シトロエンC4ピカソ 2.0エクスクルーシブ(FF/2ペダル6MT)【試乗記】
ちょうどいい 2007.06.14 試乗記 シトロエンC4ピカソ 2.0エクスクルーシブ(FF/2ペダル6MT)……360.0万円
本国では「グランC4ピカソ」として販売されるシトロエンの7人乗りミニバンが、「C4ピカソ」として正規に輸入される。2ペダル、ロボタイズドMTたるEGS版に乗った。
コンセプトの反映
「シトロエンC4ピカソ」の運転席に座ると、広く、大きく感じられる。“広い”というのは、室内空間のことももちろんあるが、前方視界が、広い。異例に開けている。
日本では2007年6月21日に販売されるC4ピカソは、3列シートをもつダブルシェブロンのミニバンである。7人乗り。本国フランスでは、“背高”C4こと2列シート5人乗りバージョンをして「C4ピカソ」と呼んでいる。わが国に入る大型のC4ピカソは、欧州での「グランC4ピカソ」にあたる。
“グラン”の名の通り、サルーン/クーペのC4より120mm長い2730mmのホイールベースに、全長4590mm、全幅1830mm、全高1685mmのボディを載せる。全長は「トヨタ・イプサム」より100mm短いが、横幅は300mmも長い「トヨタ・アルファード」級となる。C4ピカソ、幅広だ。ガラス面積が大きいがため外がよく見えるが、同時にボディの大きさを感じさせる。
ドライバーズシートからの視界がやたらといいのは、フロントガラスが上下方向に非常に長いからである。“ビジョスペース(Visiospace)”というコンセプトが具体化された。ルーフ前端位置が通常のクルマよりずっと後ろに下がっていて、ドライバーの視界のほぼ上端まで前からガラスがくる。慣れないと居心地の悪さを感じるほどの開放感がある。
日差しの強い夏場はツラかろう……との心配には、スライディングサンバイザーが対応する。フロントガラスと同じ横幅がある大きな左右別体型のバイザーで、これを前にスライドしておろせば、ガラス面積は通常のクルマ並になる。
クルマの外にでてC4ピカソを眺めると、フロントのガラスがルーフのティンテッド・パノラミックサンルーフ(オプション)と視覚的につながる。あたかもコンセプトモデルのようなグリーンハウス。広大なガラス面積に感心していると、デリカシーにじゃっかん欠けるスタッフのひとりが言った。
「禿げ上がった額みたいだ」
2種類のトランスミッション
欧州のシトロエンC4ピカソには、1.8リッター(127ps)、2リッター(143ps)、それに2種類のディーゼルエンジンがあるが、日本でのラインナップは2リッター直4ツインカム(143ps/6000rpm、20.8kgm/4000rpm)のみ。
おもしろいのは、トランスミッションにコンベンショナルなトルコン式4ATと2ペダル式6MT“EGS”が並列して用意されること。価格はどちらも345万円となる。
ピカソの2リッターは、C4サルーンのおとなしいツインカムエンジンと基本的に同じユニットで、しかし、300kgほど重い1630kg(ATモデル)のボディを運ばなければならない。そのぶん、4AT版は、ギア比をC4サルーン1.6リッターモデルと同じにしてカバーしようとしている。
ヒトに替わって機械がクラッチを踏むロボタイズドタイプのEGSトランスミッションは、6段と、トルコンATより細かくギアが切られ、クロースしたレシオをもつ。そのため、エンジン出力をより有効に使うことができ、マニュアル車同様のダイレクト感を得ることもできる。インポーターが同じ値段でわざわざ2種類のトランスミッションを用意した理由は、そんなところにあるのだろう。
パドルでシフト
実際、EGSモデルに乗ってみると、速くはないけれど、過不足ない動力性能を見せる。ただ、わが国ではもっとも重要なチェックポイントとなる「オートマチックモード」では、やはりギアが変わる際に乗員の頭が多少、前後に振られる。タイムラグがある。
どうしても気になる場合は、ステアリングホイールの裏にも設けられたパドルを使ってギアを変えると、すくなくともドライバーは心理的に楽になる。自分のタイミングでシフトできるから(ギアチェンジにかかる時間も、0.75から0.65秒に短縮される。ただしオートマチックモードのほうが、燃費が3〜5%よくなるという)。
C4ピカソのシフトレバーはステアリングコラムから向かって右側に生えていて、ポジションは「R(バック)-N(ニュートラル)-A(オート)-M(マニュアル)」となる。いちいちパドルを操作するのがわずらわしいときは、「M」ではなく、Aモードを選ぶといい。通常は(ほどほど実用的な)オートマチック・トランスミッションとして働き、一方、パドルを触ったとたんマニュアルモードになる。カーブの手前などでエンジンブレーキが欲しいときに便利だ。その後20秒間、ギアチェンジの操作をしなければ、自動でオートマモードに復帰する。国産のミニバンではなく、わざわざシトロエン車を買うようなユーザーなら、EGS仕様のほうが、むしろ操作を楽しむ余地があっていいかもしれない。
なお、C4ピカソには、シトロエンDSと同じく(!?)「P(パーキング)」はない。エンジンが停止すると自動的にパーキングブレーキがかかり、一方、走り出す際のトルクを関知すると、即座にブレーキを解除する。
また、停止時のクリープがないEGSモデルは、坂道発進時にはブレーキペダルから足を離しても2秒間ブレーキを保持して、クルマが不用意にバックするのを防いでくれる。なかなか気遣いされているのだ。
硬く、重く、面倒
日本に入るC4ピカソは右ハンドルのみ。内装は、フランス車らしいベロアのトリムとなる。
ドライバーズシートの前には、大きなインストゥルメントパネル。ステアリングホイールは、C4シリーズでお馴染み、センターが動かずリムだけ回るセンターフィックストタイプ。大きなバイザーをスライドさせるレールも兼ねる中央の桟には、通常のリアビューミラーに加え、後席の子供の様子を確認するチャイルドウォッチミラーが備わる。
この手のクルマの特等席、2列目シートはそれぞれが独立しており、各個にスライドさせられる。センターシートにも3点式シートベルトが備わり、かつシートベルトをしないとリマインダーの警告音が鳴り続ける。わが国で「後席乗員のシートベルト着用義務化」が叫ばれるなか、先取りしているというか、本来あたりまえというべきか……。
やはり3点式シートベルトが備わるサードシートは、足下狭く、こちらは臨時もしくは子供用だ。
C4ピカソは、3列目をフラットに収納したり、セカンドシートの座面を跳ね上げて前方にスライドさせてさらに荷室を広げたり、背もたれだけ前に倒したりできるが、日本のミニバンの変化自在ぶりにはかなわない。操作は、硬いし、重いし、面倒だ。頻繁にアレンジするというよりは、ベーシックなカタチを決めて運用することになろう。フランスの開発陣は、「居間ではなく自動車だから、それで当然」と考えたのかもしれない。
C4一族のピカソに、ハイドロニューマティックの足まわりは与えられない。それでも、このカテゴリーのミニバンとしては贅沢に、後ろ足にエアサスペンションが奢られた。ピカソが本来のピープルムーバーとして活用されるなら、荷重の変化が大きいはずだから、車高を保ちやすいエアサスはありがたいはず。
全体に、乗り心地はやわらかめで、ロールも大きい。ややダルなステアリングフィール。個性的な外観のわりに、ピカソの運転感覚はごく普通。シトロエンの新奇さとミニバンの実用性のバランスを考慮すると、この辺でちょうどいいのだろう。
(文=webCGアオキ/写真=峰昌宏)

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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