ヒュンダイ・クーペFX V6(6MT)【ブリーフテスト】
ヒュンダイ・クーペFX V6(6MT) 2002.05.31 試乗記 ……199.0万円 総合評価……★★★勢いのあるクーペ
わが国での販売が2002年4月2日に発表されると、2.7リッターV6搭載で199.0万円という、トヨタ(シボレー)・キャバリエクーペ(2.4リッターV6=205.0万円)を凌ぐコストパフォーマンスのよさと、意外にカッコいい(!?)ことで(一部)クルマ好きの話題をさらった「ヒュンダイ・クーペ」。FFコンパクトのシャシーを使って、なかなかスタイリッシュなボディを載せ、ほどほどの性能を与え、まずまずリーズナブルな価格を付ける。かつて言うところの「セクレタリーカー」だ。
実際の秘書殿は大きなSUVに嗜好を移し、すっかり冷え込んだ極東の小型2枚ドア市場に“イメージリーダー”としてヒュンダイ・クーペを投入するあたり、「自動車文化の後進性」と揶揄することもできるが、しかし同車の、飛び抜けてはいないが不満のないデキと装備満載ぶりは、日本の中小自動車メーカーエンジニアの顔色なからしめるにじゅうぶん。「安い」「うまい」「速い」だけでは今後立ちいかないことが、名実ともに示された(ちなみに、ヒュンダイは世界第8位の生産量を誇る)。
ステアリングホイールを握れば、低い着座位置がなんだか懐かしい。ちょっと気合いを入れるとすぐにアゴを出すシャシー性能はご愛嬌だが、元気のいいツインカムユニットは、豪華6段ギアを駆使して歌わせると楽しいし、直線は速い。センターコンソールのトルク計と燃費計が、「プレジャー」と「環境」のせめぎ合いを実演していて可笑しい。“どこかで見たことがあるモチーフ”が散見される外観、3連メーターが嬉しい室内、エンジンが速い“走り”。良くも悪くも、まだまだ勢いあるメーカーの産物だ。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
日本未導入だったヒュンダイのクーペ「ティブロン」の後継モデルとして、2001年のフランクフルトショーに登場した。本国では、1.6、2リッター直4エンジンもラインナップされるが、日本に入るのは最上級版たる2.7リッターV6のみ。2002年4月2日から発売が開始され、199.0万円というアグレッシブなプライスが話題をよんだ。
(グレード概要)
日本におけるヒュンダイ・クーペのグレードは「FX V6」のみ。4ATと6MTが用意されるが、価格や装備面で違いはない。前席ダブル&サイドエアバッグ、トラクションコントロール、電動ガラスサンルーフ、ヒーター付きの電動格納式ドアミラー、本革巻きステアリングホイール&シフトノブ、集中ドアロック、キーレスエントリー、ダブルホーン、アルミホイールなどが標準で装備される。コストパフォーマンスは驚異的。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
廉価なセクレタリーカー相応の品質感。低コストをデザインでカバーしようと努力したあとあり。センターコンソールに、トルク計、燃費計、電圧計が並ぶのが、インパネまわりのハイライト。ステアリングホイールは、トヨタ流にコラムから生えたレバーで段階的にチルト可能。トンネルコンソールとインパネ左端にひとつずつ、ふたりぶんのカップホルダーが用意される。頭上にはサングラス入れ、サンバイザー裏にはバニティミラー、ドアミラーは熱線入りと、カタログアピールには事欠かない。ただし、スピーカー付きながらオーディオレスだ。
(前席)……★★★
スポーティクーペらしい、低い着座位置。ミニバン全盛の日本にあって、懐かしいドライビングポジション。日産シルビアのようだ。セミバケットシートは平板な座り心地。サイドサポートは必要十分。運転席側のみダイヤルで座面の角度を変えられる。
(後席)……★★
荷物置きとして重宝なリアシート。「プラス2」として妥当なものだが、ヒトが座ると頭がリアガラスにつかえるので、首をすくませる必要がある。ハッチゲイトには、閉めるときに後席乗員の頭を直撃しないよう注意書きが貼られる。親切だ。
(荷室)……★★
これまたスタイリッシュクーペとしては妥当なもの。ふたりの小旅行にはじゅうぶんだろう。荷物の散乱を防ぐラゲッジネットが標準で備わる。床面最大幅137cm、ストラットタワー間は92cm。奥行き85cm。パーセルシェルフまでの高さ45cm。床下にはテンポラリータイヤが収まる。いざとなれば、分割可倒式のリアシートバックレストを倒して拡大することも可能だ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
ミニバン「トラジェ」やSUV「サンタフェ」でお馴染み(?)175psと25.0kgmを発生する2.7リッター“オールアルミ”V6搭載。スムーズに元気よく回り、6段MT車では、ロウで約60km/h、セカンドで約90km/hまでひっぱる。4速=1.055、5&6速がオーバードライブとなる、日常に配慮された常識的なギアレシオ。1、2速には、ダブルコーンシンクロナイザーが採用される。ストロークは普通だがフィールはいい。数売れないモデルながら6MTモデルをカタログに載せるあたり、守旧派クルマ好きとしては支持したいところだ。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
