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第330回:厳しいと思ったけど、実は味方だらけ?
ダッジ・キャリバー&ナイトロ試乗

2007.08.06 小沢コージの勢いまかせ! 小沢 コージ
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第330回:厳しいと思ったけど、実は味方だらけ?ダッジ・キャリバー&ナイトロ試乗

サジ加減が難しい

つ、ついに乗ってまいりましたっ! 日本に上陸した伝説のアメリカンカーブランド、ダッジ!
古くは1960〜70年代の「チャージャー」や「チャレンジャー」みたいなマッスルカーを世に送り出し、最近はピックアップトラックコンセプトカー「M80」みたいな、いかにも強くてタフでイケてるアメリカンなクルマを作ってきた同ブランド。しかし、不思議というか、当然というか欧州も含めた海外進出は、ここ30年ほどしてこなかった。

あまりに濃いアメリカ度を誇ってきただけに、逆に輸出しようってならなかったみたいね。
いわば“クサヤの干物”や“イカの沖漬け”をヨーロッパに輸出しないようなもんか。もしくはこれまではアメリカ国内で売るだけで十分だったのかもしれないけど。

ところがどっこいクライスラーは先日ダイムラー・ベンツとの別離を決めただけでなく、以前からの日本車の台頭もあって売り上げが厳しくなり、なにがなんでもクルマを売らなきゃいけないって感じになってきた。
そこで伝家の宝刀!? というか門外不出のアメリカン土着ブランドの世界展開を決めたわけで、その第一弾として日本に輸入されたのが今回乗ったハッチバックの「キャリバー」とSUVの「ナイトロ」、今後出てくるミニバンの「アベンジャー」とスポーツカーの「チャージャー」ってわけなのであーる。

このうちのチャージャーを除く3車種は日本を始め、ヨーロッパなどでも売れるべくわざわざ作られた世界戦略車。具体的にはボディや排気量を小さくして、市場にあわせ、排気量を小さくしたモデルなわけで、キモはそのサジ加減ということになる。世界市場を考えすぎてアメリカ度を落とし過ぎるとつまらなくなるし、全然落とさないままだと使いづらいという、非常に難しいサジ加減だ。

ナイトロは大丈夫そうだけど、キャリバーは……

ってなわけでまずはSUVのネギトロ!? じゃなかったナイトロSEに乗ったわけだけど、コイツは見た目からして大丈夫でしょう。どこからどう見てもアメリカン! なのだ。
わかりやす過ぎる真四角ボディに伝統の十字グリル、マッチョなフェンダー。サイズも全長こそ4.58mと国際基準だけど、全幅1.86m、全高1.785mとなかなかいいセン付いてる。インテリアはプラスティッキーだし、足元は太っといセンタートンネルのおかげで狭め。乗り心地も揺さぶられ感が強いけど、それなりにゆったり快適だし、このデザインがあれば“イッツ、ソー アメリカン!”ってなことになる。たぶんね。

それより難しそうなのはキャリバーだ。値段は263万5500円から294万円と手頃なんだけど、サイズまで全長4.42m、全幅1.8mと手頃。っていうかハッチバックとしては大きめだとは思うけど、なによりデザインがわかりにくい。
たしかに今までないハッチバックフォルムで、角張った十字グリルといい、デコボコ盛り上がったフェンダーといい、ワイルドはワイルド。だけどナイトロに比べて“アメリカ”には直結しない。どっちかっていうと“ガンダム”って感じ。いったいなんなんでしょうこのクルマ?

インテリアもやはりプラスティッキーで、正直日本車と比べるともの足りない。乗り心地もナイトロよりはいいけど、圧倒的にスムーズってほどじゃない。つまりこれぞ! というものがないのだ。


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「ナイトロ」のインパネ
「ナイトロ」のインパネ 拡大
こっちはちょっと難しそうな「キャリバー」。
こっちはちょっと難しそうな「キャリバー」。 拡大

コカコーラ、ナイキ、そしてハリウッドがあるじゃん!

でも試乗会からの帰り道、冷静に考えてみたら悪くない気もしてきた。というのもどう考えてもマッチョはマッチョだし、いわばラップやヒップホップを愛するヤングな人たちがターゲットにしないとも限らない。逆にほかの手頃な日本車、例えば「トヨタ・ヴィッツ」や「ホンダ・フィット」、あるいは「bB」や「モビリオ・スパイク」なんかと比べたらよっぽど本物感がある。

だいたい今の日本って冷静に考えればこれだけアメリカ文化が入ってるにもかかわらず、クルマに関しては驚くほどアメリカナイズドされてない。コカコーラ、マクドナルド、ナイキ、リーバイス……クライスラー日本法人の副社長も言ってたけど、それらと同じように「クルマもダッジ!」ってなっても全然おかしくないのだ。

そもそも外来文化というのは食、服、音楽、スポーツなどが渾然一体になって浸透するもので、聞けばアメリカがハリウッド映画を世界で浸透させたのは、その後、世界中にアメリカ製品を売りたいがためのプロパガンダってハナシがある。実際、それはそのとおりで、おそらく俺たちがマクドナルドやマッキントッシュ、ナイキをありがたがるのはハリウッドやポップス、野球の影響が深い。そう考えると、リアルアメリカンなダッジが売れないほうがウソなのだ。ホントの“リアルアメリカン”であれば、ね。

というわけで可能性はありそうなダッジ。後はいかに映画や音楽と繋げ、アメリカの匂いが出せるかだよなぁ。ホント、クルマってオモロ難しいよねぇ。

(文と写真=小沢コージ)


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「キャリバー」のリアビュー
「キャリバー」のリアビュー 拡大

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小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』

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