ダッジ・キャリバー(FF/CVT)【海外試乗記】
アメリカの味 2007.04.21 試乗記 ダッジ・キャリバー(FF/CVT)クライスラー「ジープ」に続いて、第3ブランドとして日本市場に参入する「ダッジ」。2007年6月の導入を前に、スペインで5ドアハッチの「キャリバー」に試乗した。
普通のCセグメントとは違う
昨今なにかとネガな話題が多いクライスラーだが、彼らはそんな不安を自ら打ち消すように、ポジティブな歩みを進めている。これまで北米内だけで展開していた「ダッジ」ブランドを、「クライスラー」「ジープ」に続いてインターナショナルブランドに仕立てようというのだ。
そのために投入した第一弾が「ダッジ・キャリバー」。日本では今年2007年から輸入されるが、ヨーロッパではひと足先に2006年から売っている。この尖兵に、スペインで試乗する機会に恵まれた。
キャリバーは、ヨーロッパではCセグメントに属するモデルで、「フォルクスワーゲン・ゴルフ」「プジョー307」などをライバルと考えているという。
でもデザインはまるで違う。ダッジ伝統のクロスヘアー(レンズなどに描かれる十字線のこと)グリルを掲げた2ボックス5ドアは、最近はやりのクロスオーバースタイルなのだ。しかも骨太で力強いラインは、日本やヨーロッパの自動車にはゼッタイ出せない味といえる。
それでいて緻密な造形も見られる。たとえばルーフサイドの黒いモール。居住性重視でまっすぐリアまで伸びるルーフと、クーペのようなサイドウィンドウグラフィックを両立している。おかげで室内空間の広さはヨーロッパのライバルと同等以上という印象だった。
仕上げは安っぽいけれど、ボディカラーに合わせてレッドやオレンジやブルーにペイントされた陽気なセンターパネルが、「そんな細かいこと気にすんなよ」と語りかけてくる。
さらにアメリカ車らしいのは装備。500ccペットボトル4本が入るクーラー/ヒーターボックス、アウトドアでも活躍しそうなリアゲート裏のポップアップ式スピーカー、取り外して懐中電灯としても使える室内灯など、タイヤのついた部屋という感じの、実用本位のアイディアがあふれている。
クセのないアメ車
エンジンはすべて直列4気筒で、ガソリンが1.8、2、2.4リッター、ディーゼルが2リッターターボとなる。ちなみにガソリンは「三菱」「ヒュンダイ」との3社共同開発で、「デリカD:5」や「アウトランダー」に乗っているものと基本は同じと考えていい。
乗ったのは日本に導入されるガソリン2リッターで、トランスミッションはJATCO製6段マニュアルモードつきCVT。これも三菱車でおなじみのメカニズムだ。
おかげで加速は、イキオイやサウンドはクラス平均という印象だったが、アクセル操作に対する加減速の自然さやなめらかさといったマナーは日本車並みにいい。ヨーロッパのライバルに対するアドバンテージになる。
乗り心地は硬めだが、ボディ剛性の高さのおかげもあって、不快なショックはない。試乗コースは市街地がメインだったが、その範囲内では軽快な身のこなしが印象的だった。ステアリングの感触は素直で、コーナーでの前後のグリップバランスも取れている。直進安定性も不満ない。
「クライスラー300C」や「ジープ・コマンダー」などが持つ伝統的アメリカ風味を、このコンパクトなクロスオーバーに求めるほうが無理というもの。走りに妙なクセはないし、肩の力を抜いてデザインやユーティリティにおけるアメリカ的なノリを楽しむなら、悪くない相手だと思った。
(文=森口将之/写真=ダイムラー・クライスラー日本)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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