フロント:マクファーソンストラット、リア:デュアルリンクのストラットと、手堅いサスペンション形式。しかしルックスを重視した「215/45ZR17」サイズのタイヤを履くためか、街乗りではバネ下が重いドタドタした乗り心地。サスペンションのストロークが足りない感じあり。フロント:リア=880:490kgというノーズヘビーな重量配分もあって、ハンドリングコースをトバすとちょっとツラい。侵入速度が高すぎるとアンダーステアが強く、脱出時にスロットルを開けてもトラクションがかからない、といったFF車のウィークポイントが顕著に出る。ガマンのドライブだ……って、ヒュンダイ・クーペでカーブを攻めてどうする。
(写真=佐藤俊幸)
【テストデータ】
報告者:webCG青木禎之
テスト日:2002年5月23日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:--km
タイヤ:(前)215/45ZR17 87Y/(後)同じ(いずれもMichelin Pilot Sport)
オプション装備:−−
テスト形態:ロードインプレッション+テストコース
走行状態:市街地(2):テストコース(8)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター
参考燃費:--km/リッター

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
-
ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
-
スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
-
トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
-
BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
-
NEW
トヨタ・カローラ クロスGRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】
2025.10.21試乗記「トヨタ・カローラ クロス」のマイナーチェンジに合わせて追加設定された、初のスポーティーグレード「GRスポーツ」に試乗。排気量をアップしたハイブリッドパワートレインや強化されたボディー、そして専用セッティングのリアサスが織りなす走りの印象を報告する。 -
NEW
SUVやミニバンに備わるリアワイパーがセダンに少ないのはなぜ?
2025.10.21あの多田哲哉のクルマQ&ASUVやミニバンではリアウィンドウにワイパーが装着されているのが一般的なのに、セダンでの装着例は非常に少ない。その理由は? トヨタでさまざまな車両を開発してきた多田哲哉さんに聞いた。 -
2025-2026 Winter webCGタイヤセレクション
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>2025-2026 Winterシーズンに注目のタイヤをwebCGが独自にリポート。一年を通して履き替えいらずのオールシーズンタイヤか、それともスノー/アイス性能に磨きをかけ、より進化したスタッドレスタイヤか。最新ラインナップを詳しく紹介する。 -
進化したオールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2」の走りを体感
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>欧州・北米に続き、ネクセンの最新オールシーズンタイヤ「N-BLUE 4Season 2(エヌブルー4シーズン2)」が日本にも上陸。進化したその性能は、いかなるものなのか。「ルノー・カングー」に装着したオーナーのロングドライブに同行し、リアルな評価を聞いた。 -
ウインターライフが変わる・広がる ダンロップ「シンクロウェザー」の真価
2025.10.202025-2026 Winter webCGタイヤセレクション<AD>あらゆる路面にシンクロし、四季を通して高い性能を発揮する、ダンロップのオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」。そのウインター性能はどれほどのものか? 横浜、河口湖、八ヶ岳の3拠点生活を送る自動車ヘビーユーザーが、冬の八ヶ岳でその真価に触れた。 -
第321回:私の名前を覚えていますか
2025.10.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。24年ぶりに復活したホンダの新型「プレリュード」がリバイバルヒットを飛ばすなか、その陰でひっそりと消えていく2ドアクーペがある。今回はスペシャリティークーペについて、カーマニア的に考察した。