スバル・インプレッサ15S(FF/4AT)【ブリーフテスト】
スバル・インプレッサ15S(FF/4AT) 2007.08.09 試乗記 ……194万7750円総合評価……★★★
フラット4の1.5リッターエンジンを搭載する新型「インプレッサ 15S」。クルマの素性がわかる、ベーシックモデルでその実力を試す。
新しい発見の予感!?
あまりの変貌ぶりに、熱心なファンからは「これはインプレッサじゃない!」という声が聞かれる新型「スバル・インプレッサ」。デザインひとつとっても、新型からバッジを外したら、モデルどころからメーカーすら言い当てられないのではないか、と思えるほど大変身を遂げているのだから、戸惑うのも無理はないし、さびしい気持ちもよくわかる。そんな反応は承知のうえで新型を世に送り出したスバルの判断が果たして吉と出るか凶と出るか、今後の販売を見守りたいところだ。
一方、今回のフルモデルチェンジで誕生したインプレッサをまったく新しいクルマと割り切って眺めると、新型のデザインはとても爽やかで、なにか新しい発見を予感させるし、“スバル=4WD”“インプレッサ=スポーツ”のイメージと対極にあるこのベーシックなFFモデルでも基本性能の高さを感じられた。ただ、ベーシックモデルだからといって、運転や安全の基本に関わる装備をオプション扱いするのは疑問。ぜひ標準化を願う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年6月5日に7年ぶりのフルモデルチェンジを果たした「スバル・インプレッサ」。3代目の新型は、日本では5ドアハッチバックのみ。
先代の「インプレッサ・スポーツワゴン(1.5R)」に比べて全長が50mm短くなる一方、ホイールベースは95mm延長された。「ボディサイズをむやみに拡大することなく、十分な室内空間を確保した」と主張する。車幅は45mmワイドになり、「3ナンバー」化。高さは5mmアップした。
ラインナップは、1.5リッター(110ps/14.7kgm)の「15S」と2リッターNA(140ps/19.0kgm)の「20S」、同ターボ(250ps/34.0kgm)の「S-GT」3種類。
組み合わされるトランスミッションは「20S」が4段ATのみで、ほかは5段MTと4段ATが選べる。駆動方式は、基本的に4WD。「15S」のみFFも用意される。
(グレード概要)
テスト車「15S」は、リヤディスクブレーキやリヤシートセンターアームレスト、フットライトなどが省かれるベーシックグレード。15インチタイヤと14インチのフロントベンチレーテッド・ディスクブレーキを装着する。
駆動方式は、ビスカスLSD付センターデフ方式4WDのほか唯一FFモデルが用意される。それぞれに4段AT/5段MTが組み合わされる。
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【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
センタークラスターを中心に鳥が羽を広げたようなデザインが特徴のインパネ。インテリアカラーはブラックのモノトーンと、ブラック/アイボリーのツートーンの2タイプから選べ、試乗車は後者。写真うつりはいいのだが、実物を目の当たりにすると、プラスチックのトリム類の質感はあまり高いとはいえず、一面プラスチックのドア内側も安っぽい感じは否めない。
メーターは中央に大きな速度計が収まる自然吸気モデル専用のタイプで、シンプルで見やすいのがいい。外気温、平均燃費、時刻はセンタークラスター上部の別の場所に表示されるが、こちらも見やすい。ただ「インフォメーションセンター」を名乗るなら、他の情報、たとえば航続距離や瞬間燃費、平均速度なども表示できるようにしてほしい。
(前席)……★★★
肌触りのいい優しい素材で包まれたシート。座ってみると、流行の低反発枕のようなじわっと沈む感触で、面でドライバーの背中や腰、尻を支えてくれるのでとても快適。長時間のドライブも苦にならない。
ステアリングホイールとATのセレクターレバーにはインテリアにあわせたベージュの本革が巻かれていている。ベーシックモデルにしては豪華と思ったら、これらはパッケージオプションの一部だった。快適なドライビングポジションを得るのに重宝するチルト&テレスコピックステアリングが装着されているが、テレスコピックも、別のパッケージオプションの一部というのには驚いた。本革ステアリングなどは仕方ないとしても、せめてテレスコピックステアリングくらいは標準装着としてほしいものだ。
(後席)……★★★
前席同様、低反発タイプのウレタンを用いた後席は心地よい座り心地。前席下のスペースに爪先を入れると、足元には十分なスペースが確保され、足が前に出せるので自然な姿勢と取れる。ルーフラインが高いことから頭上のスペースは広く、見た目にも開放感がある。中央席はバックレスト部分がソフトで、座らされても苦にならないのだが、ヘッドレストと3点式シートベルトはオプションで、そのうえほぼフル装備の状態でないと選べないのは考えものだ。
(荷室)……★★★
ナンバー照明横にあるスイッチを押してロックを解除しテールゲートを開くと、このサイズのハッチバックとしては奥行き、幅とも十分な荷室が広がっている。6:4分割可倒式リヤシートを倒せば、荷室を拡大することも可能で、フロアがフラットとなるのはうれしいが、そうするためにフロアをやや高い位置に設定したフシもあり、天地の高さが足りない印象を受けた。ハッチバックやワゴンに欠かせないトノカバーが標準装着されないのは不満。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★
FFモデルといっても、スバル伝統の水平対向エンジンが縦置きされるのは、このインプレッサ15Sでも同じ。1498ccロングストロークユニットのアウトプットは、110ps、14.7kgmと決して余裕があるわけではないが、意外に出足は軽快だ。ところが2000rpmを越えたあたりで加速が鈍り、2500rpmを過ぎると再び盛り返すという印象。常用する回転域だけにこの味付けはやや扱いにくく、やむをえずアクセルペダルを大きく踏み込むことになってしまう。
一方、3500rpmを越えると、水平対向エンジンらしい乾いたサウンドを控えめに発しながら、トルクは盛り上がりを見せる。力強いというわけではないが、必要十分な性能といえる。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ベーシックモデルらしく、マイルドな乗り心地が特徴の15Sの足まわり。195/65R15サイズのタイヤが組み合わされることもあって、一般道では路面の凹凸を上手に丸め込んでなかなか快適だ。やや大きめの段差を越えるときなどはショックを遮断しきれないが、スピードが上がると気にならなくなる。高速道路でも比較的落ち着いた動きを見せ、法定速度で走るかぎりとくに不満は感じなかった。
意外だったのは、インプレッサ15Sの軽快さ。比較的クイックなレシオのステアリングギアが与えられたこともあって、ハンドル操作に対しスッと向きを変えるところに、インプレッサらしさを見た。ワインディングロードでは積極的にコーナーリングを楽しむタイプではないが、リヤに落ち着きが増したぶん安心して走ることができる。
(写真=菊池貴之、webCG)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年7月7日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:3584km
タイヤ:(前)195/65R15 91H(後)同じ(いずれも、YOKOHAMA ASPEC)
オプション装備:GパッケージI+CパッケージI+HIDプロジェクターロービームランプ(43万5750円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(7):山岳路(1)
テスト距離:405.0km
使用燃料:48.5リッター
参考燃費:8.35km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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