第329回:イガクリ頭がいきなりハーフのモデルに!?
がんばれ、インプレッサ!
2007.07.24
小沢コージの勢いまかせ!
第329回:イガクリ頭がいきなりハーフのモデルに!?がんばれ、インプレッサ!
かなりのイメチェン
おお、本当に大丈夫なのか……インプレッサ、そしてスバルよ……。
新型「スバル・インプレッサ」を見て、一瞬、そう思ってしまいました。
だって、ほとんど今までとは関係のないカタチなんだもんね。従来の無骨というか、アナクロなまでにボクシーなセダン&ワゴンフォルムを捨てて、美しいティアドロップ型ノーズのハッチバックフォルムを選択。一方、リアから見ると、BMW1シリーズもかくやというイキリ立ったショルダーが際立ってるし、いわば今まで、イガクリ頭の硬派柔道部員だったのが、突然、ハーフのファッション誌モデルになったような変化。従来のファンは離れないのだろうか……正直、そう心配してしまった、小沢コージであります。
でもまあ、考えてみれば当然の決断なのよね。今までの硬派路線モデルは、WRX STIと1.5リッター自然吸気エンジングレードで、全体の9割を占める感じ。STIじゃない2リッターターボなんて、今ひとつ街でみかけないし、存在も微妙。結局インプレッサは「パフォーマンス」か「値段」で選ばれている感じで、「デザイン」という切り口では無かったような気がする。
本来、「トヨタ・カローラ」や「ホンダ・シビック」、あるいは最近出た「トヨタ・オーリス」や「日産ティーダ」を追撃しなきゃいけないインプレッサだけに、あんまりレトロなデザインをまとってもいられない。そうでなくても進化の激しい昨今のカーデザイン。ここに来て一歩も二歩も進んじゃおうというわけだ。
野球少年が受験生に変身!?
そういえば兄貴分である現行「レガシィ」も、2003年5月のフルモデルチェンジ時に急激にデザインが洗練。俺から見るとそこまで伝統の土臭さをソギ落としていいのか! という変化だったが、これまたスバルがひとクラス上の自動車メーカーに進化するためには越えなければいけない壁だったわけだ。
ようするに、独特のクセを好むマニアばかり相手にしては、メーカーとしての成長はないと踏んだんでしょう。
実際、乗った感じもクセがない。シートは大柄なゆったりとした作りで、インテリアにも昔ほど窮屈さはなく、居心地は上々。個人的にはもうちょっとインパネを寝かして開放感を出しても良かった気もするが、そこらへんは従来客ウケとのバランスでしょう。
一番驚くのはエンジン。1.5にしても2リッターにしても、例のフラット4エンジンのドロドロした音があまり聞こえない。現行レガシィ同様、かなりスマートになったといえましょう。
ハンドリングも驚くほど大人っぽい。切り込んでも過敏にノーズは反応せず、適度にしっとりした重さのステアリングとともに、ゆったりと進行方向を向く。ボディサイズからは考えられないほど安定しております。
なによりビックリなのは乗り心地。まずは1.5リッターの「15S」と2リッターの「20S」に乗ったのだが、どちらも硬すぎず柔らか過ぎずの、しっとりした足まわり。旧型インプレッサで、かなりゴロゴロと強烈な乗り心地を体験してきた俺からみれば、正直、拍子抜けだ。まるで今まで甲子園を目指してた野球少年が、高3の夏休みを境にすっかり受験生に変化したようで残念といえば残念。
従来の良さと今の良さを併せ持たせた
でもね。これまたスバルはよくしたもので、ちょうどそういう俺たちの気持ちを見透かしたモデルも出してるわけよ。それは2リッターターボ搭載の「S-GT」。おそらく今年秋頃に出るはずの超硬派グレードとの中間ぐらいの味付けで、最高出力は250ps、最大トルクは34.0kgmと適度にパワフル。
これが昔ほどのドロドロした排気音やガチガチさは持ち合わせていないものの、適度に硬められたサスペンションでもって気持ちよく飛ばせる。というか大人っぽい味付けのハンドリングと相まって、限界付近の扱いやすさは今まで以上。ハイスピードでコーナーに進入していってもスーッとステアリングにノーズがついていき、アクセルコントロールで自在に姿勢が制御できる。時には多少テールスライドも起こすが、それがまた自然。まさしく“懐が深くなったインプレッサ”という感じ。
おそらく昔の味わいを意識したスバル開発陣が狙った、従来の良さと今の良さを併せ持たせたグレードで、個人的にはコレが一番良かった!
実際、販売台数は発売後1ヵ月で約6000台と好調。内わけは、お買い得な15Sが6割強とダントツだが、次はS20を飛び越えてS-GT。狙い通り、旧型の良さと新型の良さを兼ね備えたところが評価されてるのかもしれない。
っていうか俺は思ったのだが、考えてみればインプレッサの場合、レガシィほどの固定ファンはいないだろうし、大きくイメチェンしても問題は少ない。それよりスバルの個性をどう時代とすり合わせ、どう楽しさを搾り出すかのほうが問題なのだ。
時代が進むごとに個性を出しにくくなっている自動車作りだが、その中でも試行錯誤してがんばってる感じではありますよ。新型インプレッサ。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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