レクサスLS600h(4WD/CVT)/LS600hL(4WD/CVT)【海外試乗記(後編)】
さすがはLSのハイブリッド(後編) 2007.05.16 試乗記 レクサスLS600h(4WD/CVT)/LS600hL(4WD/CVT)世界が注目するレクサスのハイブリッドモデル「LS600h」。4WDと組み合わされるハイブリッド・システムが生み出すパワーと燃費の効果は?フランクフルトから報告。
相性のよさ
フランクフルトで開催された「レクサスLS600h」「600hL」のプレス試乗会。初日に乗ったトップ・オブ・レクサスの、ハイスピードクルージング時の印象はよくなかった。直進線、トレース性があまりに曖昧だったのだ。
ところが、そんな印象は2日目には大きく改善された。実は初日の試乗車のタイヤ空気圧管理にミスがあり、「210km/hまでは4輪とも2.5bar。210km/h以上は2.9bar」という指定にもかかわらず、1日目のテスト車は2.3barにセットされていたのだという。これでメーター読み260km/hオーバーにまでトライしていたのだから、所期の性能が発揮されるはずもない。
さまざまなハイテクによるドライビング・アシスト機能を持つこうしたモデルでも、「路面とコンタクトを取っているのはタイヤだけ」という事実がはからずも露呈された。
それはそれとして、ハイブリッド・システムが生み出す「滑らか」かつ「強力」なパワーフィールは、LSというモデルが目指すキャラクターと相性がいい。従来のトヨタ(レクサス)ハイブリッド・モデルと同様、スタート当初は“電気自動車モード”が主役。むろんそこでの静粛性は圧倒的で、「無音」と表現してもいい。
ある程度速度が高まり、あるいはより強い加速力が必要となったためアクセルペダルを踏み込んでも、エンジンのサポートが始まる瞬間はきわめてスムーズ。ほとんどショックを感じさせられない。「さすがはLSのハイブリッド」と感心させられる。
燃費はリッター8km
「ハイブリッド+4WDシステム」採用のため、車両重量がノーマルLS(1940kg)より300kgほども増えて2270kgになってしまった点は、今後の大きな課題として残る。一方で、「エンジン+モーター」の“ツインパワー”が、それを補ってあまりある加速感を味わわせてくれた。
394psのエンジンに224psのモーターだから、合わせて618ps!! ……とはさすがにいかない。現実には、バッテリーから持ち出し可能な短時間最大出力(それはどうやら「数秒間」らしい)によって決定される“システム出力”は、445psという数字。なるほど体感上も、「2.3トンに445ps」といわれれば、納得できる。
ちなみに、欧州仕様車での最高速は250km/h、0-100km/h加速は6.3秒と発表される。「そこまでの最高速は必要ないため、最終減速比をやや低めた」という日本仕様車は、加速タイムは多少向上する理屈だが、両仕様の乗り較べが可能だった今回のテストドライブでも、大きな差は実感することはなかった。
アクセルを踏み込むと、間髪入れず加速Gが発生する。それが、“電気パワー”を用いる最も美味しい効果のひとつ。では、燃費に関する効果はどうかというと……。
3時間ほど走行してもアイドル・ストップの時間が10分となかった今回のテストルートでの燃費は、およそ8km/リッターを記録。渋滞激しい都市部では、ディーゼル・モデルに対してアドバンテージをもつであろう。一方で、定速クルージング主体では、燃費面でも、せっかくの複雑なシステムを活かしがたい。
そんなメリット、デメリットをもつハイブリッドセダン600h/600hL。日米のマーケットでは、発売と同時に圧倒的な人気者となるであろう。一方の欧州市場では、駆動用バッテリー搭載によってそもそもの505リッターが330リッターにまで狭められたトランクスペースが大きなハンディになりそう。いずれにしても世界の市場でどのような評価を得る事になるのか? 興味は尽きない。
(文=河村康彦/写真=トヨタ自動車)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
-
アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
-
ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
-
ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
-
アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
-
NEW
レクサスLFAコンセプト
2025.12.5画像・写真トヨタ自動車が、BEVスポーツカーの新たなコンセプトモデル「レクサスLFAコンセプト」を世界初公開。2025年12月5日に開催された発表会での、展示車両の姿を写真で紹介する。 -
NEW
トヨタGR GT/GR GT3
2025.12.5画像・写真2025年12月5日、TOYOTA GAZOO Racingが開発を進める新型スーパースポーツモデル「GR GT」と、同モデルをベースとする競技用マシン「GR GT3」が世界初公開された。発表会場における展示車両の外装・内装を写真で紹介する。 -
NEW
バランスドエンジンってなにがスゴいの? ―誤解されがちな手組み&バランスどりの本当のメリット―
2025.12.5デイリーコラムハイパフォーマンスカーやスポーティーな限定車などの資料で時折目にする、「バランスどりされたエンジン」「手組みのエンジン」という文句。しかしアナタは、その利点を理解していますか? 誤解されがちなバランスドエンジンの、本当のメリットを解説する。 -
「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」の会場から
2025.12.4画像・写真ホンダ車用のカスタムパーツ「Modulo(モデューロ)」を手がけるホンダアクセスと、「無限」を展開するM-TECが、ホンダファン向けのイベント「Modulo 無限 THANKS DAY 2025」を開催。熱気に包まれた会場の様子を写真で紹介する。 -
「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」の会場より
2025.12.4画像・写真ソフト99コーポレーションが、完全招待制のオーナーミーティング「くるままていらいふ カーオーナーミーティングin芝公園」を初開催。会場には新旧50台の名車とクルマ愛にあふれたオーナーが集った。イベントの様子を写真で紹介する。 -
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション/CR-V e:HEV RSブラックエディション ホンダアクセス用品装着車
2025.12.4画像・写真まもなく日本でも発売される新型「ホンダCR-V」を、早くもホンダアクセスがコーディネート。彼らの手になる「Tough Premium(タフプレミアム)」のアクセサリー装着車を、ベースとなった上級グレード「RSブラックエディション」とともに写真で紹介する。






























