メルセデス・ベンツCクラス【試乗速報】
興味は尽きない 2007.06.23 試乗記 メルセデス・ベンツCクラスメルセデス・ベンツ「Cクラス」がフルモデルチェンジされ、ついに日本デビューとなった。注目の新型をサーキットで試す。
選択肢は7つ
ついに日本でも発売になった新型「メルセデス・ベンツCクラス」。今回は、これまでどおりスリーポインテッドスターがボンネットの上に付く「エレガンス」と、クーペのようにフロントグリル中央に配置される「アバンギャルド」のふたつから、お好みのスタイルを選べることが話題である。さらに日本では独自に、アバンギャルドのスポーティ版である「アバンギャルドS」を設定、豪華3本立ての展開になった。
エンジンは、スーパーチャージャー付きの1.8リッター直列4気筒(184ps/5500rpm、25.5kgm/2800-5000rpm)、2.5リッターV6(204ps/6100rpm、25.5kgm/3500-4000rpm)、3リッターV6(231ps/6000rpm、30.6kgm/2500-5000rpm)の3つが用意され、直4には5段ATが、V6には7段ATが組み合わされる。
計算上は3×3=9とおりのバリエーションができあがるはずだが、実際には3リッターV6を積む「C300」はアバンギャルドSだけになるので、最終的には、1.8リッター直4が「C200エレガンス」「C200アバンギャルド」「C200アバンギャルドS」、2.5リッターV6が「C250エレガンス」「C250アバンギャルド」「C250アバンギャルドS」、そして、3リッターV6が「C300アバンギャルドS」の計7タイプになる。
ただし、「C200アバンギャルドS」と「C250アバンギャルドS」は、それぞれ「C200アバンギャルド」と「C250アバンギャルド」のパッケージオプション装着車、という位置づけなので、カタログ上は5モデルということになる。
Cクラス恒例といえば……
このなかから今回の試乗のために用意されたのは、「C200エレガンス」「C200アバンギャルド」「C300アバンギャルドS」の3タイプ。C250はデリバリーが9月下旬の予定なので、もうしばらくお預けということらしい。
ところで、Cクラスの試乗会といえば、サーキットでの開催が恒例になっている。初代C(W202)、2代目(W203)は鈴鹿サーキットが会場になったが、この3代目(W204)では「ツインリンクもてぎ」が舞台になる。
ここで、新型のウリのひとつ、“アジリティ(俊敏性)”を思う存分試してもらおうという趣向である。
まずはC200エレガンスとC200アバンギャルドを比較してみることにする。
この2台、デザインの違いはあるものの、走りに関わる部分はタイヤ&ホイールが異なるくらい。C200エレガンスが205/55R16を履くのに対し、C200アバンギャルドでは1インチアップの225/45R17になる。
なお、この日は装着タイヤがブリヂストンに統一されていて、C200エレガンスはトランザER300、C200アバンギャルドはポテンザRE050Aが装着されていたことを付け加えておく。
最初に大人しそうなC200エレガンスでコースイン。1コーナーを過ぎたところでアクセルを全開にすると、スーパーチャージャー付き直4エンジンは独特のメカニカルノイズを発しながら、C200のボディを勢いよく加速させていく。4気筒で十分じゃないか? そう思える力強さだ。
コーナーではシャープさこそ感じないものの、想像以上にロールを抑えるサスペンションには安定感があり、動きも実に素直だ。コーナーの出口に向かってアクセルを踏んだところで、オーバーステアが顔を出すことなく、狙いどおりのラインを描いていく。このとき、実際にはESPが介入しているのだが、ぎこちない動きを見せないのはさすだと思った。
C200アバンギャルドに乗り換えると、タイヤがスポーティなぶん、ステアリングに対する反応が多少鋭くなるが、基本的には同じような動きを見せ、エクステリアの違いほど、走りっぷりには差がないことが確認できた。
スポーツセダンを狙うならアバンギャルドS
一方、アバンギャルドSは明らかにスポーティな性格を持っている。
アバンギャルドS、あるいは、アバンギャルドSパッケージには、AMGスタイリングパッケージのエアロキットや前:225/45R17、後:245/40R17タイヤ(ポテンザRE050A)、大型ブレーキキャリパー&ドリルドベンチレーテッドディスク、前席スポーツシート、パドルシフト付3スポークステアリングなどに加えて、ノーマルよりも15mm低められたスポーツサスペンションや、ギアレシオを速めたスポーツステアリングが奢られることになる。
試乗したのはC300アバンギャルドS。C200エレガンスあるいはC200アバンギャルドと直接比べるわけにはいかないが、C200より重いはずのノーズがコーナーでは明らかにシャープな動きを見せ、ロールもしっかり抑えられている。
さらに印象を良くしたのが、サポートの優れたスポーツシートとパドルシフトで、スポーツ走行を楽しむならアバンギャルドSは格好のモデルだと思った。ブレーキも終始同じタッチを保っていた。
エンジンはC200よりさらに強力なうえに、5000rpm手前からレブリミットの6400rpmにかけて、心地良いサウンドを奏でながらスムーズに吹け上がるのが印象的だ。C200でも十分なパワーだと思うが、V6にはパワーとは別の魅力があるのだ。
そうこうしているうちに、各モデル30分ずつのサーキット試乗は無事に終了。新型Cクラスはたしかにスポーティで、サーキット走行を楽しむだけの資質を備えていた。
それではセダンに求められる快適性は? 一般道の乗り心地は? 高速の走りは? ふだん使ううえでのエンジンの実用性は? Cクラスに対する興味は尽きないのだが、それは、すでに私の中で新型Cクラスが合格ラインをクリアしている証拠なのかもしれない。
(文=生方聡/写真=高橋信宏)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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