フォルクスワーゲン・トゥアレグV8 (4WD/6AT)【試乗記】
実力派 2007.07.03 試乗記 フォルクスワーゲン・トゥアレグV8(4WD/6AT)……798万円
内外装のデザイン変更のほか、エンジンがアップグレードされたフォルクスワーゲンのSUV「トゥアレグ」。その上級モデルとなる4.2リッターV8直噴エンジン搭載モデルに試乗した。
ワッペングリルとFSI
フォルクスワーゲンが高級SUV市場に打って出るにあたり、同じ志を抱くポルシェを共同開発のパートナーに選んで、その結果生まれたのが「VWトゥアレグ」と「ポルシェ・カイエン」であることはいうまでもない。そして、初挑戦ながらどちらも多くの人から支持を得た成功作となったのもご存知のはずだ。
そのトゥアレグとカイエンがほぼ同時にマイナーチェンジを実施した。ニューカイエンの説明はまた別の機会に譲るとして、トゥアレグは、フロントマスクにワッペングリルを採用して新しさをアピールするとともに、ABSやESPの機能強化を図るなど、さまざまな変更が施された。
さらにこのV8モデルでは、ボンネット下に収まる4.2リッターV8が5バルブのDOHCから4バルブに改められ、燃料噴射は直噴式(FSI)に変更された。圧縮比は12.5まで高められ、最高出力349ps/6800rpm、最大トルク44.9kgm/3500rpmを絞り出す。これは旧型に比べてそれぞれ39ps、3.1kgmの性能アップである。
ちなみに、この4.2リッターV8FSIエンジンは、アウディではすでに「Q7」などに採用されているがVWとしては新登場。一方カイエンは、排気量を4.8リッターまで拡大して385psと51.0kgmという具合に、あいかわらず一枚上手の実力を手に入れている。
エンジンに不満はないが……
そんなカイエンの4.8リッターV8がうらやましく思える反面、冷静に考えればトゥアレグのV8でも十分過ぎるほどの性能を持っている。実際、軽くアクセルペダルを踏むだけで2350kgの重量級はすーっと加速していくし、普通に走るなら3000rpm以下だけで十分に速い。
旧型ではエンジンのガサついた音が気になることがあったが、この新型ではすっかり解消されて、高速ではロードノイズと風切り音が聞こえるばかり。
もちろんこのV8ユニット、ここ一番というときには頼りになる。アクセルペダルを深く踏むと、音量は控えめだがV8らしい太い音を奏でながら、勢いよくその回転を上げていく。とくに3000rpmを超えたあたりから力強さを増し、5000rpmを過ぎて少し勢いが落ちてくるが、それでもレブリミットの6500rpmまできっちり仕事をする実力派だ。
ところで、このV8モデルには、エアサスペンションが標準装着になる。「オート」「スポーツ」「コンフォート」の3つのモードが選べ、オートなら一般道から高速道路まで自動的に減衰力を調節し、速度によらずキャビンをフラットに保つ。高速やワインディングロードでさらにシャキッとした挙動を望むならスポーツを選べばいい。
ハードな味付けといっても不快な硬さはなく、速いペースを保つにはもってこいだ。しかも、オートやスポーツの乗り心地が旧型よりもさらに向上しているのがうれしいところだ。一方、コンフォートはややソフト過ぎて、荒れた路面やオフロードで一時的に選ぶという使い方が適している。
ただ、標準装着される275/45R19タイヤのアタリが硬く、重量が嵩むぶん、乗り心地に悪影響を及ぼしているのはいただけない。スポーティに演出したいのは理解できるが、標準はV6と同じ255/55R18で、19インチはオプションでもよかったのではないか?
これを除けば、ほぼ不満のない仕上がりを見せるトゥアレグV8。所有する歓びに加えて、余裕も手に入れたい人には、このV8をお勧めする。
(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。













