第326回:「ミツオカ・オロチ」ついに試乗
これ、真のニッポン男児にしか乗れまっしぇーん!!
2007.06.26
小沢コージの勢いまかせ!
第326回:「ミツオカ・オロチ」ついに試乗これ、真のニッポン男児にしか乗れまっしぇーん!!
ほどよいスーパーカー性能
ついに乗ってしまいました〜。待望の日本初、いや世界初の超ジャパネスク・スーパーカー、ミツオカ・オロチ! 今年4月に1〜4号車の納車式が行われてからはや2ヵ月、マスコミ向け試乗会が開催されたわけだけど、このヘンのオーナー重視の姿勢も好感もてるよね。俺たち報道陣が乗るべきはオーナー様の後というある意味当然の判断。それだけ宣伝しなくても売れるクルマってことなんだけどさ。
しかし実物は……、乗ってビックラこいてしまいました。驚くべき完成度! 考えていたよりずーっとマトモに走るのだ。勝手な想像では、メチャクチャ遅いとか、ウルサイとか、ギクシャクするとか、そういうツメの甘さが残ってるクルマと思いきや、不満というほどの不満はサイドシルの太さぐらいのもの。
この問題にしてもすでにオロチオーナーの鈴木さんから聞いて知ってたし、スーパーカーにありがちな「嬉しい問題点」とも解釈できる。だって“誰にでも乗れるスーパーカー”なんて面白くもなんともないじゃない。ま、オロチの開発コンセプトは「誰にでも乗れる」なんだけどさ(笑)。それにしてもサイドシルの太さがもたらす乗りにくさなんて、“茶室に入るような”ロータス・エリーゼの狭さよりずっとマシ。つくづくほどよいスーパーカー性能を持ったクルマであります。
乗り心地の良さにビックリ
そしてひとたびサイドシルを越えて乗ってしまえば、居住性は十分。写真を見ればわかるように、身長176センチのオレがマトモに座っても天井は頭に付かないし、どっかのイタリアンスポーツカーみたいに極端にステアリングが遠かったりはしない。ちょっとした手荷物はシート裏のスペースに収納できるし、リアのエンジンルームには小さなトランクルームも付いてる。もちろんここにはNSXみたいにゴルフバッグは積めないわけだけど、俺にしてみりゃそんなのどーでもいい。どうしてもオロチでゴルフに行きたければバッグを助手席に載せるか、友人のクルマにでも載せてもらってくださいな。
肝心の走り味だけど、パワートレインはトヨタの北米版SUV、ハイランダー用の3.3リッターV6+5段ATだから苦労があるわけがない。ペダルはアクセル&ブレーキの2つで乗用車的な軽さのアクセルを踏み出せばスムーズに発進する。驚くべきは乗り心地でバスタブ風シャーシ+鋼管パイプフレームにFRPを貼り付けたボディだから、なんかしらドタバタ、ギクシャクするかと思いきやほぼ皆無。それより見た目のカッコよさから決めたというリアのツインショックアブソーバーが効いているようで、乗り心地は非常にいい。感覚としてはなんだな、ノーマルNSXのボディをややふにゃふにゃにしたような適度なゆったり感。MR-Sのような小さなミドシップカーっぽいドタバタさはなく、正真正銘のスーパーカーって感じ。
唯一、惜しむらくはステアリングの軽さで、フロントにエンジンがぶら下がってないミドシップカーならではのナチュラルなフィーリングはあるんだけど、もうちょいビシっと直進性を感じさせてもよかったような。でも“誰にでも乗れる”っていうコンセプトからあえてこうしたんでしょう。
各メーカーの協力で生まれた
で、試乗会が行われた浦安周辺の道が渋滞してたこともあってぶっ飛ばせはしなかったんだけど、速さはまあまあ。3.3リッターと昔の「ポルシェ911」並みの排気量があることもあって、約1.6トンあるボディは低速でも高速でも爆発的とはいわないまでも十分に加速する。
意外にキモチよかったのがエンジンの吹け。レブリミットは約6000rpmとフツーなんだけど、シャァァァァーン!! と適度なメカニカル音とともに軽くまわる。
エンジンのセッティングはハイランダーと同じだというし、唯一、吸排気系をミドシップボディにあわせてイジったぐらいなんだけど、このあたりは日本自動車産業の底力ってことなんでしょう。今や日本車はSUVでも全般的に性能が高く、燃費やフィーリングが十分いいのだ。つくづくオロチは日本自動車産業の集大成なんだよね。エンジンはトヨタ、ブレーキはホンダ、そのほかいろんなメーカーの協力があってできあがっている。ホント、オロチが生まれてよかったよ。
それからね印象に残ったのがインテリア。造形そのものはわりと普通なんだけど、完全本革張りのインパネがいい! まさに手作りって感じで適度に凸凹が残っていて、これぞミツオカというテイスト。難しいRのパネルでは革が余ってるところもあるんだけど、そこが逆にいい具合なのだ。なんでも完成度が高けりゃいいってもんじゃないよね。手打ちそばにしても不ぞろいだからいいわけだし。
精神力が問われる
というわけでオロチ。最後に感想を言わせて貰うと、やっぱ「誰にでも乗れるスーパーカー」じゃないと思ったなぁ。いやもちろん、物理的には乗れるんでしょう。乗り易さはもちろん、おそらくそれほど壊れないはず。各国産メーカーの技術が集められた、“粋の結晶”なわけだから。
そうじゃなくって問題はその存在感。ホンダNSXが出た時にも思ったけど、こういうクルマって思い入れがないと乗れないのよね。特にこのデザインに耐えられる人間はそういないはず。だって普段オロチに乗るってことは、ほとんどサムライのカッコして渋谷の街を練り歩くようなものなんだからさ。いくら乗りやすいったって、相当にタフで男気のある男でないとクルマに負けちゃうよ。というかカンタンに乗れちゃうぶん、逆に乗れないいいわけができないという……。
ってなわけで乗る人の精神力が問われるクルマ、オロチ。すばらしいニッポン男児のためのクルマであります。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
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