第328回:エンジン良ければいいってモンじゃない!
クルマって難しい……新型MINIワン
2007.07.12
小沢コージの勢いまかせ!
第328回:エンジン良ければいいってモンじゃない!クルマって難しい……新型MINIワン
しょぼくなったところがオシャレ
遅ればせながらやっと乗ってきました! BMW製としては2代目「MINI」の、ベーシックグレード「ワン」に。
今度新型MINIクーパーの中期テストをやるんで、その前に乗ってみようって借りたんだけど、乗って一言、悩んじゃいましたね。結構、難しいかもコレ? って。
いつもの持論でいけばコンパクトカーはベーシックグレードで十分なわけですよ。特にオレはクルマに絶対的加速やスピードを求めないタチだけに、ゴルフにしろカローラにしろ一番パワーレスなモデルで満足。
その点新型ワンは、エンジン排気量が確かに1.6リッターから1.4にダウンしてる。だけど、にも関わらずエンジンにはバルブトロニックが付いて、最高出力は5psアップの95ps、最大トルクも0.3kgmアップの14.3kgm。当然燃費もビミョーに良くなってて、フツウに考えたら文句のつけようがないわけ。
細かくいうとワンになってしょぼくなった部分、つまり装備ダウンしたボディ同色ルーフやツヤ消し黒のサイドミラー、鉄チンホイールもそれなりにオシャレでよい。もちろん、アルミを履かせたいってひともいるだろうし、借りた試乗車にはミラーにオプションのボディ同色カバーが付いちゃってたんだけどさ。
ビミョーにキモチよくない……
この手のヨーロピアンベーシックカーの“安い方がツウっぽい”って法則はまさに永遠で、特に「L」から始まる国産ブランドなどにしても、国産高級車が相変わらず「付く装備はなんでも付けて持ってこい」って下品に売られているだけに、心情的にはアンチ拝金主義でいきたい俺としては、この手はよけいに「一番安いクルマ持ってこい!」ってな感じで乗りたいと思う。まるでガンコなフランス人のようにね。
実際、素性がキュートなMINIのボディに対し、ボディ同色ルーフやニブく光るホイールは、オレの目にはなかなか潔く写る。さすがは“無駄に包装紙を使わない国、ヨーロッパ”って感じ。昔の日本もそうだったのにねぇ……。
ただね。実際乗ってみると、ビミョーにキモチよくないんだよね。特にオレが借りた6AT車は新型になってオートマチックがCVTからトルコンになってシフトショックが減ったはずなのにそれがヤケに目立つ。
つい大きめにアクセルを踏んでは、不用意にガクンとキックダウンして急加速! の繰り返し。そしてしばらくしてニブい俺もさすがに気づくわけだ。ああこれは低速トルクが細すぎるんだなと。そう、現代車の豊穣な加速力に慣れすぎたオレにとっては1.4リッターエンジンじゃ排気量が小さすぎるのだ。
変わらないエンジンのさわやかさ
これがMT車だったら最初っからギアを低めの奴に叩き込んで走るんで問題ないだろうし、もしやコイツは走りこんでない試乗車なんでシフトショックが大きめだったのかもしれない。もうちょっと慣れるか、走りこめばスムーズに走れるのかもしれない。
でもね。その後、わずか27kmしか走ってない1.6リッターエンジンのクーパーに乗り換えて思ったんだよねぇ。ああ、単純にコッチの方がいいわぁと。同じ6AT車だったんだけど、普通にDレンジで走り始めた時の加速が違う。アクセル開度にそって、クルマが自然にグイグイと出てくれてキモチよい。
一方、4000rpm以上の高回転域では思ったよりクーパーとワンの違いを感じなくて、どちらもさわやかにクォォォォ〜と吹ける。こっちの良さでは、逆に約30万円も安いワンのほうがお買い得だと思っちゃいました。「さすがはBMWエンジン」って感じで。
ってなわけで田舎でマニュアル仕様に乗るんならワンで十分だけど、普段、発進加速の多い街でオートマに乗るんならばクーパーだと思いましたね。総じていいクルマな新型MINIだけど、選びはそれなりに難しい。日々勉強ですな。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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