プジョー207GTi(FF/5MT)【試乗記】
とりあえず乗せちまえ! 2007.07.29 試乗記 プジョー207GTi(FF/5MT)……320.0万円
プジョーのボリュームゾーン「207」。そのホットモデル「GTi」の日本での販売が始まった。3ドア、1.6リッター+5MTで320万円。雨と霧の試乗会場から報告します。
先進のターボエンジン
プジョージャポンにとって、昨今のユーロ高はまことに恨めしいものだろう。「プジョー206」のスマッシュヒットの後、ニューモデル日照り(?)を経て、ようやっと後継車種を導入できるとなったら、この円安。
輸入元の苦労を知らぬお客さまに、「1.6リッターの3ドアハッチに320万円!?」と言われると、正直ツラいものがあろう。
「プジョー207GTi」のことである。
GTiは、175psのピークパワーを得た1.6リッターターボを搭載した207シリーズのトップエンド。本国のプジョーが、モータースポーツの舞台をWRC(世界ラリー選手権)からルマン24時間レースに移したのを受け、ホットモデルのグレード名が、ラリーを連想させるRCから、より一般的なGTを含むGTiに変更された。ちなみに「i」は、かつてはインジェクションの意味だった……。
基本的に同じエンジンを積む207GTより25psアップの最高出力175ps/6000rpmは、ターボのブーストを一時的に1.8から2.0bar(絶対圧)にアップすることで獲得。24.5kgmの最大トルクはGTと変わらないが、発生回転数がじゃっかん高い1600〜4500rpmとなった。
ツインカム16バルブターボは、BMWとの共同開発になるもので、ご承知のようにMINIでも使われる4気筒エンジン。吸気バルブの連続可変バルブタイミング&リフト機構を備える。
シリンダーに直接燃料を吹く直噴ユニットのため、過給機付きにもかかわらず、10.5:1という高い圧縮比を可能とした。ダイレクトインジェクション技術による熱効率の改善と、ターボエンジンが得意とする低回転域でのトルクの太さを活かして「結果的に燃費をよくしよう」という最近のトレンドにのったパワーユニットである。
高い出力を誇るGTiだが、実際にオーバーブーストがかかるのは下記の4つの条件が重なった場合に限るので、カタログ上の10・15モード燃費の数値は、GTの「12.6km/リッター」と変わらない。「NA+4AT」モデルの「11.6」を上まわる数字である。
オーバーブーストの条件は以下の通り。
・エンジンが温まっている(90度以上)
・ギアが3/4/5速のいずれかに入っている
・フルスロットル
・エンジン回転数が1600-4500rpm
組み合わされるトランスミッションは、GT同様、5段MTのみとなる。
ツボが押さえられる
プジョー207GTiのプレス試乗会は、あいにくの雨と深い霧のなかで行われた。
207GTiの、トップモデルとしてのスペシャル感は後姿に顕著で、大きなルーフエンドスポイラーとツインエグゾーストパイプが識別点。「205/45R17」のタイヤサイズはGTと同じだが、ホイールの意匠が異なる。
……といった豆知識に頼らなくても、ドアを開ければGTiなのは一目瞭然。サイドサポートが張り出したアルカンタラのバケットシートが迎えてくれる。リアシートもバケット調となるため、乗車定員は4名となる。
メーターパネルはカーボン調。足下のABCペダルとシフトの部にはアルミが使われた。いかにもツボが押さえられたスポーティな演出である。
キーを捻れば、低くドスの利いたエンジン音が室内にこもる。走りはじめれば、明らかに強化された足まわりがハイパフォーマンスを予感させる。
前:マクファーソンストラット、後:トーションビームの形式はもちろん変わらないが、スプリング+ダンパー、アンチロールバーに加え、リアのトーションビームの素材にまで手が入れられた。
無粋に路面の凹凸を伝えることなく、「腰のあるしなやかさ(!?)」と多少ムリのある印象をドライバーに抱かせつつカーブを曲がっていく。ロールはよくチェックされ、自然にボディが傾きつつ、不安なくコーナーをまわってゆく。すばらしいセッティング。
頼りがいがある
外観の控えめなモディファイとは対照的に、メカニカルな面にしっかりチューンが施されるのは大したもの。トランスミッションは、GTと比較すると、ファイナルギアが落とされ、ロウが高められた。
シフトストロークは標準的で、フィールもとりたてて良好というわけではないが、小気味よくギアを変え、“曲がり”を終えるたびに、力強い加速を満喫しながら走ることができる。回り始めからトルクが太く、自然に回転を上げ、最後にもう一押しされる感のある4気筒ターボがいい。頼りがいがある。
直接較べたわけではないので断言できないが、低めのギアとオーバーブーストを活かせば、場合によってはGTよりひとつ上のギアで走れるのではないか。
100km/h巡航で3000弱というトップギアに少々苦笑いしながら、「206RCの痛快な2リッターNAも忘れがたいが、今度の1.6ターボも捨てがたい」と感想をまとめ、“ちょい乗り”試乗の帰路に就いた。
「『1.6リッターのハッチバックに320万円!?』というお客さまには、とりあえず乗せちまうのが手だな」などと、よけいなことを考えながら。
(文=webCGアオキ/写真=峰昌宏)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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