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【スペック】 全長×全幅×全高=5370×1870×1840mm/ホイールベース=3315mm/車重=2230kg/駆動方式=4WD/4リッターV6SOHC12バルブ(213ps/5100rpm、35.1kgm/3700rpm)/価格=398.0万円(テスト車=同じ)

フォード・エクスプローラー・スポーツトラック XLT(4WD/5AT)【試乗記】

まさにアメリカン 2007.07.18 試乗記 森口 将之 フォード・エクスプローラー・スポーツトラック XLT(4WD/5AT)
……398.0万円

「フォード・エクスプローラー」にベッド(荷台)をもつピックアップモデルが日本に導入された。新型の使い勝手と乗り心地を試す。
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スポーツ・ユーティリティ・トラック

1年前まで、湘南に住んでいた。マリンスポーツをやるために引っ越したわけではないのに、気がつくとウィンドサーフィンを始めていた。だから環境が人を変えるという言葉を、僕は信じる。同様にクルマが人を変えることも、ありえると思っている。

「フォード・エクスプローラー・スポーツトラック」。こういう自動車を日本で必要としている人が少ないことぐらい、わかっている。でもこのクルマは、乗り手を変身させる力を秘めている感じがする。
フォードによれば、これはピックアップではない。アメリカでSUT(スポーツ・ユーティリティ・トラック)と呼ばれている新種だ。スポーツトラックの綴りも「SPORT TRAC」で、「TRUCK」ではないことを強調している。

SUVはもともと、ピックアップにワゴンボディを被せることからスタートした。しかし現在は、快適性能や走行性能を高めるために、ピックアップと違うメカを用いるのが一般的。たとえばエクスプローラーは、ラダーフレームは継承するものの、サスペンションは板バネなど使わずに4輪独立懸架、4WDシステムは切り替え不要なオンデマンド式を採用している。

ここで逆転の発想が生まれた。これらをピックアップに搭載すれば、乗り心地もハンドリングもよくなるじゃないか。SUTはそんなコンセプトで生まれた。スポーツトラックはその代表。日本デビューは2007年だが、本国では2001年に登場していて、現行型は2代目というキャリアの持ち主でもある。

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フォード・エクスプローラー スポーツトラック(4WD/5AT)【短評】

ピックアップの進化版

SUVのキャビンとピックアップ並みのベッド(荷台)を両立するために、ホイールベースは425mm、全長は440mm、SUV版「エクスプローラー」より長い。つまり3315mmと5370mm。単純に足し算するあたりがアメリカンだが、ベッドの作りを見たら、そんな小さな?ことなど忘れてしまう。

驚くことにこのベッド、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)と呼ばれる複合素材製だ。だから軽くてサビない。もちろん荷台としての強度は確保してある。上には前後2分割でキーつきの防水リッドを持ち、壁には12Vソケット、フロアには一体成型で3ヶ所の収納スペースを内蔵。この中にも水抜き穴を備えるという周到ぶりだ。

写真をクリックすると荷台のフロアアレンジが見られます。
フォード・エクスプローラー・スポーツトラック XLT(4WD/5AT)【短評】

そのすべてが使いやすい。バンパー上のステップやサイドのタイダウンフックを含め、道具として考え抜かれている。生活に根づいた商品を作らせるとフォードはホントにうまい。来年生誕100周年を迎えるT型の魂が受け継がれていることを確信した。

それはともかく、マリンスポーツをかじった人間としていわせてもらえれば、濡れたモノを車内に積むのは、やっぱり抵抗がある。そのまま放り込めるようなスペースがいい。そういう点で、このベッドは最高だ。アウトドアスポーツやウインタースポーツでも同じことがいえるだろう。いや、これといった趣味を持たない人だって、スポーツトラックを買ったら「なにか始めてみっか!」となるハズ。背中を押してくれそうなクルマなのだ。
そんな人にとっての理想像は、ピックアップらしいのはカタチだけで、仕立てや走りには荒っぽさがなく、乗用車そのものであること。スポーツトラックはまさに、そんな作りをしている。

可能性は様々

明るめのタンで統一されたキャビンは、フロアがラバーになる以外はエクスプローラーと同じ。上質な空気が流れる。前席はもちろん、後席も例外ではない。他のピックアップは薄いクッションに直角座りとなりがちだが、スポーツトラックは空間も厚みも角度も適切。ファミリーカーとして使える。

4リッターV6エンジンと5速ATはエクスプローラーXLTと共通。車重は2230kgと70kg増に抑えてあるから、加速に不満はない。SMCベッドのおかげだ。しかも静か。加速時にV6の軽い唸りが聞こえるだけで、ロードノイズはしっかり遮断されている。タイヤハウスが室外にあるボディ構造の利点だ。

乗り心地はリア側が少し硬くなったかな?と思うぐらいで、おおむね快適。速度を上げればロングホイールベースならではの鷹揚な動きが、身も心も穏やかにさせる。心配した取りまわしだったが、予想以上に小まわりが効いた。交差点での内輪差に気を遣うぐらいで、幅が広いクルマよりは運転はラクだ。

素直なハンドリングも想定外の美点。タイヤがオールテレインタイプなので、濡れたコーナーで踏みすぎるとリアがすべるけれど、遠くでなにか起こっているぐらいにしか感じないし、すぐにESPが効くので安心だ。
オフでは、215mmの最低地上高と頑丈なラダーフレーム、直結4WDのローレンジまで備えた3モード4WDのおかげで、多少の悪路でも躊躇なく踏み込めるタフネスがある。雨の富士山麓を流しながら、ふと「湘南に戻りたい」と思ってしまった。スポーツトラックには、人間らしさを取り戻す力があるのかもしれない。400万円を切る価格でそんな力が手に入るなら、安いもんだと思った。

(文=森口将之/写真=峰昌宏)

森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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