ヒュンダイ・クーペ FX (FF/6MT)【ブリーフテスト】
ヒュンダイ・クーペ FX (FF/6MT) 2007.07.31 試乗記 ……260万2350円総合評価……★★
他社のクーペとスペックだけで較べると、思わず「安い」と呟いてしまいそうな、「ヒュンダイ・クーペ」。その実力を試す。
懐古する
1980年代後半、日本のクーペは輝いていた。若者でもちょっと頑張れば手が届く「日産シルビア」や「ホンダ・インテグラ」が人気を集め、そういう私もこの2台を見較べ、結局S13シルビアを2カ月待ちで購入。2年後に手放したときは、あまりの値落ちの少なさに驚いたことをいまでも覚えている。当時の仕事仲間も皆クーペを手に入れ、身軽な独身のクルマ好きにはクーペ以外のクルマなど考えられなかった。
ところが、いまや気がつけば、最後の頼みのインテグラまで姿を消し、日本市場でクーペといえば、輸入車または「日産フェアレディZ」や「スカイライン」など、若者が気軽に乗れるモデルはなくなってしまった……と思っていたら、税抜価格が200万円を切るクーペがまだあった。それがヒュンダイ クーペだ。
2.7リッターのV6エンジンを積んだ「FX」が240万4500円、「FXスペシャル」が208万9500円(いずれも税込価格)はまさにバーゲンプライス。結構スタイリッシュで、試乗した「シャイン・レッド」のクーペFXは視線を集めたし、仕事場では「これなあに?」と聞かれることもしばしば。
ただ、クルマのつくりは古臭く、とりたてて運転が楽しいわけでもないので、この雰囲気が気に入った人がアシとして使うならいいのでは……というのが私の評価だ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「ヒュンダイ・クーペ」は、日本未導入のクーペ「ティブロン」の後継モデルとして、2001年のフランクフルトショーで登場した。本国では、1.6、2リッター直4エンジンもラインナップされたが、日本に導入されたのは最上級版たる2.7リッターV6のみ。2002年4月2日から発売が開始され、199.0万円というアグレッシブなプライスが話題をよんだ。
2007年4月、フェイスリフトを受け、内外装のデザインが一新。同時に新たなグレードとして廉価版「FXスペシャル」が設定された。
(グレード概要)
エンジンは従来同様、2.7リッターV6(167ps、25.0kgm)のみで、「FX」と廉価版の「FXスペシャル」の2グレードが用意される。組み合わされるトランスミッションは、6段MTと4段ATとなる。
テスト車は、大型電動ガラスサンルーフや前席SRSサイドエアバッグ、ESPなどが標準装備される上級版「FX」。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
濃いグレーのインテリアにシンプルなデザインのメーターやエアベント。色気はないが、落ち着きはある。ダッシュボードはちょっと前のカローラのような質感で、悪くはないがスポーティなクルマには似合わない。ライトオンでメーターやエアコンのパネルに灯るイルミネーションは鮮やかなブルー。慣れるまでは違和感を覚えるが、慣れると意外に見やすいのはフォルクスワーゲン車でも証明済みだ。
(前席)……★★★
フロントにはスポーティなクーペにふさわしいバケットシートが奢られる。センターがクロス、サイドが革のこのシート、座り心地は硬めで、サイドのサポートはまずまず。それでいて窮屈な感じがないのがいい。シートの調整はすべてマニュアルなのは価格を考えれば納得がいくが、ステアリングの調整がチルトのみなので、残念ながら私の体型では適切なポジションが取れなかった。ぜひ、テレスコピック調整機能を付けてほしい。
(後席)……★★
フロント同様、レザーとクロスのコンビネーションになるリアシート。大人が乗るには足元は窮屈で、ヘッドルームもミニマム。座高が高いと頭がリヤウインドーに付いてしまうだろう。あくまで「プラス2」である。晴れた日の昼間などは、リアウィンドウ越しに差し込む日光で暑い思いをする。ヘッドレストが備わらないのも減点ポイントだ。
(荷室)……★★★
ハッチバックを採用するため、開口部が大きく、荷室自体もクーペとしては十分な広さを確保している。通常は80cmほどの奥行きも、いざとなれば、50:50の分割可倒式リアシートを倒すことでほぼ倍増するから、ふだん使ううえで困ることはなさそうだ。テールゲート外側にプッシュボタンなどのオープナーがないのは残念。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
2.7リッターという余裕の排気量のおかげで、2000rpm以下の低回転域でもトルクに余裕があり、適度にトルコンスリップもあるから、街なかではとても活発で、アシに使うにはもってこいだ。回せば5000rpmあたりからそれなりに気持ちよく回転を上げるのだが、そのぶん3000rpm〜4000rpmで多少不満を覚えることも。パワーのわりにブレーキが心許ないのも不満のひとつだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
標準で215/45R17サイズのタイヤを履くこのクルマ、タイヤ&ホイールの重さは明らかに乗り心地に悪影響を与えていて、路面がちょっと荒れているとドタドタと不快な動きを伝えてくる。スピードを上げたところでフラット感は不足気味で、高速の目地段差を越えたときのマナーも褒められたものではない。ワインディングロードでもとくに軽快な感じはなく、一方、タイヤの剛性が足りないのか、ステアリングの切り始めでタイヤがたわむような手応えが気にかかった。
(写真=峰昌宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2007年6月6日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2007年型
テスト車の走行距離:702km
タイヤ:(前)215/45R17(後)同じ(いずれも、ハンコック OPTIMO K415)
オプション装備:EclipseHDDナビゲーション(18万円)
走行状態:市街地(1):高速道路(7):山岳路(2)
テスト距離:510.3km
使用燃料:66.68リッター
参考燃費:7.65km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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