フォルクスワーゲン・トゥアレグ W12 スポーツ(4WD/6AT)【試乗記】
控えてこそ、プレミアム 2005.06.24 試乗記 フォルクスワーゲン・トゥアレグ W12 スポーツ(4WD/6AT) ……1047万9000円 VWに初の1000万円超モデルが登場した。12気筒エンジンを搭載したSUV「トゥアレグW12スポーツ」である。日本では100台限定となるプレミアムモデルに、『NAVI』編集委員鈴木真人が乗った。SUV市場の「プレミアム化」
SUV市場がピークだったのは、1996年だったそうだ。世界中で、50万台が売れた。現在は、約20万台だというから、一時期のブームは去ったということなのだろう。でも、数が減った分、値段は上がっている。SUVの「プレミアム化」は、この10年の間に急速に進んだ。BMWの「X5」が登場したのを皮切りに、都市に棲息する高級四駆というコンセプトのモデルが次々に登場した。老舗の「レンジローバー」だって、今や泥の荒野よりも高層ビルの谷間を走るほうがずっとサマになる。
日本でも、1000万円超のSUVの市場は、今や1500台規模になろうとしている。そこにレンジローバー、ポルシェ「カイエンS/ターボ」、AMG「ML55」「G55」などがひしめいているというわけだ。フォルクスワーゲンでもカイエンの兄弟車である「トゥアレグ」を販売していて、2004年の2301台という販売数は、350万円以上の輸入SUVの中ではナンバーワンを誇っている(2005年は「X3」に抜かれてしまいそうだが)。カイエンに比べて価格面でのお得感が人気の理由のひとつであったのだが、今回投入する「W12スポーツ」は初めての1000万円超モデルということになる。トゥアレグの中でというだけでなく、日本で売られるVW車として初めてなのだ。
1000万円は安い!?
VWが大衆車路線を修正して、プレミアム指向を強めるようになって久しい。「パサート」なんて、本当に高級感のあるいいクルマだし、「ゴルフ」だって安物感はまったくない。しかし、1000万円というのは少々特別な印象を帯びる価格だ。お得感がウリであった車種だけに、いきなりの1000万円越えにはさすがに唐突の感がある。なにしろ、V6モデルと比べると、2倍近いのだ。
この価格の根拠となっているのは、450馬力を発生する6リッターのW12エンジンである。狭角15度のV6エンジンをさらに72度でV型に配置した複雑な機構を持つこのエンジンは、VWグループの大きな財産となっている。日本では未発売のVW「フェートン」、ベントレー「コンチネンタルGT」、アウディ「A8」に搭載されているハイパワーでコンパクトなユニットだ。ちなみに、コンチネンタルGTは2089万5000円、A8でも1480万円のプライスタグがつけられていて、比べればトゥアレグW12はお買い得にも思えてくる。
エンジン以外にも特別な装備が施されている。4モーションのデフロックはセンターのみならずリアにも備わり、CDCエアサスペンションが標準で用意される。タイヤサイズは20インチとなり、それにともなってフェンダーがワイド化された。外観では前後バンパーが専用デザインで、アルミプレートが引き締まった印象をもたらしている。また、ダブルツインエグゾーストパイプもW12スポーツにだけ備えられている。今回のモデルは世界で500台の限定生産で、日本に割り当てられるのはそのうちの100台である。
はしたないマネはしない
アルカンタラをあしらった専用シートは、かなりしっかりと体をホールドするタイプで、アルミパネルを多用するインテリアの雰囲気とあいまって、スポーティな気分を醸し出す。動き出しにはそれほど急激な加速感はないが、これは意図しておとなしめな味付けをしてあるのだろう。カイエン・ターボがことさらに獰猛さを感じさせるのとは、正反対の性格なのだ。街中を走っているときに安っぽい微振動はほとんど感じられず、やはりV6、V8モデルとは明らかに差のある重厚感をもたらしている。
ハイパワー、ハイトルクを露骨に見せつけるようなはしたないマネはしないのだが、アイドリング+αで急坂をシレっと登っていくのは壮観だった。車重は2.5トンを超えているのである。アウトバーンではリミッターの利く250km/hまで一気に加速していくというのも、なんとなく合点がいく。
トゥアレグはプレミアムSUVとしては、比較的に穏やかなルックスである。クルマで自分の存在感を拡張したい向きにとっては、それは購入の意欲を削ぐ難点なのだろう。しかし、アグレッシブさを強調してばかりいるより、このような控えめな態度は好感が持てるのではないか。W12スポーツは北米では販売されないそうで、たしかに彼の地では控えめな態度にプラスの評価をする風土には乏しいから、この判断は正しいのだろう。だとすれば、日本の文化の中ではこのクルマは案外容易に受け入れられるのかもしれない。
(文=鈴木真人/写真=峰昌宏/2005年6月)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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