジンを搭載したT1クラス用のプロトタイプカーだ。大きなボディーであるものの、意外にもクイックなコーナリングを見せていた。
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クロスカントリーラリーのステージは過酷なラフロードとなっていることから、マシントラブルやコースアウトで脱落するマシンが後を絶たない。とはいえ、大きな溝でスタックした場合でも、運がよければギャラリーたちが脱出をサポートしてくれる。世界ラリー選手権(WRC)と違ってラリーレイドはデッドゾーンが少なく、ギャラリーも間近で観戦できることから、写真のように“古きよき時代のラリーシーン”が見られるのだ。
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スタートはスプリントラリーと同様に1分間隔で行われるものの、ステージの距離が長いため、速いクルマが遅いクルマをオーバーテイクするというシーンも多く見られる。三菱の増岡選手いわく、「何台も抜いたけれど、道幅が全体的に狭いので大変だった」とのことだ。
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車検終了後のパルクフェルメの様子。クロスカントリーラリーでは四輪部門のほか、バギー部門、二輪部門も設定されており、車両の保管には広大なスペースが必要だ。全部門とも競技は同じステージを使用するものの、四輪と二輪では平均速度が異なることから、時間を大きくずらして行われる。
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世界ラリー選手権(WRC)などのスプリントラリーと違って、クロスカントリーラリーはレッキ(recce:競技前の試走)もなく、エントラントはロードブックのみで競技にチャレンジする。とはいうものの、スーパーSSでは例外的にレッキが行われる。使用する車両はバイクもしくは自転車で、三菱の増岡選手(写真)もスクーターを使って臨んでいた。