「スポット溶接の数は同一車種でも違うのですか?」
2001.01.15 クルマ生活Q&A ボディ「スポット溶接の数は同一車種でも違うのですか?」
『NAVI』でホンダ工場の期間工として働いた人の記事が連載されていましたが、その中で輸出向けと国内向けではスポット溶接の数が違うとありました。数の多い方が剛性も高く長持ちするし乗り心地もちがうと思います。私が考えるに、国内向けでもグレードが違うと同じことがいえるのではないでしょうか。(「いまい」さん)
お答えします。クルマは溶接の仕方やその数によって強度が違ってきます。溶接した部分は溶接しない部分にくらべ(理由はいくつかあるのですが)硬いのです。硬いと強くはなるのですが、その反面、靭性といって粘りが無くなり、もろくなります。そこで比較的靭性を考慮してスポット溶接を行なうのです。
最近のモノコックボディはスポット溶接を使って作りますが、スポットの数が増えるとボディ剛性が上がります。スポットの間隔が狭いとボディが捻じれにくくなりますから。その反面、乗り心地が犠牲になる場合があります。
ラリーなどではスポット溶接の数を制御して乗り味の一部にしています。たとえば雪上ラリーや氷上ラリーなどでは、通常のラリーよりもスポット数を少なくします。それによって、滑りやすい路面のインフォメーションをボディで受け止め、コントロール性を良くするのです。
国内仕様でもグレードによって溶接の数に差があるのか?ということですが、これはあるのではないかと思います。なにしろ同じモデル名をもっていてもグレードによってパワーが倍以上違ったり、4輪駆動の設定もありますから。あるメーカーでは前輪駆動ベースのクルマを4駆にしパワーを高めた結果、リアサスペンションをつかさどるフロアパンに大きなよじれが発生したため、次からは「増しスポット」を行ったそうです。
自動車づくりはコストダウンとの戦いです。たとえひとつでもスポットの数を減らすことは、クルマを完成させる工程や時間を短縮することにつながります。そこで同一車種でも発表からあるていど時間が経過すると、当初よりスポット数を減らしたりすることもあります。減らしてもだいじょうぶと判断された場合です。ボディの剛性低下はありません。

松本 英雄
自動車テクノロジーライター。1992年~97年に当時のチームいすゞ(いすゞ自動車のワークスラリーチーム)テクニカル部門のアドバイザーとして、パリ・ダカール参加用車両の開発、製作にたずさわる。著書に『カー機能障害は治る』『通のツール箱』『クルマが長持ちする7つの習慣』(二玄社)がある。