トヨタ・アリオンA18“Sパッケージ”(FF/CVT)【ブリーフテスト】
トヨタ・アリオンA18“Sパッケージ”(FF/CVT) 2007.08.01 試乗記 ……248万9550円総合評価……★★★★
2代目でフロントマスクが差別化されたトヨタ「プレミオ/アリオン」。スポーティを謳うアリオンの上級モデルに試乗した。
これで十分
いまどきの子供たちに“ファミリーカー”を描かせると、そのほとんどが1ボックスか2ボックス、つまり、ミニバンやハッチバック、あるいはステーションワゴンの絵になるそうだ。
私が子供だった昭和40年代、ファミリーカーといえば3ボックスのセダンだったのとは大違い。だいたい1ボックスやバンは“お仕事のクルマ”だった。そんなセダンで育った世代がこぞってセダン離れしているくらいだから、いまの子供たちが大人になるころには、セダンがお仕事のクルマになっているかもしれない。
もちろん、いまの日本では、市場でセダンの存在感はまだあるし、セダンならでは魅力がたくさんあるのも事実。しかし、他のタイプでその使い勝手の良さを知ってしまうと、なかなかセダンに後戻りできないのもよくわかる。
そんななか、セダンをもっと使いやすく、という気持ちが感じられるのがこの「アリオン」や兄弟車の「プレミオ」。存在こそ地味だけれど、正常進化していまや2代目になり、ファミリーセダン最後の砦となるべく奮闘中。
5ナンバーサイズにもかかわらず室内は広く、エンジンもこれで十分と思わせる性能をもっている。これでもう少し走りの部分に高級感があると申しぶんないのだが、全体的には良心的なセダンに仕上がっていると思う。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2007年6月4日に発売された2代目プレミオ/アリオン。初代のデビューは2001年12月だから、6年半ぶりのフルモデルチェンジとなる。
コロナ/カリーナの後継モデルとして登場した両者だが、どちらからも“昔の名前”が落とされ、サブネームが名実ともに車名となった。
2代目も、これまで通り「5ナンバーサイズのセダン」というドメスティックな要求を満たした国内専用モデル。先代のシャシーを継承しつつ、新しい内外装が与えられた。オーソドクスな「プレミオ」、やや若やいだ「アリオン」といった違いを旧型以上に明確にした外観をもつ。ただし、内装、機関面は共通。
1.5もしくは1.8の4気筒にCVTを組み合わせる。FFを基本に、後者には4WDも用意される。追って2リッターエンジンがラインナップされる予定だ。
(グレード概要)
アリオンのグレード構成は、A15(FF)、A18(FF/4WD)。テスト車A18“Sパッケージ”は、A18の装備に加え、ディスチャージヘッドランプや、フロント/リアスポイラー、本革巻きステアリングホイール&シフトノブ、スポーツオプティトロンメーターが標準装備され、195/55R16タイヤをはくスポーティなモデル。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
黒を基調としたインテリアは、アクセントの木目調パネルやドアのメタリックパネルが目立ちすぎるきらいがあるものの、ダッシュボードのデザインなどは意外と若々しく、素材の質感も期待を裏切らない。
メーターはトヨタ自慢の“オプティトロンメーター”。昼夜を問わず、オレンジ色の文字を浮かび上がらせるが、回転計も速度計も文字(数字)が大きいのはユニバーサルデザインの考え方からだろう。メーターのデザインがシンプルなこともあって、とても見やすい。
セダンでは最近減っているリアワイパーが標準で装着されるのは、個人的には大歓迎で、実際、雨のなかのドライブでは重宝した。
(前席)……★★★
フロントシートはスライド、リクライニング、上下調整ともに手動式。チルト&テレスコピック調整もまた手動になるが、シートポジション合わせの自由度が高いのはうれしい。シート自体は、クッション、バックレストともに沈み込みが少なく、面で身体を支えてくれるのが心地いい。
試乗車の“Sパッケージ”では、ステアリングホイールやセレクターレバーが本革巻きになる。ステアリングスイッチはメーカーオプションのHDDナビゲーションとセットオプションで、手元で空調やオーディオの操作ができるのが便利なうえ、スイッチまわりの質感が高いのもいい。
運転席付近に小物の収納スペースが多数あるのも便利である。
(後席)……★★★★
フロントシート同様、沈み込みの少ないクッションに加えて、適度にラウンドしたバックレストが背中を包み込むように支えてくれる後席。バックレストのレバーで簡単にリクラインできるのも魅力である。
足元の広さは十分すぎるほどで、足の長さが人並みの私でも、足を組むことができた。頭上のスペースには余裕があり、比較的後ろまで伸びたルーフのおかげで、晴れた日に後頭部が直射日光に晒されることは少ないはずだ。
中央席はバックレストがやや硬めで、長時間座ることはお勧めしないが、ヘッドレストと3点式シートベルトが用意されるのはさすがである。
(荷室)……★★★★
奥行100cmほどのトランクは、高さ、幅ともに十分なサイズで、外から想像するより広いスペースが確保されている。リヤシートを倒せばさらに荷室を広げることも可能。操作は、リヤシートはクッションを起こし、バックレストを倒す“ダブルフォールディング”方式。その際、ヘッドレストを外さなくてもバックレストが倒せるのは便利だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
最高出力136ps、最大トルク17.8kgmの実力を持つ1.8リッター直4エンジンは、CVTとの組み合わせで低回転からストレスを感じさせない加速を見せてくれる。スッと走り出し、気づいたら目指すスピードに達していたという感覚。巡航時には、街なかなら1500rpm以下、高速でも2000rpm以下にエンジン回転を保つことが多い。でも、アクセルペダルの動きによっては3000rpmくらいまで即座に回転を上げ、必要な加速が得られるし、フルスロットルを与えれば、回転計の針を5000rpm以上に釘付けにしてぐいぐいとスピードを上げるのが頼もしい。加速時のエンジン音がやや耳障りなのが玉にキズ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
もともと硬めの足まわりに加えて、この“Sパッケージ”には195/55R16サイズのタイヤが装着されることもあって、路面の荒れを拾いがち。目地段差を越えたときなどもショックの遮断はいまひとつだが、それでもなんとか乗り心地は許容レベルに収まっている。
高速道路では直進性こそ不満はないが、乗り心地のフラットさはもうひとつといったところ。マイルドな乗り心地で、フラット感はまずまずといったカローラ系の性格とは対照的。私はカローラ系のほうが好きだ。
ワインディングロードでは終始アンダーに徹し、面白みこそないが、嫌みのない安定したハンドリングに躾けられている。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年7月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:1854km
タイヤ:(前)195/5R16(後)同じ(いずれも、ブリヂストン トランザER300)
オプション装備:ボディカラー(3万1500円)/前席SRSサイドエアバッグ&全席SRSカーテンシールドエアバッグ(6万6000円)/HDDナビゲーションシステム+音声ガイダンス付きカラーバックガイドモニター+ステアリングスイッチ(24万8850円)/ETC(1万4700円)
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:298.4km
使用燃料:23.31リッター
参考燃費:12.8km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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